映画 「252 生存者あり」

監督:水田伸生
原作:小森陽一
脚本:小森陽一、斉藤ひろし、水田伸生
撮影:林淳一郎、さのてつろう
プロデューサー:佐藤貴博、下田淳行

http://wwws.warnerbros.co.jp/252/


「巨大台風東京直撃!!タイムリミットは18分」
--------------------------------------------------------
第八消防方面本部・消防救助機動部隊で働く篠原静馬は、ビル
火災の為に現場へと足を運ぶ。部下の青木、川瀬、小山、大和
田、そして宮内は取り残されたものの救出に向かう。7階にも
要救助者がいるが、そこまで登れないと見ると、静馬は5階まで
の救出を指示する。

台風直撃まで2日前の9月14日。
小笠原近海で調査していた探査船「凌風丸」から詳細なデータ
が上がってくる。気象庁予報部で働く海野咲は、先日の地震
発生に於ける海の影響を調べていた。海域に眠るメタンハイ
グレードが地震の亀裂によって噴出し、海水温が上昇してい
た。それに伴い、近海では魚が大量死という事態に見舞われる。
更にそこから派生し、巨大台風が発生しようとしている事が
計算上判明する。しかしこれはまだあくまで計算上のことだと
し、上司の小暮は噂を発信しないよう注意し、慎重に観測して
くれと告げる。

一方過去、消防救助機動部隊に働いていた篠原祐司は、この日
仕事のために娘・しおりとの約束を破ってしまい、娘は失望し
ていた。妻の由美はそんな娘に、お仕事だから仕方がないと
して説得。明日は夕方に終わるので銀座で待ち合わせしようと
告げる。明日はしおりの誕生日だった。誕生日プレゼントに
何が良いか?と尋ねると、不思議な物が良いというしおり。

寝る前にベランダでタバコを吸う祐司に対して由美が語りかけ
る。前の仕事が恋しいのか?と。

9月16日、午後2時30分。
祐司は銀座の三越に娘の誕生日プレゼントを買いに来る。
そこには韓国から出稼ぎに来たスミンがいて、店の客から言い
寄られていた。しつこい客から逃れると洗面所で執拗に手を
洗う。そんな中、実家の母から電話が鳴り、結婚を控えていた
弟が交通事故で亡くなったとする連絡が入る。思わず手にして
いた携帯電話を落としてうなだれてしまう。

午後3時15分。新橋駅前。
由美としおりは共に駅で切符を買おうとしていた。人が行き交
う中、迷子にならないよう手を引いて歩く。しおりは耳が聞こ
えず、話すことがままならない。
駅構内には大阪から熱帯魚の循環装置の営業活動に来ていた
藤井もアタッシュケースを持参で歩いていた。

突然銀座にいた祐司は空の異変に気がつく。
次の瞬間、巨大な雹が降り注ぎ、街を行き交う人々に直撃。
更にはビルのガラスに直撃して次々とガラスが割れる音が
鳴り響く。それと同時に街の人々はパニック状態に陥り、
叫びながら非難する。

由美の居た駅でも、地下に逃げ込んできた人々で慌ただしくなる
中、祐司に電話する。しかし電話機を落としたと同時にしおりの
手も離してしまい離ればなれになってしまう。
そんな中、津波が発生し東京の中心部を飲み込むほどの水が
流れ込み、地下にも激しい水量が流れ込んでくる。しおりは必死
に合図である笛を吹くが、母とは再会することが出来無かった。

電車で急いで新橋にやってくる祐司は、ホームに一人で居る
しおりを見つける。なんとか彼女の元へと近づこうとするが、
逃げる人々とは逆向きであり、なかなかしおりのもとに近づく
事が出来無い。そうしているウチに、地下に流れ込んでくる
水量によって地下にいた人々は一瞬にして飲み込まれる。

