LAW & ORDER
(LAW & ORDER) シーズン17





October 13, 2006
第4話 血塗られた憎悪 Fear America

監督/Constantine Makris 脚本/Sonny Postiglione
Robert Nathan
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ビデオカメラわ前で、覆面を被った二人の男はアラブ人の男に
ナイフを突き立てる。「イラクでアメリカ人が死ぬと喜ぶのに
何故アメリカに住み着くのだ」として、覆面の男たちはお前ら
のジハードなど恐くないとし、次はお前らが怖がる番だと語り
殺害する。背後にはアメリカの国旗と共に「一つのアメリカ
の為のアメリカ人会」と書かれていた。

VTRがテレビ局に配られる中、遺体はエリック・カラビー(26歳)
だと判明する。ベイリッジに住む弁護士で、サイフなどには
一切手をつけられていなかった。VTRの内容からもメッセージ
性の高いものだと告げる。遺体が発見・殺害されたのは古い軍の
倉庫であり、血の上には靴跡もあるが手がかりにはなりそうに
ないと鑑識のM.E.ベルは語る。また遺体は3時間以内に殺害され
たもので、抵抗の跡があること。本人以外の毛髪も落ちていて
被害者は指輪をしていた。ニーナは妻になんと言えばいいのか
と嘆く。
そんな中、フランクス広報官も現場へとやってくるとアニタ
らと話をする。既にこの事件の報道だけでなく、犯人からの
メッセージVTRが一部始終放送で流されていることを語る。

エリックの妻・ダイアン・カラビーに夫が殺害されたことを
知らせに行く。泣き崩れるダイアンの横にはイラスム教のモスク
の導師が傍にいて支えてくれていた。夫はアメリカ人はみんな
良い人間だと言っていたのだとし、常に安心するよう言って
くれていたのだという。エドやニーナは何か強迫されていた
ようなことはないかと尋ねると、導師は私のモスクには600人の
信者が居るが、脅迫など日常的にあることだという。
ダイアンは10時半頃夫に電話が有り、夫は職場に出かけたという
ものだった。私たちもアメリカ人なのに、目の敵にされるなんて
と嘆く。導師はエドたちに警察は力を尽くしてくれていると
話したいので早急に解決するよう求める。イスラム教徒の仲間
は警察は信用していないと語ると、ニーナは我々はこんな
犯罪を決して許さないと語る。

NY市警の元には、合同テロ対策班ヘンリー・ポールソン
FBI捜査官ブライアン・グリッグスもやってくる。
夜10時頃に職場の法律事務所から電話を受けているとされて
いるが、ケータイや自宅の電話にそれらしき電話が有った
形跡はないと語る。
ヘンリーによると犯行声明を出していた「一つのアメリカ
の為のアメリカ人会」は90年代以降目立った動きはなく、もう
存在していないのだろうと語る。

6月29日(水)・ホフマン&ゴールド法律事務所
シニア弁護士のホフマンから話を聞くと、一昨日エリックの
元にはベンという男性が来ていたこと。カラビーのオフィス
から口論が聞こえた事を告げ、"伝統"とか"間違っている"
と言った発言を耳にしたという。

ベン・ファウラーは料理店のウェイターとして働いていた為
に話を聞きに行く。2日前に確かに彼のオフィスを尋ねたが
口論になったのは単なる友達同士の喧嘩のようなものだと
いう。最近彼が夜に帰宅するのが遅くなったことを受けて
従姉妹でベンの妻のダイアンから相談を受けたのだという。
そこで浮気しているかどうかを問い詰めたとのこと。浮気
するのを辞めないと導師に話すと言ったのだという。エリック
は信仰に背いていたのか。

エリックのパソコンを調べたいとして令状を取る。
導師は被害者のエリックを犯人扱いすれば、町中のイスラム教徒
からの反感を買うのだという。
そんな中クローゼットの奧から足の付かないプリペイドカード
とコーランが見つかった事を語る。過激派の文章が有り、
インターネットの履歴にはアラビア語のサイトが32件も掲載
されていた。テロ対策班によると全て反政府主義のサイトだと
いう。しかしカラビーはテロリストの監視対象者にはなって
いないという。カラビーの携帯から5回の電話があり、事件の日
には警察にも電話をしているという。
その警察への電話を確かめにいくと、彼は「36時間後にテロを
起こそうとしている人物がいる」との密告する電話で、警察と
ユニオンスクエアで待ち合わせする約束になっていたのだと
いう。テロリストではなく情報提供者だったことが分かる。

今夜何かが起きるハズ。
声を聞く限りではウソの情報とは思えないというNY市警たち。
逆探知には最低4分かかる事を告げる。
カラビーのことを調べると、彼は移民二世で仕事も結婚にも
恵まれていた。カラビーは確かにその手の集まりに参加した
のかも知れないがすぐに誤りだと気が付いたのだろうと語る。
グリッグスからアラウェイセキュリティから電話した形跡が
あるとの事だった。

