松本清張ドラマスペシャル 砂の器
(2011年9月10日・11日/テレ朝・視聴率は第一夜16.6%、第二夜
13.1%)

ナレーション:三上博史
脚本:竹山洋
音楽:沢田完
監督:藤田明二
プロダクション協力:東映太秦映画村
チーフプロデューサー:五十嵐文郎
プロデューサー:藤本一彦、河瀬光、小野川隆

第一夜】【第二夜】【2004年度ドラマ版






砂の器〜松本清張の最高傑作遂に完結へ!日本縦断3000キロの捜
査が暴く連続殺人の罠!?二人の刑事が見た父子永遠の旅!!天才作曲
家の殺意…衝撃の結末

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吉村は捜査員たちに和賀英良が作曲した"寂滅""永遠"
聞かせる。外で一刻も早く捜査状況を知ろうとするマスコミ
たちも何故警察の会議室で音楽が流れているのか不思議に思って
いた。
吉村はこの二つの曲がまるで性格が変わったかのように変化して
いる事を指摘し、聞いていた捜査員達も悪魔から天使に変わった
くらいの変化が有ることを認める。恐らく和賀に大きな変化が
有ったハズであり、三木殺害に関与しているのではないかと
告げる。
しかしそんな中、所轄が宮田殺しの件で、容疑を関川に向けて
いる事を知り、何故捜査を隠していたのかと本庁の刑事達は
激怒する。
関川は宮田が殺害された2月14日に、二人で
BARアムールに行き
関川はその後仕事があるからとして宮田と別れてホテルに行った
と証言しているが実際には行っていなかったのである。問いつ
めたら彼は女と居たと話したという。それは恐らく、ホステス
である
三浦恵美子の事だろうとし、しかし恵美子の住所は誰にも
分からず、しかも最近ホステスの仕事を休んでいるのだという。

捜査員達は、吉村が語る和賀犯人説は説得力がやや薄い事を
告げ直感だけで事件は進展しないと言われる。

吉村と今西は評論家・
関川に会う。
彼と面会するまでの間彼が書いた評論文を見ると、彼はいつも
は酷評しているのに対して、今回の和賀が作曲した"永遠"の
曲に関しては珍しく絶賛していたのである。
二人は関川に会うと関川は秋田県の出身だと知る。上京したの
は小学の頃(昭和15年)。女優
成瀬リエ子についてはあまり知ら
ないが
宮田から話を聞いてて居たとの事だった。和賀の曲に
ついて尋ねると、確かに劇的に曲調が変わっていることを示唆
し、まるで人間が変わった様な変貌ぶりだと告げる。

政治家・
田所重喜は、娘の佐和子と娘婿の和賀と食事しながら
色々と話し合う。重喜は曲調が変わったことについて和賀に
尋ねると、生活の変化で変わったものだと語る。

関川は刑事が嗅ぎ回っている事に関して、アムールのホステス
の一人・
律子に電話すると、恵美子の件では何も話すなと指示
する。

今西の元に亀嵩で話を聞いた
桐原小十郎から荷物が届く。
中には名産のそろばんが入っていた。桐原は何故三木が突然
東京に出てきたのかについては分からないと手紙に書かれていた。
しかし必ず東京に出てくる何らかの事情が有ったはずだと
今西は考え、三木の息子から謙一の旅の日程について尋ねる事に。

一方
上杉病院の元に恵美子から電話が鳴り、妊娠中のお腹から
出血が酷いことを聞かされる。診察に行く上杉だが、その甲斐も
なく亡くなってしまう。死因が不審な為に警察にもそれが知ら
される。
大家によると2月12日に恵美子は引っ越ししてきたという。
しかし室内に男の匂いを感じる物は一切無かった。
宮田が殺害された現場とはすぐ近くにあり、不審さを感じる。

その後上杉医師から話を聞くと、死因はお腹の中の子の死産に
よる出血死で他殺ではないと判明する。しかし恵美子は亡くなる
直前に
"辞めて赤ちゃんを殺さないで"と叫んでいた事を聞く。
引っ越し業者に尋ねると、記憶は曖昧だが、引っ越しの手伝い
に来たのは和賀ではないかと写真を指さす。

そんな中、三木の息子から手紙が届く。謙一が旅行の際に、
合計8通の絵はがきが届いたという。最後に届いた手紙には
岡山に帰ると書いてあるのに、その二日後には東京に上京して
いることが判明する。

田島と吉村は伊勢の二見旅館に行き話を聞く。
謙一が東京に上京する前、最後に泊まった旅館だった。
女将によると12月9日に一泊したが、同じ映画を二度見に
行ったみたいだと聞かされる。

一方今西は桐原の手紙の返信を読む。
謙一が駐在だった頃に、特別に世話していた子供の存在は無い
か尋ねていた。謙一は子供好きだが自分たち夫婦に子供はなく、
村の子供達の面倒をよく見ていたという。昭和13年に行き倒れの
遍路の親子を一度助けたことが有ったという。父は
本浦千代吉
で息子は
秀夫という名前だという。千代吉は病気で岡山の病院
に入院したのが13年の夏のことで、その秋に秀夫は村から突然
消えてしまったとの事だった。

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三木謙一殺害を捜査中に、話を聞こうとしていた宮田邦郎が
殺害される。ヌーボーグループを調べると、関川には謎の女性
の影があり、和賀の彼女だと思われた劇団員の一人・リエ子も
過去に自殺している事が判明する。

