スペシャルドラマ “初秋” 
平成23年度文化庁芸術祭参加 

プロデューサー:小森耕太郎、原克子
脚本・監督:原田眞人
音楽:富貴晴美 
原作:井上靖「凍れる樹」






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蓼科でワインの製造販売をしている松原辰平は、20年前に妻を
失い、男手ひとつで一人娘の
あさ子を育ててきた。
この日辰平はそんな娘の結婚式が有るも、二次会を前にして
自宅に戻ってきてしまう。娘の結婚相手は外国人で、ニュージ
ーランドで暮らすことになっていた。
辰平の元には高校時代の親友で現在京都と小説家をしている
友人の
重宗周吉から一通の手紙が届き、そこには
「ようこそ、花嫁の父!寂しくなったら京都へ来い。花嫁の
父大先輩、重宗周吉」

と書かれていた。

辰平の元には妹の
平山桜子が心配して様子を見に来る。
妻が死んでから辰平に縁が有った女性は一人だけで、女性に
縁遠いところは心を開いていないからだと言われる。桜子は
兄を心配して盛んに縁談を持って来るも、彼はそれに目を通そ
うともしない。
桜子は、娘の相手とは全く結婚前に口を利くこともなかった。
一体何が気に入らないのかと尋ねる。

辰平は周吉に電話すると、これから京都にいくという。辰平は
従業員の上野に今から京都に行くので、娘の結婚式の二次会に
ワインを届けて欲しいと頼む。

いざ京都へ。
娘と良く来ていた旅館へと足を運ぶと、旅館のおかみの
竹子
話し合う。一方辰平はそこで有る
女性Yに電話し、明日東福寺
を散策するので良かったら来ないかと電話する。

竹子との雑談の中で彼女は番頭の男と関係を持っていることを
知る。世間体が有るので番頭をさせているという彼女。

一方タトゥーをした女性・
ベーコ(れい子)は京都の伝統工芸の
手伝いをしており、
市川たちと共に活動を共にしていた。
ボンボンが不動産を購入する事を知り、色々と説明して回る。
歴史有る町屋には代々持ち主の魂が宿っており、新築・改築
すると入居者に災いが有るという言い伝えを教える。

辰平の元に元婚約者のYが会いに来る。
しかし一年前に出した葉書に今更電話してくるなんて身勝手
な人だと辰平を非難し、自分には相手が居ることを告げる。

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娘のあさ子が嫁いだものの、父は寂しさのあまり素直に送り出
せず、自分の元から逃げ出したのに挨拶など出来ないとして
頑なに娘と向き合うことを拒む。そんな中、京都に住む友人
からの葉書を見て、会いに行こうとするが・・・

父子家庭の環境の中で、娘を送り出す父親の心情を描くと共に
娘ほどの年の差の離れた親友の娘で、自分の娘の親友でも有っ
たベーコと、15歳の時以来の再会を果たす。
忘れかけていた思いが浮かび上がると共に、そんな相手に
自分は娘の影を見ているのか、それとも恋しているのかを
模索する。

なんとも微妙な感じの物語で、ドラマテイストというよりも
文学的な映画テイストの内容だった。

京都の伝統の文化を取り込んだり、小津映画やら能や古い歌謡
曲を取り上げつつも、一方ではFacebookやタトゥーと言った
近代的なツールが登場する所など、世代差みたいなものを感じ
演出が数多く存在する。

世代差を埋める役割を果たしているのが、ベーコ側が子供の面を
持ちつつもそんな伝統文化に触れており、大人の世界にも足を踏み
入れていると言った設定が行われている。

年齢差があり違和感の有る関係に於いて、周りの流れが全て
辰平とベーコが出会い、恋に落ちてもおかしくはないという
事を示唆する為に、その流れが作為的な流れに感じる。
自分の気持ちを時代劇風に描いていく所など面白いと言えば面白い
が、やはり違和感も多い。

個人的には娘を送り出す父親の心情というテーマだけでドラマを押し
とどめて置いた方が面白かったと思う。変に恋だ愛だという要素を
含ませると、より複雑な状況と描写が必要となってくる。
年齢差のある恋愛は今日話題にも多く上がるもそれを描くには時間が
足りず、また生姜的な隠し味を使って素材の生臭さを打ち消そうとする
要素がイマイチ足りない所がある。

個人的にもっとも見所で有った部分に於いて違和感を覚えた
のが残念だった。辰平とベーコの関係をどのようにしてベーコの
父で有り、親友の山辺享介に伝えるのか。
三人の友人達が三者三様で娘を送り出すシーンを描いた形だが、
父娘関係が上手く行っていない山辺側から二人の関係を切り出し、一緒
になって欲しいと頼む所など、辰平にとって都合の良すぎるドラマとなって
おり、役所広司さんに対する接待的内容に感じてしまう。

中越典子さん、大好きな女優さんなので、シースルーの服
が見られただけでも個人的には満足だけど、流石にファッシ
ョン的な感覚とはいえ、タトゥー(本物ではないのかも知れな
いが)をしている辺り違和感があったな。古風なところに現代
的テイストを持ち込みたかったのだろうけど、コントラストが
生えるというよりも、違和感の方が大きかった。

松原辰平 …… 役所広司 (父、59歳、ワイン工場社長)
ベーコ(山辺れい子) …… 中越典子 (娘、父の元に帰らず)
重宗周吉 …… 岩松了 (小説家、辰平の友人)
山辺享介 …… でんでん (ラジオ局責任者)
平山桜子 …… キムラ緑子 (辰平の妹)
平山宏 …… 井上肇 (桜子の夫)
上野 …… 三枝奈都紀 (ワイン工場従業員)
竹子 …… 紅萬子 (旅館の女将、不倫中)
市川 …… 楠瀬アキ (ベーコの友人)
奈津子 …… 小牧菜美 (旅館の女将、墓石の娘)
墓石 …… 佐々木千吉 (元辰平の教師、石が好き)
花荻雪之丞 …… 竹嶋康成 (上七森の高級クラブ"加茂女")
おかみ …… 藤村志保 (旅館)
Y …… 中村優子 (辰平の元恋人)
タクシー運転手 …… 森下じんせい
東京人 …… 原田遊人
ボンボン …… 河原健二 (不動産を購入)
若い番頭 …… 望月章男 (竹子の恋人)
おばさん従業員 …… 一木美貴子
レディガガ …… 緒方ちか (高級クラブ"加茂女"のホステス)

城之内コゴロー、山野さゆり、湯浅崇、広瀬謙、井上未来
笹野佳奈子、板東茜

能楽師 …… 大江信行

深町貴彦、宮本茂樹、大江泰正、大江広祐、左鴻泰弘
成田達志、谷口正尋、前川光範、有松遼一


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