開局45周年記念 命のドラマスペシャル“白旗の少女”

「6歳の少女が一人…激戦の沖縄を生き抜いた奇跡!
笑顔の写真に隠された64年前の真実“お父、ニイニイ
…命の尊さ忘れないよ”」

原作/比嘉富子
脚本/神山由美子
演出/土方政人
ブロデューサー/岡部伸二、山鹿達也、柳川由起子

http://www.tv-tokyo.co.jp/shirahata/


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昭和20年4月1日。第二次世界大戦、アメリカの沖縄地上戦が
展開され20万人以上の戦死者を出した。当時比嘉富子は6歳。
これは実際に体験した物語。

昭和52年・夏。富子はたまたま買い物に出た先で、世界大戦
の時の写真が本になって出版されているのを目にする。なんと
そこには自分の姿が映っていたのである。戦後32年にして
封印していた記録が蘇る。
写真集を買って自宅に戻り食い入るように写真をみる。
そして涙・・・そこには忘れていた光景が広がる。

昭和16年から始まった戦争は現在三年の時を経て昭和19年。
松川家は父・直彰を筆頭に、ヨシ子、直裕、初子、そして
9人兄弟の末っ子・富子で暮らしていた。上の兄弟は嫁いだり
戦地に出兵した。母は一年前に病気で他界。残されたものは
近所たちで協力し合い、農作業を行う。今はちょうど大切な
豆まきの時だった。

農作業の帰り富子は末っ子の特権で父の背中を占領する。
そんな中、繁みの奥から助けを求める声がする。
行ってみると肥だめに落ちた兵士の姿があった。
すぐに救出し自宅に招き入れる。兵士の名は、池内光男。
松川家では兄の服を貸す。初子はそんな彼の姿を正視できずに
居た。光男は美術学校に通っていると言い、手には多数の絵
を所持していた。夕食の時の会話で家族の話になり、光男は
東京に両親を残してきたことを告げ、松川家の母は既に他界
している事を述べる。父・直彰は、戦争が激しくなる前に亡く
なって良かったという。どうせ死ぬならば笑って死ぬ方が良い
という。

その後暫くは戦争が始まっているにもかかわらず穏やかに日々
を過ごすが、昭和20年4月1日。沖縄に6万人のアメリカ兵が
上陸する。5月10日、父は日本軍を支えるための食料が首里に
は無くなったので真壁まで探しに行くという。父親が戦地に
行かずに済んでいるのは、農業をして日本軍に貢献している
為のものだった。たった一日のことだとして富子たちを説得。
帰らねば一人一人で考えて行動しろという。ヨシ子には子供
たちの面倒を見るように告げ、他の子はヨシ子の指示に従え
と告げる。5月12日、人が突然移動を始める。アメリカ軍は
北に上陸し南下し始めたために、爆撃の少ない南へと市民が
動き始めたのである。三日経っても帰ってこない父親に心配
する松川家。そこにたまたま出兵のために訪れた光男がやって
くる。急いで南に逃げた方が良いという彼。ヨシ子は南へ
行って父親を捜そうという。光男はまたきっと逢いましょうと
告げ立ち去る。
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テレビ東京の開局45周年記念で制作されたドラマ。

ドラマでは第二次世界大戦当時沖縄で起こった一人の少女の
視線から見たドラマが展開される。
冒頭からのどかな家族の団らんの場面や美しい景色とは逆に
後半は胃がキリキリするような展開の連続だった。
加害者でもあり被害者でも日本の一市民が体験した悲劇の物語。
出会いと別れが一瞬の内にやってくる過酷な状況が見て取れる。

何と言っても一番衝撃的だったのは、にぃにぃである直裕の
亡くなった場面だった。直接爆撃を受けたわけではないが、
その衝撃によって岩に頭をぶつけて亡くなってしまう。
末っ子の富子にとって、最も近い存在でありいつも共にして
いた兄が突然目を開けたまま動かなくなる事への違和感が
突如として現れ、その現実をまるで理解できない姿がとても
印象的だった。

有る意味では家族が生きている事は奇跡に近いものだ。
ドラマの中では何度も死ぬ機会が訪れるが、それを交わして
いく姿がある。洞窟にいるときたまたま外に追い出された事
がきっかけだったり、兵士に追われ崖から落ちたにも関わらず
奇跡の生還を果たしたり、時に自殺する家族の輪に入ろうと
したり。

富子はあるとき家族から離れてしまい一人で生活しなければ
ならない時が来る。まさにサバイバルな環境が6歳にして訪れた。
立ち去った小屋から食べ物を探したり、時に亡くなった兵士
の荷物を漁ったり、耕作地から残り物の食料を探したり。
少し角度を変えれば、富子の冒険心と自立心をくすぐる様な
別世界を描く興味深いドラマであるが、時折訪れる爆音と兵士
の遺体がすぐに現実へと引き戻す。

負傷した光男との出会いは本当の出来事だったのだろうか?
この部分はこのドラマでも唯一作り物っぽい再会のシーンだった。
話の途中に亡くなってしまう姿はとても心が痛むもの。
東京に居る両親を思うと本当に切なく感じる。

洞窟で出会った老夫婦。
富子にとっても、この老夫婦にとっても奇跡の巡り合わせで
戦争である状況の中でも唯一救われる様な体験だったのでは
無かろうか。互いの存在が相互に補完され、心の隙間を埋めて
くれるものとなる。

最後、白旗を持ってアメリカ兵に投稿するとき、カメラが武器
に見えたのではなかろうか。一瞬の緊迫。決して笑うような
場面ではないのに、父親の言った言葉を履行し、笑顔で死ぬ覚悟
をした少女。
しかし最後に姉たちと再会できたのは、一人で生きてきた彼女
に対する神がくれたプレゼントの様でちょっぴりホっとさせら
れる様な締めくくりだった。

比嘉富子 …… 黒木瞳 (主人公)
松川富子 …… 八木優希 (末っ子)
松川ヨシ子 …… 鈴木杏 (長女ではないけど、上の子)
松川初子 …… 大平うみ (娘)
松川直裕 …… 神谷涼太 (息子)
安盛 …… 菅原文太 (洞窟で出会う。手足が不自由)
ウシ …… 倍賞千恵子 (洞窟で出会う。目が不自由)
松川直彰 …… 石黒賢 (父)
池内光男 …… 勝地涼 (兵士)
国村 …… 渡辺いっけい (兵士)
自決する母親 …… とよた真帆
世話してくれるおばさん …… 大島蓉子

真野裕子、内田滋、高橋良輔、長濱正明、大矢晃弘、真下有紀
今泉あまね、伊藤幸純、藤あけみ、宮良ミキ、関口篤
安里理香、松田恵、平田清義、比嘉憲吾、加藤ひろみ
新垣飛来、宮城松栄、福田加奈子、泉政子、玉那覇重光
野貴葵、花田奈美、澤田千作、佐野弥生、高野弘樹

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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