NHKアーカイブス 
「ドラマ“さよなら五つのカプチーノ”」(1998年制作)
1998/10/31放送

脚本:鈴木聡
音楽:加藤和彦




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金曜日の夜の青葉町駅
同窓会の帰りに循環バスの最終便に乗ろうとした
遠藤道子だっ
たが、駅の改札でもたつく間にバスは出発してしまい、自宅に
電話を掛けるも留守電になっていて家族のものは出なかった。
雨の中タクシーを待つも、1時間待ちの状態。
道子は、駅から煌々と輝く24時間営業する
レストラン"ダイナ
ーキング"
の看板を目にする。普段は目にするものの殆ど立ち
寄る事の無かったレストランに雨宿りとばかりに立ち寄る。
そこで道子は大好きなミステリー小説でも読んで時間を潰そう
とする。
店にはいると柄の悪い男性・
関根がふてぶてしく椅子座り、
人の通る道に足を突き出していた。
店員からは大テーブルしかないと言われ、そこに通される。

椅子に座って本を読んでいると、突然隣の席からチキンが飛んで
くる。ナイフで切り損ねたチキンが飛んできた格好で、男性の
野田和夫は済まなそうに謝罪する。野田は道子に、飯を食べる
間に話しでもしないか?という。道子も退屈していたので、その
提案を受けることにする。

会話をしていると同じ大テーブルに座っていた
深見沢谷山
なども会話に加わる。道子の前に特大のパフェが花火付きで
運ばれてくる。頼んでも居ない注文だったが、それを見て誰が
こんな深夜に特大のパフェなど頼むのかとして、一同大笑い
する。すると隣に座っていた女性・
大村由紀が頼んだものだ
った。ばつが悪そうな顔をする道子たち。由紀が席を立つと、
謝罪した方が良いかどうか協議する。しかしこんな深夜にあれ
だけのものを注文するなんて、多分彼氏と別れたのではないか?
という。由紀がトイレに行ったことを知ると、道子は彼女を
追いかけ、トイレで謝罪する。由紀はあまり気を遣わないでと
して淡々としていた。振られたのか?と問うと、否定はしなか
った。道子は知らない人と喋ってみるのも楽しいとして、貴方
も会話に加わらないか?と誘う。

それぞれ自己紹介をする。
道子は店に入ったときに、みんなの事を想像した事を告白する。

野田はただの小市民。
深見沢は天井裏の魔術師。
谷山は呉服屋の若旦那。
由紀は雑草女。
そして谷山によると、道子はPTA会長だという。


そんな中、道子は再び自宅に電話しに行くと、またしても電話
は留守電になっていた。
先ほどの柄の悪い関根が電話しにくるのを目撃し、たまたま電話
で会話するのを聞いてしまう。
これから現ナマを運ぶこと。金額は1億円!!
しかも後からやってきた二人の柄の悪そうな男性、
高橋坂井
は、手に催涙スプレーらしきものを手にしていた。
まさか現金輸送車を強盗でもするのか。

道子はみんなの元に戻りその話をする。あの人達はギャングかも
しれない事。すると関根がこちらのテーブルにやってくるのを
見て、目撃者なので襲われるかも知れないと道子は身構える。
しかし近くにいた
横田常務と会話しにやってきただけで、関根
はこのレストランの売上金を運ぶ
ドリーム興業の警備部長である
事を知る。

一同関根たちが去るのを見つめ、バンの中に一億円の現金が
入っているのかと呟く。すると谷山は、あの金を頂いてみない
か?と告げる。我々五人には接点がないので捕まりづらいとする
と、悪乗りで道子は段取りを決めようとしてメモ紙を渡していく。

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それぞれ私生活に問題を抱えている5人の老若男女が、ある
金曜日の晩に一つのテーブルに同席したことから不思議な体験
を共有していく。
何気なく話していた一億円強奪は実際に実行されていくのか。

ドラマは1998年のもの。
昔学生時代にこのドラマが放送していたのを覚えているな。

ひょんな事で出会った人物同士が現実離れした事を成し遂げよ
うとする話って有るような無いような、何処かで見たような
シチュエーションにも感じるけど、それがどの映画だったかと
言われるとこれがまた思い出せない。

人生に失望しかかっている人たちが、この一夜の出会いを通し
て、新たな価値観を吹き込まれたかのようにして再生を果たして
いく。

ただドラマとしては主人公の道子だけがスッキリとした感覚で
現実に立ち返った様な印象も有り、深見沢などはラストの展開
を見ると、あらゆる意味でこれが最後だという事を実感して
元の生活に戻ったのではないかと思うところもあってちょっぴり
寂しい気分にさせてくれる。
また谷山も消化不良のまま現実に戻り、また同様の事を繰り返し
て行きそうな感じもする。

とかく家庭を持つとなかなか自分だけの居場所が見つけにくい
ものが有るけれど、そんな場所に導かれるようにして足を向けて
ていく事。遠くに見えるレストランの明かりは、都会の砂漠の中
に見えるオアシスの様で、ホッと一息するような場所を提供
している。

他人を警戒するようなご時世故になかなか見ず知らずの人との
コミュニケーションを持つことが出来ないで居る中で、こんな
出会いも良いのではないかと思わせる作りが上手く出来ている。
そこに居合わせた5人もすぐに融合し始める辺りは、誰もが
そんな事を望んでいるかのような感じだった。

まぁでもあのまま強奪を成功させても、レストランであれだけ
大声で犯行計画を語り合っているのだから、簡単に足が付くか
な。コンビニの防犯カメラにも写っているしね。

リメイクして、映画化でもされると面白いかな。

遠藤道子 …… 宮本信子 (42歳、主婦、ミステリー小説好き)
野田和夫 …… 伊武雅刀 (48歳、リストラされたサラリーマン)
谷山 …… 稲垣吾郎 (22歳、元美術教師)
大村由紀 …… 鈴木砂羽 (24歳、美容整形で借金)
深見沢 …… 金田龍之介 (69歳、ギャンブルで借金)
関根 …… 大杉漣 (警備部長)
横田 …… 須永慶 (常務)
遠藤俊夫 …… 鶴田忍 (道子の夫)

中島陽典
大島蓉子

星野晶子、福本伸一、中村栄美子、中野龍雄、キンバリー・フ
ォーサイス、長岡尚彦、野地将幸、西田圭、大根田良樹
森井次郎、奥本東吾、石川正虎、西村大介、菱沼裕
高工新太郎、小林大介、竹田寿郎


評価:★★★★★★★★☆☆ (8.0)

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