劇場版 「相棒」 AIBOU THE MOVIE
絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン

監督/和泉聖治
脚本/戸田山雅司
プロデューサー/松本基弘、上田めぐみ、香月純一、西平敦郎


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南米エルドビア共和国では軍の装甲車が通過するのを見て現地
の子供達は身を寄せ合ってそれが通過するのを静かに見守る。

機密文章を暖炉の火で燃やす男・・・

多摩の鉄塔の上で人が首を吊って亡くなっていた。亡くなった
のは昨年
セントラルTVのニュースエクスプレスで司会者を務め
ていた
仲島孝臣(52歳)。鑑識を行う米沢は、被害者は背後から
紐状の物で首を括られたのだろうとの事。

一方衆議院議員会館では
片山雛子が出勤する。秘書が封筒を
開けると軽く爆発するが、大事には至らず。

刑事部長から呼び出される特命係の右京と薫。議員宛に送られ
てきた封筒の件を知らされ、恐らく警告目的のものだという。
恐らく左派の過激組織
"赤いカナリア"が平成未来派の先鋒であ
る片山議員が提出しようとしていた
改正通信傍受法案の成立
阻止が目的
ではないかという見解を見せる。明日エコロジー博
に出席のために片山議員は海外に行くことになっている為に、
特命には飛行場までの道中を警護をするよう言い渡される。

警護中、空港近くで突然トラックに積み込まれている資材が
流れ落ち行く道をふさぐ。すると突然銃声だと間違えそうな
花火の音が鳴り響く。すると突然ラジコンカーに乗せられた
爆弾が片山議員の車の方へと誘導され、それにいち早く気がつ
いた薫はラジコンをつかみ取り遠くへと投げ飛ばす。すると
もの凄い轟音を立てて爆発する。

すぐに鑑識の手で爆発物の成分分析が行われるが、これは
これまでの"赤いカナリア"が仕掛けてきた爆弾とは明らかに
違うことが判明する。
右京は片山議員を狙う資材の中に赤いペンキで
"d4"と書かれて
いるのを目撃する。仲島の事件ではなんとペンキで
"f6"
書かれていたのである。右京は恐らくこれ以前にもう一件事件
が有ったはずだと呟く。

仕事が終わった後、右京はたまきの店
"花の里"で一服。
そこでたまきと美和子が
東京マラソンに出場するのを知る。

仲島の事務所に行き最近彼に何らかの異変や尋ねてきた人物は
居ないかと尋ねる。すると大事な話があると電話が掛かって
来たという。相手は若い女性だったとの事。

そんな中特命係に
陣川くんがやってくる。凄い情報が有るという
彼は仲島殺人は予告殺人だった証拠があるという。SNSと呼ば
れるソーシャル・ネットワーキング系のコミュニティのページ
人民法廷というサイトが有り、そこの掲示板に処刑リスト
掲載されているという。そこには仲島の名前があり、死刑判決
が掲示板で出されていた。処刑方法がアンテナで絞処刑と書か
れていた。そのリストには雛子の名前も掲載されており、政治
を茶番にした罪だと書かれていた。犯人はこのリストを参考に
しているのか?掲示板の管理者を追及すると、サイトを乗っ取ら
れたという。以前メールで管理を手伝わせて欲しいと言われた
事があり、現在はメールの相手が管理権を持っているのだと
いう。

リストを見ていると東京高裁の
判事・来生憲昭が二週間前に
亡くなっているのを見る。リスト通りに交通事故で亡くなって
居ることからこの人物が最初の被害者だと推察。案の定、当時
の現場の捜査記録を見ると、現場に赤いペンキで
"e4"と書かれ
ていた。右京が何故分かったのかと薫は尋ねる。するとこれは
チェスの棋譜だという。来生の事を尋ねて来た20歳代の女性が
有ったことを知る。

右京らは片山議員の所にも現状を伝えに行く。そこで
岡田秘書
らに20歳代の女性が尋ねて来なかったかと聞く。するとそこに
瀬戸内米蔵議員がやってくる。かつて片山議員の父・擁一とは
盟友と呼ばれる議員であり、もう一人・総理の
御厨紀實彦を含
めて三人が盟友として持て囃された時期があったという。

右京たちはリストに掲載されていた人物の一人・
安永聡子の元
を訪れる。彼女は
安永美容クリニックを経営しており、コメン
テーターとしてテレビにもよく出演している人物だった。
しかし彼女もそこで殺害されており壁には
"g5"と書かれていた。
彼女に面会を求めた人物が居ることを知り、
守村やよいという
人物に会いに行く。彼女に任意で事情を聞くことになるが、
何故か彼女には
武藤かおり弁護士が付いているのだった。
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相棒の劇場版。

