ドラマ・てのひらのメモ 
(2010年10月23日、NHK)

原作:夏樹静子
脚本:梶本惠美
音楽:宮野幸子
演出:黛りんたろう

http://www.nhk.or.jp/dodra/tenohira/


あなたは本当にわが子を放置したの?裁判員に選ばれた一人の主婦がたどり着く真実
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折川福美は専業主婦。夫・孝之と14歳になる反抗期まっただ中
の息子がいる。
家事は家族への祈り。昔は今よりもずっと手間暇のかかるもの
だった。全ては家族への祈りの行為だという。

この日、福美は裁判員の抽選のために裁判所へと足を運ぶ。
夫は妻に裁判員が当たる気がするという。息子・翔太に夕方
までかかる事を告げ、雨が降りそうだからとして傘を持って
行くよう告げる。

不況のサラリーマンと思春期の息子を抱え、来る日もこんな
日常が続く主婦。私の祈りは届いているのか?と思う。

裁判所では50名近い人の中から6名の裁判員が選ばれる。福美は
欠員が出たときに参加することになる補充裁判員になる。

裁判では、
被告:種本千晶 (37歳)
裁判長:仲里
被告側弁護士:平潔司
検察官:磯貝毅
裁判員:北村、花岡、三角、和久田、藤、山口


早速起訴状が読まれる。
被告・種本千晶は、6歳の息子・徹を平成21年11月17日、午後3
時、喘息による発作の兆候を見せる中、それを知りつつも仕事
に行き、午後8時10分に電話したが出ることのない息子の事を
放置したせいで、喘息による窒息死をさせた疑い・保護責任者
遺棄致死罪が適用されるものではないかというものだった。
千晶は、それに対してあの日発作を起こすような状態ではなか
った事を語り、電話に出なかったのは寝ているものだと思った
からだと告げる。
被告側弁護士の平潔司も、故意が無い無罪を主張する。

検察官の冒頭陳述が行われる。
大手広告代理店に勤める被告・種本千晶は、夫・種本悟を
2年前の平成19年に交通事故で亡くし一人で育てていたという。
事件の有った当日は午後1時40分に保育園から熱が38度2分
有るので家に連れて帰ってほしいと言われて連れて帰り、午後
3時に帰宅。息子は3歳の時から喘息持ちで主治医の東間圭三
院長から苦しいときは吸入器を正しく使い、傍を離れずしっかり
診ておくよう指示されていた。しかし症状が軽くなり、それを
見て午後4時に会社へいく。彼女がプロジェクトリーダーを
していた会議に出席して午後5時から6時50分まで会議。
そして7時に一度電話を入れるも繋がらず。7時50分に城園と
落ち合い、8時10分に自宅に二度目の電話。不安になったが自宅
に帰ろうとせず、城園の離婚話で口論になり、9時15分に
彼のマンションを出て、10時5分にマンションに到着。意識を
失っていた息子を救急病院に運んだが既に死んでいたという
もの。

司法解剖の結果、亡くなったのは午後9時から9時30分の間だ
ったという。危険な状態を認識していたのかどうか。

弁護人の冒頭陳述では、息子は何度も過去に発作を起こしている
が自分で吸入器を使っていれば収まっていたという。これは
不幸な偶然が生んだ偶発的な事故であるという。

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折川福実は平凡な専業主婦だったが、思春期の息子を抱え、
その対応に苦慮する中で、ある時裁判員に選ばれる。
担当する被告は自分と同じく家庭の母親であり、社会人として
の自分と子育てに追われる忙しい女性であった。

事件そのもののサスペンス性も興味深い物が有ったし、一日
また一日と裁判に関わって行くにつれて、被告の女性との
共通点を探り、自分の家庭の事情と対比されて進行するドラマ
の妙を感じる内容だった。

自分なりに頑張ってきた子育てではあるが、常に完璧にこなせる
ものではない。どんな人であれ子育てに失敗は付きものだけれど
その一回の失敗が、人の生死に関わってしまう事への不幸さ
加減が伺えるものだった。

冒頭で弁護士がこの不幸は偶然が生んだ偶発的な事故だとした
けれど、端から見れば助けられるものだと思う物が有るだろうし
逆にそれを経験したものに取っては、そういうリスクも抱えて
いるものだという認識するものだと思う。

陪審員たちの反応が興味深く、男性と女性で意見を交わしあう
時のその辺の性格の違いは、ドラマとしてとてもよく描かれて
いたと思う。

ドラマとしてよくできていたのは、被害者である息子に対する
母親の愛情の有無を、他人からの伝聞で有ったり、被告の日常
の生活態度の中でそれを探り当てていく部分だ。

アイス一つから愛情の有無が分かっていく辺りが面白い物が
有ったし、最後に意地が悪いように血縁に対する問題を
発覚させていくところなど、とても上手い段取りで描かれていた
と思う。

そういえば、橋爪功さんと蟹江敬三さんの息子さんが出演されていますね。


折川福実 …… 田中好子 (主婦)
種本千晶 …… 板谷由夏 (被告、6歳の息子を保護責任者遺棄致死)
折川孝之 …… 佐野史郎 (福実の夫)
城園茂太郎 …… 長谷川初範 (千晶の彼、不倫)
磯貝毅 …… 本田博太郎 (検察官)
折川翔太 …… 高畑翼 (14歳、息子・反抗期)
種本徹 …… 小林海人 (6歳、千晶の息子、喘息持ち)
平潔司 …… 神尾佑 (被告側弁護士)
東間圭三 …… 有川博 (主治医)
石浜加根子 …… 角替和枝 (千晶の隣人の女性)
種本薫 …… 岩崎加根子 (父方の祖母、千晶を非難)
森口裕輔 …… 橋爪遼 (アルバイト、アイスを買う徹を目撃)

仲里 …… 田中哲司 (裁判長)
野々宮 …… 野元学二 (右陪席)
畑 …… 長谷川かずき (左陪席)
北村 …… 風間トオル (裁判員、途中で抜ける)
花岡 …… あき竹城 (裁判員)
山口 …… 上田耕一 (裁判員、母親失格と激怒)
藤 …… 甲本雅裕 (裁判員、脱サラして農家)
和久田 …… 蟹江一平 (裁判員)
三角 …… 朝田あおい (裁判員)


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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