秋の特別企画“幸福の黄色いハンカチ”

脚本・監修:山田洋次
脚本:尾崎将也
原作:ピート・ハミル 「ゴーイング・ホーム」より
音楽:池頼広
チーフプロデューサー:田中芳樹
プロデューサー:西牟田知夫、佐々木淳一
演出:岩本仁志






「俺を待っていてくれるなら、あのハンカチを結んでくれ…孤独
な男の愛と希望を見た」

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網走刑務所を出所する島勇作
時は2011年・ヒマワリの咲く夏の事だった。

その頃北海道の
北西部・羽幌にいた花田欽也は、働いていた
ホテルを首になり、次のアルバイトの面接のために稚内へと
向かうが、昨晩食べた蟹に当たって腹を下す。羽幌の市街地で
バスが停まった際にトイレに駆け込むが、バスは無情にも
欽也を待たずして行ってしまう。

途方に暮れる欽也は、海岸沿いを歩いて周り、釣りをしている
人や遠くの島を見つめる勇作に話しかける。目の前の船が
向かうのは焼尻島だというが、欽也の口数の多さに辟易して
勇作はその場を跡にする。
欽也は電話していると、突然電池が切れてしまい、充電する
為にコンビニを探すが何処にもない。仕方なく営業中の
スナッ
ク"おろろん"
に入り、電源を貸してくれるよう頼むと、そこに
いたのは勇作だった。すぐに店の女性・
小川朱美もやってくる。
欽也は小樽のホテルでバイトしていたが、マネージャーと
喧嘩して首になった事を説明する。
そこに朱美の
母・早苗も戻ってくる。早苗は勇作が焼尻に行か
なかった事を知ると、今度ウチの店にも来てと語る。

欽也は泊まる場所を確保するために朱美に尋ねる。
安い宿泊所が良いと話すと、勇作と同じ旅館
"離島会館"
泊まったらどうかと言われる。
そんな会話をしている頃、勇作は店に貼ってあった写真を
食い入るように見ていた。

旅館に行くと女主人・
照代が働いていた。一泊5000円だと
言われると、欽也は現在軍資金に乏しい事を告げる。すると
勇作は相部屋にしても良いと言ってくれる。

欽也は相変わらず口数の少ない勇作に一方的に話しかけていた。
一緒に風呂に入り、背中を流してあげる欽也。
勇作は元漁師で現在失業中だという事を聞き出すが、それ以上
は話が進まなかった。

風呂から出る欽也は裸でウロウロしていると、そこに朱美が
やってくる。急いで服を着替えて朱美に会う欽也。
欽也は色々彼女のことを聞き出し、そして付き合うことを求め
て抱きつくと、二度と店には来ないで欲しいと言われてしまう。
欽也は逆上して、お前くらいの女は東京に幾らでも居ると
暴言を吐いてしまうのだった。

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北海道の地で、刑務所から出所したばかりの島勇作と、面白い
事がないからという理由だけで東京からやってきた花田欽也。
そして父親が女性と共に家を出て行ってしまった小川朱美の
三人が突然羽幌の町で出会う。
僅かな時間の中で三人は急速に心を通わせていくが、勇作が
殺人犯として7年間服役していた事を知り、関係が怪しくなって
いく。

1977年に公開された同タイトルの映画のリメイク作品。
映画版は高倉健、武田鉄矢、桃井かおり、倍賞千恵子が
それぞれの役を演じていたけど、近代版では阿部寛、
堀北真希、濱田岳、夏川結衣がそれらを演じている。

山田洋次監督自ら今回も監修しているというのも興味深いが、
俳優色は完全に尾崎将也さん色で構成された物語で、
ドラマ結婚できない男で共演した阿部寛さんと夏川結衣さ
んの絶妙なコンビで構成され、白い春で絶妙な味を出して
いた遠藤憲一さんも登場する。

なんといってもオリジナルに出てきた武田鉄矢さんや倍賞千恵
子さんもゲスト出演している所が良い感じだね。

現代版としてアレンジされた部分も多かったけど、上手く
現代という設定に当てはめられており、町の実情なども
交えて今時の若者と刑務所から出所したばかりの男性の興味
深い交流の物語だった。
なんといっても興味深いのは、都会ならではの悩みと、田舎
ならではの悩みをぶつけ合い、上手く人間関係を構成していく
所である。

炭坑の町だったという過去を利用して、自然に過去の回想
シーンへのスライドさせていく辺りの流れだったり、三者三様
に上手く過去のちょっとしたトラウマに近いエピソードを
並べ立てて、互いの流れに関わらせていく所など見事な
作りで、ドラマ版として制作するには惜しい気がする。

唯一ドラマの中で違和感が覚えたのは、勇作側から光枝に手紙を
書いたとする部分かな。元々勇作は二人の事でも自分勝手に決め
すぎることを指摘されていたけど、別れを切り出した手前、男のプラ
イドとして手紙を出すだけの勇気が有れば、船に乗れる様な気も
するし、最後にグダグダさせる辺りも朱美の一言で締めた訳だけど、
その中のメッセージの中に、朱美自身の親子関係の中で、後悔
している事などをぶつけて、勇作に考えを改める説得力を持たせて
欲しかった。

主人公の二人、阿部寛さんと夏川結衣さんは、これ以上に
無いというピッタリと型にはまった役所だし、その二人の物語
を盛り上げるためにちょっと口うるさい濱田岳くん役の欽也
が上手いこと、結論に至るまでの物語を盛り上げ役に徹して
いる。堀北真希さんの可愛らしさもドラマを盛り上げるのに
十分なカリスマ性が有ったな。

結論は分かっている事とはいえ、ハンカチが見えたときの感動
はドラマでも最高潮に達する部分だった。出来れば朱美と
欽也を光枝に会わせて、良い仲間が出来たという事を紹介して
欲しかった。

連ドラ版で是非とも、同じキャストで焼尻と羽幌辺りの物語
を膨らませて描いて欲しい感じがする。

島勇作 …… 阿部寛 (7年前に喧嘩で相手を殺してしまう)
小川朱美 …… 堀北真希 (母子家庭)
花田欽也 …… 濱田岳 (職を求めて北海道へ)
島光枝 …… 夏川結衣 (勇作の妻、過去にも流産している)
小川早苗 …… 荻野目慶子 (朱美の母、心臓に持病?)
照代 …… 草笛光子 (旅館"離島会館"の主人)
行商のおばさん …… 中村玉緒 (冒頭のバスにて)
田所 …… でんでん (漁師の船長)
山倉 …… 遠藤憲一 (焼尻の漁師)
洋介 …… 水上剣星 (焼尻の漁師)
房江 …… 倍賞千恵子 (牧場の女性)
渡辺 …… 武田鉄矢 (羽幌町警察署・署長)

TABO、黒沢光春、原浩彦、三上勝由、木村淳、相澤宏幸
志村英和、藤井茂樹、雨夜秀興、松永二三男、ふるさとたかし
八木菜摘(アナ)、折戸将悟、菊池正紀、本間崇寛、山崎大昇
山本順平、佐藤慶太、奈々葉、森谷萌子、古藤健太郎、斉藤冨夫
秋元博行、郡司由美子、尾崎逸子


評価:★★★★★★★★☆☆ (8.0)

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