いよいよ第二夜目。
どのようにして犯人を特定していくのか。
そして東京には縁遠い三木が何故東京に来て惨殺されたのか。

和賀に辛い過去が有ってこそ成立するドラマだけど、その辺
が意外と言葉ばかりで伝わってくる物が少ないのが、ややこの
ドラマの感情移入を難しくしているところかな。

原作ではハンセン病によって差別を受け、その流れで殺人の
容疑まで掛けられ、逃げるようにして村を出て各地を転々と
したという過去があるのだけど、このドラマでも見ての通り
手紙のやりとりがメインである時代性を考えると、殺人容疑
だけで他の土地でも虐めを受けたり差別を受けて追い回される
だろうかという疑問が生じる。

戸籍がこのドラマでも重要になり、別人と入れ替わるという
設定だが、和賀が入れ替わった相手との関係は皆無であり、
完全に自己申告だけで済まされている点で、ややその辺の因果
関係も希薄化されてしまった。

しかし父親が殺人の濡れ衣を着せられたけれど、息子は本当に
人を殺してしまったとする辺りの皮肉は、面白く出来ている。

結局物証が無く48時間の拘束の間に自供を引き出さねばならない
とする展開が用意され、正直自供は辛いかなと思ってみていた
けど、意外と相手の感情を上手く引き出すやりとりだった。
ただその殆どは視聴者も知り得る話を総集編っぽい作りで、吉村
が語っていただけなので、内容を理解している人にとっては
少々テンポが悪く感じたのかも知れない。

戦後の混乱期という事を強調し、吉村と和賀の行き違った運命
を描いた話だったけれど、ここに居る捜査官の殆どは少なからず
戦争を経験しているだろうし、彼ら二人だけを抽出するってい
うのもやや苦しい感じがする。

しかしお世話になった人をあそこまで惨い殺し方が出来るって
いうのも戦争時代特有の心の傷なんかが作用しているのかも
知れないが、現代的感覚で見るとちょっと違和感が有ったかも
知れない。

吉村弘:玉木宏(警視庁西蒲田署刑事 / 幼少期:澤畠流星)
山下洋子:中谷美紀(毎朝新聞記者 / オリジナルキャラクター)
田所佐知子:加藤あい(彫刻家 / 和賀の婚約者)
関川重雄:長谷川博己(評論家 / ヌーボーグループ)
三浦恵美子:紺野まひる(銀座clubアムールホステス / 妊娠後、
失血死)
中山:合田雅吏(警視庁捜査一課刑事)
律子:藤井ゆきよ(銀座clubアムールホステス)
刑事:橋本一郎(警視庁捜査一課)
三木謙一:橋爪功(島根県亀嵩駐在所・元巡査、61歳)
田所重喜:小林稔侍(民友党代議士/農林大臣 / 佐和子の父親)
辰井:榎木孝明(警視庁捜査一課課長)  
桐原小十郎:米倉斉加年(お茶の先生 / 三木謙一の旧友)
黒崎:大杉漣(警視庁捜査一課係長)
田島:西村雅彦(警視庁捜査一課刑事)
和賀英良:佐々木蔵之介(作曲家 / ヌーボーグループ)
今西栄太郎:小林薫(警視庁捜査一課刑事)

すみこ:松島紫代(BARボヌール給仕)
旅館女将:まつむら眞弓  
酒蔵の店主:福本清三
桑原:かとうかず子(国立国語研究所言語学者)
川野英造:森本レオ(大学教授)
成瀬リエ子:吉田羊(銀幕スター杉浦秋子付き人兼劇団「波」女優 
/ 自殺・25歳)
宮田邦郎:山口馬木也(劇団「波」俳優 / リエ子の遺体第一発見
者)
三木彰吉:原田龍二(雑貨商 / 三木謙一の婿養子)
吉村妙子:杉山優奈(吉村弘の妹 / 空襲で死亡)

刑事:井上肇(西成城署) 
婦人警官:中山京子(警視庁)
家政婦:前川恵美子(関川重雄邸)  
引越し業者:谷口高史
上杉:小林隆(上杉医院内科医)
看護婦:高橋知代(上杉医院)  
澄子:烏丸せつこ(伊勢二見旅館女将)
支配人:六平直政(伊勢あさひ映画館)
社長:立川三貴(伊勢あさひ映画館 / 田所重喜と同郷の親友)
医師:北川肇(里原市民病院)
住職:山田明郷
田中:木下ほうか(大阪浪速東区役所市民課戸籍係係長)
課長:細川純一(大阪浪速東区役所市民課)
三木謙一の妻:鈴川法子
本浦 秀夫:青木淳耶(三木謙一が世話するが後に失踪)
本浦 千代吉:山本學(秀夫の父 / お遍路の途中で病に倒れる)
お妙:江波杏子(本浦千代吉の義姉)

近童弐吉、木内義一、尾方裕司、石田龍昇、幸世、田井克幸
木村康志、北沢光雄、藤井ゆきえ、佐藤浩、澤田誠、多々納斉
南周平、上村厚文、谷口高史、井上真司、松永吉訓
藤沢徹衛、林聖也、川鶴晃裕
山根誠示、窪田弘和、柴田裕司、松島紫代、鈴川法子
前川恵美子、高橋知代、中山京子、井上久男、細川純一
大名彩未、石川栄二、田村将之、泉知奈津、澤畠流星
杉山優奈、青木淳耶、米倉斉加年


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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