ブラザーフッド (2004年)
Brotherhood (aka.Taeguk-ki)

監督・脚本・企画/カン・ジェギュ
共同脚本/ハン・ジフン
共同脚本/キム・サンドン

朝鮮戦争遺骨発掘事業団は戦死者の遺骨を掘り出し、遺族へと
返還する作業が続けられている。
イ・ジンソクの元に一本の電話が鳴ると、彼は孫を引き連れて
現場へと向かう。

時は1950年6月のソウル。
6月27日、北朝鮮による韓国への侵略戦争が始まる訳だが、
それを前後して前線に赴き兵士として戦った兄弟の熱い愛情の
物語だ。

兄のジンテは弟・ジンソクや家族の為に犠牲となり、学校にも
通わずに靴屋で生計の足しにすべく働く。弟は高校生で成績も
優秀。二人の間・そしてつましくも幸せな家族に突然悲劇が
降り掛かり状況が一変するのは、戦争開戦の合図と同時だ。

成績優秀、将来有望な弟を助けるために、兄は自らを犠牲にして
志願兵として前線に赴き、いち早く功績を挙げて勲章をもらい
その褒賞として弟の除隊を得たいと考える。

しかしそこに理想と現実とか交錯する。
弟の為という名目が戦争の狂乱によって少しずつ狂い始める。
弟にしてみれば自分のために命を犠牲にしている兄の姿に耐え
られない事は必至で、兄も武勲を挙げていくウチに、名目の為
とは言え他人の命を犠牲にしても良いのかという良心に訴えか
けるものが出てくる。

兄弟愛から派生する人間としての善悪の問題。戦争という状況
の中でそんな信念や拘りが通用する世界なのかは疑問であるが、
一つの纏まりの有った家族が別の方向性を持つことの悲しさを
痛感する内容だと思う。

映画は戦闘の描写のリアリティな部分と彼らの戦時下のアク
ションシーンに於ける描写は、何処か滑稽に映る。
まるでランボーよろしくとばかりに、一人で銃弾を避け
ミッションをこなしてしまう、まるで英雄の姿だ。
またこれ見よがしに戦闘シーンのグロテスクな部分を見せられる
のは、ある意味悲劇云々を述べる以上に監督のナルシズム
が垣間見える部分ではある。

戦争の責任を考えた場合、兄の取った行動を見ても韓国
に有るのか北朝鮮にあるのか、その矛先は明確なものがなく、
親愛なる家族に直接的に悲劇をもたらしたモノを悪としている。

北朝鮮側の支援と知らずに、名前を書いて配給をもらい餓えを
凌いでいた家族。人民大会に参加し、共産党の労役、奉仕活動に
知らずのウチに参加していた義姉。
韓国の政府が何かしてくれたとのかと訴えるシーンは、何が
善で何が悪なのか、実にその判断を難しいモノにしている。

最後にバーサークしてしまう兄・ジンテ役のチャン・ドンゴン
のもの凄い熱演が見られるが、戦争停戦末期の状態では、
こんなにも簡単に南に行ったり北に投降したり出来たものなの
だろうか。

チャン・ドンゴン (ジンテ) 兄。靴屋
ウォンビン (ジンソク) 弟。高校生
イ・ウンジュ (ヨンシン) ジンテの婚約者
チョ・ユニ (ユジン) 孫
コン・ヒョンジン (ヨンマン) 大佐生け捕りの際撃たれる。
イ・ヨンナン (母親)
チャン・ミノ (老人のジンソク)
アン・ギルガン (ホ中士)
パク・キルス (ヤン・ジュサ) 主事
チョン・ジン (イム・イルビョン)
チェ・ミンシク (人民軍大佐)
キム・スロ (青年団長)
チョン・ドゥホン (大佐参謀)
キム・ヘゴン (新任大隊長)
チョン・ホビン (人民軍将校)
パク・トンビン (人民軍小隊長)
チョン・ジェヒョン (靴磨き)
オム・ソンモ (スンチョル)

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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