開局45周年記念ドラマ〜浅田次郎原作 
シューシャインボーイ 
ありがとう…戦災孤児の社長と老靴磨きの切ない絆
〜明日へ希望の物語


原作/浅田次郎
脚本/鎌田敏夫
監督/石橋冠
チーフプロデューサ/小川浩
プロデューサ/山鹿達也、佐藤毅

http://www.tv-tokyo.co.jp/shoeshine/


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競馬場に行くシューシャインボーイの馬主・鈴木一郎と妻の
園枝。一郎はアカネフーズの社長でそんな彼の社長付き運転手
をしている塚田文雄は、車の前でラジオの声に耳を傾ける。
同僚の運転手からは、この仕事は天国と地獄が有り全ては乗っ
けるボス次第だと言われる。ボスの言うことには見ざる、聞か
ざる、言わざるを貫き通すことだという。

そんな中、シューシャインボーイは見事一位を獲得し一億円の
賞金を手に入れる。一郎は祝勝会を妻の園枝に任せて自分は
文雄に運転して貰い競馬場を後にする。
一郎は文雄に対して突然、深川の女の所に行くと思っているの
か?と尋ねる。しかし行き先は新宿だとして突然向かわせる。
文雄は一郎の後についていくとガード下の靴磨きの老人の元へ
足を運ぶ。ここには靴磨きの名人が居ることを告げられる。
今日のような日に深川に行けば、ブランドものをねだられるに
決まっているという一郎。文雄は一郎に頂いた1万円で馬券を
買わせていただいたという。生まれて始めて買った馬券が見事
的中した彼。一郎から馬券は30分で引き替えしないと無効になる
と言われるが、一郎のジョークだと分かる。
一郎は馬券はオレが買い取るとして文雄に100万円近い金を渡す。

一郎は妻のために料理を作るとして食材を買いに行く。女は
意外性を好む物だというと、罪滅ぼしのためなのか?と文雄は
聞く。一郎はオレが何時罪を作ったのかと真っ赤な顔をして怒る。
妻は一家の大黒柱であり大事にしないとバチが当たるという
のである。文雄に対してお前も大黒柱を磨けと告げる。

文雄は地方銀行に勤めていたが、ある時大手の東都銀行と吸収
合併することになり部下達のリストラを命じられた。その後には
新銀行メガバンクの人事副部長のポストが用意されていたが、
銀行には戻りたくないとして辞めた。人の気持ちの冷たさを知っ
たという。妻の敬子、息子の直人、娘の千夏はその進退に反対
を表明し、妻に至っては人生からどんどん逃げている事を指摘
される。ただビールを美味しそうに飲む文雄の姿を見て、最近
では考えが変わった事を告げる。課長夫人から運転手婦人にな
った現実を受け止め、見栄を張るのは辞めようと思ったという。
ずっとそんな顔をしていて欲しいと妻は夫に語る。

そんな中、アカネフーズで大事態が起こる。
社長の一郎とは弁当屋時代の付き合いである川村源社長が
外国産の食材を国内産と偽り卸していたのである。一郎は源さん
を呼び出し、問い詰める。人様の口に入れるもの、人様の命を
預かっている仕事ほど真っ当でなければならない事を二人は合い
言葉の様に言っていたという。源さんの会社と取引を中止すれば
恐らく彼の会社は潰れるだろうとの事だが、一郎は源さんに
取引の中止を言い渡し、苦汁の決断であったことを示す。

一郎は空しさを解消させるために運転手の文雄に、何もないと
ころに言ってくれと告げる。文雄は都心の中でもまだ開発され
ていない更地の土地へと連れて行く。一郎はそこで東京大空襲
が起きたときの話をする。ここらは辺り一面全て爆弾によって
焼け野原にされて何もなかった事。そんな状況の中、自分の家
だけが焼け残る事を心良しとしない日本人は、次の爆撃で家が
焼けるとホッとした部分が有るという。如何にも日本人らしい
発送だという。みんな東京に何もなかった時のことを忘れてい
く事。東京はそんな人たちの遺体の上に成り立つ都市である事。
そんな中一郎は夕陽が沈んだ日を覚えている事を呟く。
俺達は一体何を手に入れたのか・・・
そんな話しを聞きながらも文雄は、金持ちの言い訳であり、
あなた達がそんな町を作ってきたのだと思う。

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運転手の原則は見ざる・聞かざる・言わざるだとされるも
社長・一郎と、社長付き運転手・文雄が日々の送り迎えによっ
て徐々に互いの心の傷でも有る過去の事にも触れあっていく。
銀行家時代に人間関係に疲れた文雄と、一郎が足繁く通う
菊治という靴磨き士の間には一体何があるのか。