地下は完全に水の中。水が引いた後に、なんとか生存者を捜そう
と声を上げる祐司。閉ざされた用具入れのような場所から
物音が聞こえ、中を明けるとスミンとしおりが居た。無事である
事に一息つくが、スミンは腕から大量に出血していることが
分かる。

--------------------------------------------------------

直下型地震が発生して数週間後、その影響から巨大台風や更
には津波が押し寄せ、人々が多数行き交う東京の街を襲う。
数多くの困難を乗り越え、一人でも多くの人を助けることが
出来るのか。

映画では段取りよくパニック状況を描いていき、雹で地下に
追い込んでは、地震による崩落と水攻めによって上手く
密閉の状態を築き上げていく。

何故か新橋ばかりがそんなパニックの元凶でもある高潮を
受けてしまったり、旧新橋駅に居る祐司たちをハイパーレスキ
ュー隊はピンポイントで探り当ててしまったり、キム兄が持つ
アイテムがあまりにもピンポイントで役に立つ辺りの都合の
良さは感じるが、なかなか迫力のある映像が用意され、それ
ぞれのキャラクターの持つ私生活上での問題が、パニック状況
の中で、面白い葛藤として浮かび上がってくる。

とにかく主人公周りの人間だけが助かれば良いとする辺りの
思い切りの良さで、舞台も限定し、それ以外の人間や要素は
バッサリと切り捨てている。死体が山のように築き上げられる中
でも、お約束とばかりに主人公らはバリアが貼られているかの
如くサバイバル戦を生き抜いていく。

祐司が何故ハイパーレスキューの職から辞さなければならなか
ったのか。静馬が抱えているトラウマとは一体何なのか。
パニック状況に於いて一つの決断が死と直結する状況の中、
立場の違いによって助けるべきか、自らの命を優先すべきかの
葛藤が有り、家族を持つモノ持たないモノ、過去にそんな経験
をして失敗した決断を取ったと感じている者など、そんな葛藤に
於いて、それぞれの発言に説得力を持たせている。

正直最後に祐司が出てきたときには萎えるものが有った。
僅か18分間しかないというのに、急ぐ様子が無いところとか、
祐司が自力で出てきてしまうというお粗末さは、現場にいた
レスキュー隊にあるまじき諦めの根性を感じ、やや悲しい面も
存在する。
海猿」でも時間的な切迫感を演出しようとする割に、現場で
は生ぬるい対応しかしていないと感じるところが、日本映画の
辛いところだったかな。

テレビで見たので相当カットされているんだろうな。
阿部サダヲさんとか出てこなかったし。


篠原祐司 …… 伊藤英明 (自動車販売)
篠原静馬 …… 内野聖陽 (祐司の兄、消防救助機動部隊・隊長)
重村誠 …… 山田孝之 (研修医)
海野咲 …… 香椎由宇 (気象庁予報部)
藤井圭介 …… 木村祐一 (大阪の開発業者、子供9人)
キム・スミン …… MINJI (銀座のホステス)
宮内達也 …… 山本太郎 (消防救助機動部隊・副隊長)
篠原由美 …… 桜井幸子 (祐司の妻)
篠原しおり …… 大森絢音 (7歳・祐司の子供、耳が聞こえない)
川瀬久嗣 …… 松田賢二 (消防救助機動部隊)
小山健太 …… 平塚真介 (消防救助機動部隊)
大和田 …… KENROKU (消防救助機動部隊)
風野牧 …… 中村圭太 (消防救助機動部隊・現場で亡くなる)
青木一平 …… 松田悟志 (消防救助機動部隊)
真柴哲司 …… 杉本哲太 (消防救助機動部隊・本部長)
小暮秋雄 …… 西村雅彦 (気象庁予報部)
津田沼晴男 …… 温水洋一 (気象庁予報部)
長坂(祐司の上司) …… 阿部サダヲ
男(スミンを誘う) …… ルー大柴
地下鉄の駅員 …… 半海一晃
お天気キャスター …… 木原実
ニュースキャスター …… 笛吹雅子


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

inserted by FC2 system