幸福のスープはいかが? (幸福的味道)
(NHK・RTHK(香港電台)共同制作ドラマ)

脚本/陳志樺
音楽/森英治
制作統括/六山浩一 蔡貞停
演出/福井充広 馮家鍵

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1987年香港、美蘭は祖父が作る魚旦粉(ぎょたんふん)を食べる。
いっぱい食べて大きくなれと言われる美蘭は、祖父の経営する
香港の下町庶民料理の店ではアイドルだった。お客のみんなから
は変身のマネをさせられ盛り上がる。

2008年香港、ファッション・デザイナーをしていた美蘭は香港
に戻ってくる。チャイナドレスをスポーツウェアにするという
大胆なアイディアを具現化しろといわれあり得ないという。
タクシーを捕まえると、彼女は祖父が住む
錦興(カンベン)へと
足を運ぶ。タクシーの運転手は錦興と聞けば魚旦粉の店だとし
今でもあの店はやっているのかと尋ねられる。

その頃、東京にいた
田尾哲也は派遣社員としてその日暮らしを
していた。インターネットカフェに住む"難民"の一人。
明日の仕事を確認しようと携帯電話で派遣会社に連絡を取るも
明日の仕事はキャンセルされたとして、仕事が無くなった事を
知る。インターネットを使って仕事を探す中、メッセンジャー
の中に元彼女である
理恵がオンラインとして入ってくる。
chatで話しかけると、香港にいる理恵は
飼い猫・チョコレート
の世話をする人がいないとして、写真をメールしてくる。
俺が面倒を見ようか?とし、本気で何処か行きたいとする哲也
は通帳を確認すると、香港へと旅立つ。

哲也は香港の理恵の元を尋ねるが、そこに住む美蘭に泥棒と
勘違いされる。美蘭は祖父に向かいに日本人が引っ越しして
来たのか?と尋ねると、もう何ヶ月も前に言っただろうという。

哲也は食事をしに、美蘭の祖父の麺類店へとやってくると、
目に留まった魚旦粉を頼む。美蘭は先ほど泥棒扱いしてしまっ
た事で店の中では身を縮めていた。
標おじさんが作った魚旦粉
がやってくるが、期待している程美味しくない為、まずいと
言ってしまう。それを聞いた美蘭は今、なんと言ったのか?と
問いつめる。騒ぎを聞いた美蘭の祖父は、自分がオーナーなの
で苦情は自分が聞くという。美味しくない事を告げると、祖父
は治ったら旨いものを作ってやると告げる。美蘭はそれを聞い
て哲也を店から追い出す。

香港とは難儀なところだと哲也は感じる。
部屋に戻っていると更に不運なことに、水道管から突然水が
大量にこぼれ出す。
その頃美蘭は、祖父に今の仕事が終わったら店を手伝いたい事
を告げる。祖父は魚旦粉の味が変わってしまったか?と美蘭に
尋ねると、店のことは心配するなと告げる。
哲也は大家である美蘭たちに水道管の事を告げ、助けて欲しい
と頼む。

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ひょんな事で香港に行くことになった哲也。
そこで再開発によって立ち退きを要求されている麺料理店の
娘と祖父に出会う。かつては魚旦粉の店として繁栄していた
店も、主人の爺ちゃんが脳卒中で倒れて以来、味が落ちている
事を知る。哲也は日本でも讃岐で育った人物であり、実家は
讃岐うどんの店だったが、彼は実家を継がずに飛び出していた。
香港の店を手伝うためにも、彼は一度実家に戻って麺のノウ
ハウを学びに行く。

合作物というとどうしても言葉の壁が大きいけれど、美蘭を
仲介させる事でなんとか会話を成立させる。

現実に行き詰まり、思い切って現実逃避とばかりに香港に行く
哲也が別の角度から人生を見つめ直し、そして今までになかった
価値観であったり、家族に対する絆というものを感じていく。

冒頭部は随分簡潔に描いている印象もあるけど、必要な話の
流れについてはフォローするものも有り、良くできている。

とかく本音を言えないのが日本人では有るが、店の人の前で
料理をまずいと言ってのけたり、突然香港に行ってしまうという
大胆な行動を見せられるのも、一人故郷を出て生活してきたと
する哲也の強さだったり、またうどんに関しては、そう言った
環境で生まれ育った部分もあるのだろう。

うどんの味を追求するという面で、哲也はとっくの昔にそれを
放棄して家を飛び出してしまったにも関わらず、再びそれを
追い求める事になるとは、何かしら因縁が有って面白い。

しかしうどんの味とか、麺のゆで加減とか、一朝一夕で出来る
ものではなく、そういう意味ではこの短時間のドラマで仕上げて
しまうというのも辛い作業だ。また恋愛に於いても、短時間で
好きだ嫌いだと言うほどに発展していくというのも、少々呆気
ない気がする。短期間で育んだ愛ほど短い恋愛で終わりそうな
感じがするからね。

さて後半はどうなるか。


田尾哲也 …… 成宮寛貴 (フリーター)
林美蘭 …… 劉心悠(アニー・リウ) (ファッションデザイナー)
爺ちゃん …… 午馬(ウー・マ) (香港で麺店)

美蘭の母 …… 元秋(ユン・チウ) (カナダに移住)
田尾美恵子 …… 風吹ジュン (哲也の母)
田尾茂雄 …… 塩見三省 (哲也の父、讃岐うどん店)
標おじさん …… 何貴林 (香港で麺店)
レイ …… 梁
理恵 …… 馬凱儀 (哲也の彼女)
美蘭幼少期 …… 黄[火韋][王林]
常連客の劉 …… 林小湛
常連客の・陳 …… 潘卓明
美蘭の祖母 …… 高爾衍
北京から来た男 …… 張堯
タクシードライバー …… 馮偉林


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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