久しぶりにメガヒット級のドラマを見せられた気がする。
このドラマ、全国の学校で教材にしても毎年学校で生徒達に
流し見せるのも良いのではないかという気がする。

僅か2時間程度のドラマの中でも、一郎と文雄の関係だったり
夫婦の絆の話だったり、人間としてのプライドの事や、職業間
に於ける貴賤の話など、色んな熱いドラマが待ちかまえている。

一郎と文雄の立場の違いが色んな意味で面白く演出され、世代の
違いというのもとても重要な役割を果たす。
一人は戦前の生まれで東京大空襲を経験した人、一方は既に
豊かさを甘受していた頃に生まれた世代から見た東京という国
の実態だ。

戦前に於いては確かに物質的豊かさを求め、それが達成した後
に今度は当時有ったとする人間との助け合う絆に思いを馳せ、
変わってしまった現在に寂しさを思う。

人間は過去に起こった出来事を忘れると主張する一郎のセリフ
がとても印象的で、物質的な豊かさによって失われていく現在の
人間関係を総じて、人は金や物ではなく人との信頼関係を求めて
いる事が面白いように浮かび上がる。
ただ文雄が言っているように、一郎のように全てを手に入れた人
だからこそ、思う気持ちというのが含まれている訳で、人々の
中に共通する意識と、一個人のエゴが上手く混ざり合っている
事。

そんな時代の変遷を生き抜いて来た男は自分だけは変わらないと
して、町の一角の取り残された空間に居続ける姿は、殆ど禅の
境地であって、「不毛地帯」でいう所の佐々木蔵之介さんが演じ
た男みたいな役柄だ。

ドラマとしてはそんな時代が自分にとってヨシとしながらも
視聴者にその意識を無理矢理押しつけるものではない所が好感
の持てるところ。

現在の人間関係に於いて疲れ切ってしまった一郎が、再び精気
を取り戻すに足りるほどの存在感を発揮する一郎は、とても
人間味の有るキャラクターで、そんな彼に自然と興味を抱いて
いくのも分かる気がした。


鈴木一郎 …… 西田敏行 (アカネフーズ・社長)
塚田文雄 …… 柳葉敏郎 (社長付き運転手)
塚田敬子 …… 安田成美 (文雄の妻)
志津子 …… 余貴美子 (バー・レッドシューズのママ)
タクシー運転手 …… 深水三章 (文雄にアドバイス)
塚田千夏 …… 小池里奈 (文雄の娘)
鈴木園枝 …… 星由里子 (一郎の妻)
鈴木菊治 …… 大滝秀治 (靴磨き)
塚田直人 …… 染谷将太 (文雄の息子)

芦川誠、樋渡真司、中村まこと、和田啓作、伊東達広
大波誠、猪野学、岩谷健司、田村泰二郎、山田登是
山本哲也、山田キヌヲ、偉藤厚次、谷隆次、野元学二
猪野竜平、松井瑛介、島田弘久(アナ)、大作空、山田海遊
関谷春子


評価:★★★★★★★★☆☆ (8.0)


<シューシャインボーイ>「ソウル国際ドラマアワード2010」でグランプリ受賞

テレビ東京の開局45周年ドラマとして今年3月に放送された「シューシャインボーイ」が10日、「ソウル国際ドラマアワード2010」でグランプリを受賞した。

 「シューシャインボーイ」は、浅田次郎さんの同名小説が原作。大手銀行を辞めた塚田文雄(柳葉敏郎さん)は、戦争孤児から一代で食品会社を築き上げた社長の鈴木一郎(西田敏行さん)の専属運転手として働いている。一郎には、週に一度は訪れる行きつけの靴磨きがあり、靴磨きの初老の男・菊治(大滝秀治さん)は、5歳のころ空襲に遭った一郎を救った育ての親だった……。新宿“角筈の大ガード下”を舞台に、靴磨きの育ての父に親孝行をしたいという一郎の思い、文雄との男同士の友情を軸に、戦後の現代社会で忘れられたものを問いかけるというストーリー。放送時の視聴率は、12.2%を記録した。

 ソウル国際ドラマアワードは、今年5回目の開催で、世界各国の多様なテレビドラマを発掘し、ドラマ産業の活性化と世界的ネットワークを構築する目的で行われている。今年は世界43カ国172作品が出品され、日本ドラマでは「JIN−仁−」がノミネート。授賞式の様子は、韓国の放送局「MBC」で生中継された。

 柳葉さんは「この作品を見た私の母親が『良いドラマだね』と言ってくれました。それだけで、この作品にかかわってよかったなと思いました。過去を教訓に現在を生きて、そして、少しでも明るい豊かな未来を世代を問わずにコミュニケーションをとっていただけたら幸いです」とコメントを寄せている。


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