第21回ヤングシナリオ大賞・輪廻の雨 「兄弟の絆」 脚本／桑村さや香 プロデュース／中野利幸 演出／並木道子　 http://wwwz.fujitv.co.jp/rinne/index.html

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雨が降る中、孝平は知的障害の弟・修平と共に工場長・正也の
遺体を山に埋めに行く。修平は工場長の死について理解できず
どうして死んだ?命は大切にしなければなりませんと兄に語り
かける。そんな弟の疑問に兄は、穴を掘りながらも悪い人間は
死んで良いものに生まれ変わると諭す。お前を殴る悪い人間、
傷つけるヤツは兄ちゃんがやっつけてやると告げる。

翌日大学のキャンパスに居る孝平に恋人の愛実は声を掛ける。
夕方、一緒に食事をする約束をしていた二人。しかし昨晩の事
を気にしてか孝平は何処か上の空だった。

一方修平が働く工場で金庫の金が盗まれ、工場長の正也が行方
不明になっていると通報を受け、刑事の徳永と相棒の青木が
事情徴収に訪れる。対応に出たのは、工場長の妻・君枝。
修平は刑事から話しを聞かれるも僕は何も知らないとして通り
過ぎる。

孝平が働くコンビニ"99イチバ"に修平はやってくる。
先に家に帰っていろと孝平は告げるが、彼は外の駐車場で一人
スケッチブックに絵を描く。愛実はその姿を見掛けて、車が来
るから危ないと声を掛けるが、知らない人とは喋ってはいけな
いとする修平が後ずさりすると配達員とぶつかってしまう。
孝平は平謝りし、なんとかその場をやり過ごす。

その頃工場の敷地内で血痕が見つかっていた。

愛実は孝平に弟が居たことは聞いていたが、それ以上のことは
知らなかった。彼女は孝平に私のことが信用できないのか?と
多くを語らない彼に問い詰める。もっと孝平のことが知りたい、
何を聞いても嫌いにはならないと語る彼女に、これからちゃんと
弟を紹介すると自宅に招待する。
修平は愛実を恐れるが、孝平が友達だと語ると彼女の握手に応
じる。カレーを振る舞いという愛実。修平は数字を覚える能力
だけはずば抜けているとして、カレーの具材の為に購入した
レシートの数字を一瞬で覚えてしまう。彼に興味を持つ愛実は
修平に君の命は誰の物?と尋ねる。修平はお兄ちゃんだという。
最近彼女が幼児保育について教わった事を実戦してみたのであ
る。大抵幼い子にとって母親が全てであり、修平にとっては
孝平は絶対的な存在であることを語る。
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父親が子供たちに暴力を奮い育児をしてこなかったために、
両親は離婚。そんな母親が亡くなったことで長男の孝平は一人
で弟の修平を育てる。
修平には中度の知的障害を患っていたことも有って、孝平への
しわ寄せは少なくはなかった。それでも奨学金を受けて大学に
通う孝平だったが・・・

兄弟の関係だけを抽出したような内容で、若干周りのキャラク
ターはおざなりにされてしまうような話だった。
この手の息苦しい生活環境は近年問題となっている老老介護な
んかにも通じるモノが有り、そう思うとこういうシチョエー
ションも奇抜なようでいて、意外と身近に有るものなのかも
しれない。

孝平の中にある本音が分かりづらく、弟のために犠牲にして
きた来た部分が徐々に明らかになって行く様には同情を引く
事も多いが、冒頭から殺人を犯している事実には違いなく、
その辺で若干の感情移入が難しい部分がある。

ドラマとしての核心部は、守ってきたハズの人物から刺されて
しまうという皮肉を描いたもの。
全てを犠牲にし弟の為に殺人まで犯した孝平は、それを正当化
させ、弟を納得させる為に吐いた言葉がそのまま自らに降り
掛かってきてしまう。

残念ながら展開上のサプライズは最後にあるだけだった。
修平は孝平の言葉によって自らを傷つけてしまうのかとハラ
ハラさせるが、それを愛している兄へと転嫁させたこと。
物の善し悪しに於いては孝平以上に純粋な視線を保っていた
修平の行動に複雑な心境にさせられる。
大人達の事情に巻き込まれた若者たちの寂しさを覚える話だった。

三上孝平 …… 山本裕典 (21歳、奨学金を貰い大学に通う兄)
三上修平 …… 瀬戸康史 (18歳、中度知的障害者の弟)
菅井愛実 …… 貫地谷しほり (21歳、女子大生。幼児保育専攻)
徳永剛 …… 永井大 (34歳、敏腕刑事)
青木浩之 …… 青木崇高 (29歳、徳永とタッグを組む若手刑事)
橘君枝 …… 手塚理美 (48歳、工場長の妻)
橘正也 …… 小木茂光 (工場長)
三上洋介 …… 光石研 (父親)

堤匡孝、徳秀樹、鈴木アキノフ、高島大幹、橋本涼、豊田高史
土屋史子、木田健太、堀口敬巧、石井蒼月、青木一慈
佐藤詩音、士師野隆之介

評価：★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)