6月29日(水)・アラウェイセキュリティ
会社の責任者のオールドリッジから話を聞くと、カラビーの事務所
のクライアント企業だと分かる。我々は港や橋、地下鉄などに
監視カメラシステムを設置し、ネットワーク管理をしている
のだという。カラビーたちが来たのは契約書に不備があるという
ことだったとのこと。カラビーと一緒にもう一人いた事を告げ
会社の防犯カメラを見ることに。するとそこに写っていたのは、
ベンだという事が分かる。

6月29日(水)・ベン・ファウードのアパート
6月29日(水)・クレセントサン・モスク
6月30日(木)・連邦検事局
9月27日(木)・サーキン判事の執務室
10月3日(月)・高位裁判所
10月6日(木)・高位裁判所
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アメリカに住むアラブ人・イスラム教徒のエリック・カラビー
が首を切られて殺害される。イスラム原理主義者たちが犯した
テロ事件の影響が未だに強くアメリカ市民の心に残されており、
犯行声明の主張などを見るとメッセージ性のあるものだと分かる。
しかし長年要注意人物を追っているテロ対策班は、被害者は
警戒リストに入って居ない人物だとし、更には殺害を犯した
アメリカ人組織だと思われる「一つのアメリカの為のアメリカ人会」
というの90年代に消滅している組織である事を知る。

アメリカで起きている民族的な対立の構図を見ていると、
日本に於ける日本人と韓国人の構図と似ている感じがしてくる。
いつまで過去にしがみついているのか。
同じ民族だというだけで色んな差別や言われない嫌疑をかけられる
ことを経験してしまった人物の鬱積した状況というのが、より
アメリカ人の中では想像上で大きくふくらんでいくものが有るの
だろう。

モスクとか導師と言ったイスラム教徒としての聖域に踏み込むべき
かどうかの葛藤も有るし、例えイスラム教徒がアメリカに於ける
マイノリティだとしても、その戦いは数による優劣が決まるもので
はないことは明らかなので、より問題は複雑だ。

アメリカの歴史から見ると、色んな移民によって成り立ってきた
建国の歴史があるので、そこには常に価値感の相違によって
争ってきたものが有るのだろうし、それでも上手く国を舵取り
してきた中にはアメリカの持つ寛容さと、そこに住む人たちの知恵
や英知の結集というのが有ってこそのものだと思うので、こういう
困難にも向き合い、解決してくれそうな感じがする。

なんと言っても許せないのは、エリック殺害事件に於いて殺害を
犯したのが同じ民族の人間であり、テロ事件を起こそうとしている
計画をバラされそうになったからという理由だけで殺害に及んで
いることだ。イラクなどにみる自爆テロを見ていると、同じ
民族なのに何故傷つけ合うのかとする思いも強いのだけど、
宗派とか派閥の争いだけで、人はそんなに非情になれるのかという
感じがしてくるね。

色々なネタが含まれているので、見ている時にはなるほど・・と
思っていたのだけど、この感想を書いている時にはすっかり
忘れている(笑)のでなかなか全てに言及するのは難しいのだけど、
覚えて居るのは・・・

エドとニーナの間で黒人の差別の歴史に言及したやりとりが
行われたこと。

アラブ人だという理由だけでニーナは、監視リストに乗っていない
という事に言及した際に肌の色で判断する気か?として、エドが
反論した際に黒人と刑事の差別の歴史との戦いに言及した格好
だったけど、人種的分析と差別は違うということをニーナは主張
していた。互いに皮肉を語って、「それでも夜に黒人が3人前に
いたら私は逃げる」と語るニーナのさばけた感じが良いキャラだな
と思えるし、「音声だけならば肌の色は分からない」と皮肉を
言っていたのが印象的だった。

国家安全保障法違反

FBIとしては犯人をNY市警から引き渡して欲しいところ。
コンテナに積み込まれてきたものは容疑者のベンたちは、ロンドン
で製造されたウラン235だと思っているが、イギリスの諜報員が
ダミーとすり替えてしまっているので、FBIとしては検挙すること
が出来ずにいること。NY市警としては、ベンがエリックを殺害
した動機の一つとして、テロ計画を企てていたことを立証する
為にもFBIから放射性物質が積み込まれたコンテナが上陸した
とする情報を法廷で使いたい意図があるものの、残念ながら
そのことを語ることは、機密事項であり、国家安全保障法違反に
当たるというものだった。