2008年の5月に公開したという事で、シーズン6シーズン7
間に制作されたって事になるのか。

相棒はドラマ版でもシーズンの初めや、正月跨ぎに成る際に
必ず正月スペシャルで2時間以上の豪華版が描かれるので劇場化
する意味もあんまり無い気がする。
映画を観ていても東京マラソンに被せる内容であったり、
政治家を絡めた内容ということでドラマ版との差別化を図って
いるが、正直劇場特有のスケール感は感じることは皆無だった。

過去に日本人が渡航を禁止するような国でテロリストに掴まり
殺害される事件が現実に起こったが、その時も確か日本の世論は
自己責任で処理していたので、それを題材として利用したの
だろう。そういう意味ではとてもリアルな描写だった。

ただ映画を見ていると、何故Sファイルの存在を被害者の家族が
知ったのかとか、一介の大学教授が爆破事件に関与していたり、
やたらと頭脳戦を仕掛けてくる辺りの顛末は、あまり説得力も
なく、胡散臭く感じたのも事実だ。

チェスを使った犯人との駆け引き。
しかし犯人が警察にヒントを与えるというのも変な話で、
一連の殺人が一つの目的のために演出されていることを示す
意味でチェスの棋譜を使うというのは面白いアイディアなのだが、
チェスの棋譜の形が東京マラソンの全体図と連動している辺り
は正直強引すぎてついて行けない部分。
そもそもチェスの駒自体、色んな大きさがあるわけで、地図と
一致している辺りの都合の良さが笑える物がある。

どの時点で攻撃をしかけてくるのか。
最後のマラソンの時には緊迫感を永遠に演出していくが、結果
として肩透かしのような結末が待っており、マラソン自体が
単なる肩透かしの要素にも感じる。勿論犯人にしてみれば
注目を浴びること自体に意味があったのだろうけどね。

政治家の隠蔽体質を皮肉る様なやりとりはドラマ版の中でも
よく描かれる。それらは全て小野田公顕が握りつぶすという
やり方で、右京がそのやり方に反発を示すという流れだが、
今回は雛子の自発的な行動によってそれを明らかにしていく
など、意外性としては上手く演出された。

しかし塩谷和範と木佐原芳信の繋がりはかなり違和感の有るまま
描かれていた。塩谷は確かに木佐原の息子の友人では有るし
逆に彼のせいで息子か死んだという事実があるために父親は
彼を利用しつつ最後は見限ったと想像できなくもないが、
二人の間の接点は実に弱く、やや説得力を失った。

最後にやよいが海外に行くというオチも、ドラマ的にはありがち
で型にはまったものだが、冷静に考えるとやや違和感を覚える。

それにしても久しぶりに亀&右京の相棒が見られて良かった。
今回は爆弾に対して臆することなく処理していく薫の無謀さ
加減が描かれたけど、実に彼らしい所でもあるのかも知れない。

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文
宮部たまき …… 益戸育江 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)
亀山美和子 …… 鈴木砂羽

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)

片山雛子 …… 木村佳乃 (議員)
片山擁一 …… 小野寺昭 (議員、現在は亡くなる)
鹿手袋啓介 …… 西村雅彦 (院内紙記者)
陣川公平 …… 原田龍二 (捜査一課・経理)
武藤かおり …… 松下由樹 (弁護士)
瀬戸内米蔵 …… 津川雅彦 (議員)
守村やよい …… 本仮屋ユイカ (謎の女性)
塩谷和範 …… 柏原崇 (犯人!?)
マラソンランナー …… 岸谷五朗、有森裕子
御厨紀實彦 …… 平幹二朗 (元総理)
木佐原芳信 …… 西田敏行 (元大学教授)
棟田土岐男 …… 二階堂智 (警備庁警備局参事官)
木佐原渡 …… 和山田隆人 (NPO)
原武清文 …… 山田明郷 (警察庁警備局部長)
三奈瀬恭介 …… 崎山凜 (警察庁警備局員)
ヒロコ …… 深沢敦 (オカマバー)
岡田 …… 日高迅 (雛子の秘書)
佐藤静夫 …… なかみつせいじ (警察庁長官官房 人事課長)

桜田聖子、金井茂、小鹿敬司、仙波和之、江端英久
渕野俊太、長谷部香苗、松永京子、鈴木祐二
大橋てつじ、はるな愛、アンナ、斉藤あかね、青木淳
畑中愛音、坂田直貴、石田哲也、佐藤智美、八巻博史
竹内和彦、江藤大我、赤池高行、屋敷紘子、吉澄謙、岩本能史
岡部真由美、田畑祐一(アナ)、下平さやか(アナ)
浅野悠紀子、伊藤美穂、大滝裕子、岡野恵子、河本ゆうき
樟本一美、坂原由莉、鳥海英美子、水野洋平、湊啓子


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