ドラマスペシャル 椿山課長の七日間

甦りの旅がおこす奇跡と感動!!大切な心を求め彼らは現世に
舞い降りた…最後にありがとうが言いたくて…浅田次郎の傑作、
遂にドラマ化!!


脚本/後藤法子
プロデューサー/田中芳之、菅井敦、平部隆明
監督/猪原達三

http://www.tv-asahi.co.jp/tsubakiyama/


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百貨店勤務の椿山和昭はある時、草原で目が覚める。
ここが何処なのか、全く分かるモノが無く近くの建物に救助を
求めて駆け込んでいく。そこで申請書を手渡された彼は受付で
亡くなった事を聞かされる。
部下の嶋田良一と大創業祭に向けて仕事をしていたが、三光
商会の人たちとの会食中に突然倒れて亡くなったのである。
現世での罪を認めて書類にサインをすれば天国に行けると言わ
れる。罪は邪淫の罪で女心を踏みにじったものだと言われるが
心当たりのない和昭は抗議し認めることが出来無いという。
彼の周りには妻・由紀、そして職場には動機の佐伯知子が居る
が、昔は間違いも起こしたが今は時効だという。
現世に戻って事実確認を許される。和昭以外には、共進会の組長
の武田勇、そして工事現場で亡くなった根岸健太が特例を認め
られた人物だった。残された時間は三日。その際の条件として
正体を知られないこと、復讐をしないこと。それを破れば恐ろ
しい事になると脅される。

和昭はベッドの上で目が覚める。
たちの悪い夢かと思ったが鏡に映る自分の姿は、見慣れた中年
の姿ではなく可愛い女性の姿だった。名前は和山椿・スタイリ
ストという事での復帰。必要な物は全てカバンから出てくると
言われる。
椿は現実を受け入れきれずにバーで飲んでいると竹之内勇一と
いう弁護士から声を掛けられる。良い雰囲気になりホテルへと
二人で足を運ぶとその時エレベーターで女の子・根本蓮子の姿
を見掛ける。なんとここに居合わせた三人はそれぞれ"蘇りキッ
ト"を持っていたのである。そこで初めてこの三人が、蘇りを
許された三人である事を知る。

互いに自己紹介をする。
竹之内勇一は銃弾を三発浴びて亡くなったが、許せないのは人
違いで殺されたと言うこと。死に際にヒットマンの男性が人違
いだった事を口にしたという。誰に間違われたのか、そして誰に
命令されたのかを調べて子分に復讐させるという。
椿は残してきた家族のことが心配だという。特に反抗期の息子
陽介との事。蓮子は自分の本当の両親を捜すことにあるとの事
だった。

椿は電車で自宅へと向かうとそこで父親の和利に会う。
ボケて名前を言えず施設に入っているはずなのにハッキリとした
意識で行動していることに驚く。椿はかつて和利と病院で会った
事があるがその時は病気だった事を告げると、実はボケたフリを
していた事を知る。全ては同居を解消するためのウソ。しかし
その結果息子の葬式にも出られず後悔していることを聞く。
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現世では知ることができなかった三者三様の人生に隠された
真実とは。
生きているときには全く関わり合いの無かった三人が不思議な
縁で結ばれている事が発覚していくなどとても面白く出来た
ドラマだった。

和昭は異性との関係、そして息子や父親との関係を描いた話
だった。和昭に扮したのは女性・和山椿という事もあり、
同性からの告白に対しては障壁を減らして上手く悩み相談でき
るような設定を作りだしたと思う。
この手の混乱したような状況を演じるのは石原さとみという事で
とても安定した演技を見せた。
まさか妻にも結婚前から思いを寄せていた人物の存在があり、
自分と同じような立場の人間を味わせる事で、自然と彼女の立場
を許していくような流れになる。

一方武田の物語はヤクザのストーリーだ。
最初は復讐を考えているが、徐々に子分達のその後の人生を
考えていくことになる。死んだ人間には未来を考えることは
出来無いが、生きている人ならば何人たりともそんな未来の可能
性が有ることを訴える展開で、視聴者自身にもそんな言葉を投げ
かけて居るようなエピソードだ。

根本蓮子の物語は4歳まで施設で育ったという事をヒントに産みの
親を捜すという物語。和利が福祉課で働いていたという過去を
利用して上手く関わり合いを持たせること。
最後には武田のストーリーとの見事な絡みで、ドラマに出てくる
市川の心に上手く気持ちを乗り移らせていく。

どの人物も自分が亡くなったそれぞれの人物だと名乗り出たい
気持ちにかられたりするが、当然それが出来無いもどかしさを
感じ、それでも態度や行動によって亡き主人公達の思いを伝えて
いくという事でとても熱い物語になる。
生前の癖などを上手く利用したり、象徴的なエピソードを重ねて
いくなど興味深い要素で溢れている。

これまで何度となく映画化・劇場化されている物語だけに、
演出としても上手く煮詰まった様な印象の有るドラマになった
と思う。

和山椿 …… 石原さとみ (椿山和昭の生まれ変わり)
椿山和昭 …… 船越英一郎 (百貨店課長、46歳)
椿山由紀 …… 戸田菜穂 (和昭の妻)
根本真帆 …… 石野真子 (健太の里親)
佐伯知子 …… 田中美佐子 (宝飾店勤務、和昭の事が好き)
椿山和利 …… 津川雅彦 (和昭の祖父、役場に勤めていた)
武田勇/竹之内勇一 …… 北大路欣也 (ヤクザ)

蜂須賀鉄蔵 …… 石橋蓮司 (ヤクザ、武田の親分)
市川繁夫 …… 松重豊 (ヤクザ、武田の子分)
市川静子 …… 東ちづる (繁夫の妻)
根岸健太 …… 平澤慧洸 (事故死)
根本蓮子 …… 森迫永依 (健太の生まれ変わり)
純一 …… 高岡蒼甫 (武田の子分)
卓人 …… 坂東巳之助 (武田の子分)
五郎 …… 石井正則 (ヒットマン、武田を間違って殺す)
ハツコ …… 大島蓉子 (真帆の家の使用人)

相島一之、清水ミチコ
吉本菜穂子、阿南敦子、朝倉えりか、伊集院八朗、南雲勝郎
徳井広基、伊藤雅彦、小磯龍哉、伊澤征樹、緒田龍光、瀬川和夫

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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