修正第4条違反・カイロ判決

アントニン・スカリア最高判事がカイロ判決を認めたことがある
ということで、それ以降、捜査に於いてはこの案件が引き合いに
出されることが多いようだ。該当してしまったのは、モスクに
居る容疑者を令状もなく熱センサーを使って確認したということが、
プライバシー権の侵害に当たるものではないかというものだった。
テクノロジーの進化によっても個人のプライバシーは犯されるもの
ではないとするのが修正第4条違反の趣旨であり、盗聴などと同様
だとされるものが有った。ただこれに該当するのはあくまで
プライベートの施設の中に有って、モスク自体は公共の場ではない
のかとして判断を仰ぐものが有った。

アメリカ人かイスラム教徒か・・・

その選択が迫られる今回のエピソード。
対局の関係にある分だけ、どちら側に肩を持つかどうかで、
コミュニティへの立ち入りや仲間からは除外されるという切ない
事情が有る。
導師としては仲間意識を大切にして、同胞の中にアメリカ人を
憎まないように説得するのが大切だと考えていたが、人間として
の良心としては、同胞のベンが殺害したとする事実を熟知して
おり、難しい選択に迫られた。
導師だけでなく、殺害されたエリックの妻もまたアリバイ証言に
関しては、イスラム教徒に不利な発言をすることで、アメリカ人
としても受け入れられず、コミュニティからも除外されるという
厳しい立場にある。
この状況って、まさに日本と韓国と中国の関係に当てはまるもの
が有るんだよね。

判事がお茶目だ

アメリカでは判事にもユーモアが有る。
検察側がベンがテロリストの可能性に言及する際に、ベンは
パスポートの渡航記録からもアフガン、シリア、パキスタンを
尋ねていることを証拠の一つとして発言する。
ロビネット弁護士は
「休暇の旅行で文明の発祥地を訪れただけだ」と主張したのに
対して、判事は、「君が休暇でカブールに行く事があれば教えて
くれ」と皮肉を語っていた。

裁判での本質

いつの間にか裁判は拡大解釈され、被告がイスラム教徒やテロリス
トの件で裁かれているような感覚に陥っていた。
しかしジャックはそれを否定して、テロリストとして裁くのでは
なく殺人者として裁くよう陪審員に語っていた。

人々の恐怖

人は恐れを持つとその元凶を絶とうとする。
弁護士側はそんな暗黒時代の出来事として、第二次世界大戦に
於けるアメリカ人の罪について言及していた。
3千万人のイタリア系アメリカ人、1万1千人のドイツ系アメリカ人、
11万人の日系アメリカ人が収用所に送られたこと。
昔橋田壽賀子さんが描いたドラマ「99年の愛〜JAPANESE AMERICANS〜」
の中でも言及されていたな。




エド・グリーン (Jesse L. Martin) NY市警
ニーナ・キャサディ (Milena Govich) 27分署に着任
アニタ・ヴァン・ビューレン (S. Epatha Merkerson) NY市警・警部補
ジャック・マッコイ (Sam Waterston) 地方検事補
コニー・ルビローサ (Alana De La Garza) 地方検事補
アーサー・ブランチ (Fred Dalton Thompson) 地方検事
--- (Steven Zirnkilton) Narrator (voice) (archive footage)

イブラヒム (Navid Negahban) イスラム教導師
ヘンリー・ポールソン (John Viscardi) 捜査官
ダイアン・カラビー (Marjan Neshat) エリックの妻
エリック・カラビー (Neil Shah) 26歳、殺害されるイスラム教徒
ベン・ファウード (Bernardo Pena) イスラム教徒、犯人
ブライアン・グリッグス (Jack Noseworthy) 捜査官
ウォレン・シェンカー (Michael Genet)
ポール・ロビネット (Richard Brooks) ベンの弁護士
マーサ・サーキン (Mercedes Herrero) 判事
ストック (Curzon Dobell) 判事
スティーブ・オールドリッジ (Tony Cucci) アラウェイセキュリティ
モラレス (Gerardo Rodriguez) TARU Tech / 95%声紋は一致すると
メレディス・ホフマン (Anne Torsiglieri) 法律事務所、エリックの上司
--- (Greg Connolly) MSNBC Anchor
フランクス (John Schiappa) DCPI / 広報官
ニールソン (Mark Aldrich) CSU Computer Tech
--- (Douglas Dickerman) Man
ローリングス (Torsten N. Hillhouse) 捜査官、熱センサーを使う
ウィンストン (Sean Phillips) JTTF Detective
M.E.ベル (January LaVoy) 鑑識
--- (Todd Faulkner) Arraignment Clerk
--- (Peterson Townsend) Foreperson
--- (Ashley Bryan) Receptionist
--- (Douglas Haddad) Muslim Man
--- (Russell Jordan) Csi Technician
--- (Sal Longobardo) Court Reporter


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