初恋 (2006年)

監督/塙幸成
原作/中原みすず
脚本/塙幸成、市川はるみ、鴨川哲郎


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学生運動が盛んだった頃の1960年代後半。
父親が亡くなり母は兄だけを連れて出て行ってしまった事で
心に傷を負う女性・みすずは、学校でも同世代の友達と馴染め
ず、夜の町を彷徨うことになる。ある時兄が突然彼女の元を
尋ねてきて名刺代わりに置いていったのは、ジャズ喫茶"B"と
言う名のマッチ。彼女はそこで兄や仲間たちと出会う。
その中で東大生の岸という青年と出会うのだが・・・
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個人的にこの映画の舞台となる時代にはまだまだ生まれていな
いという事で、映画の舞台を見ても良くできたとは確信をもって
言えるハズもなく、時代背景などに関しても実は良く分かって
いなかったりする。
正直3億円事件については全く知らない訳で、現在でも時々
取り上げられる事件だが、女性が実行犯説というのは存在する
ものなのだろうか?

そんな時代に生きた若者たちの群像劇を背景に、事件が未解決
のまま終わった3億円事件の真相を絡めて描いた内容だ。

こういう雰囲気のアメリカ映画はよく見かけるのだが、日本の
映画ってあんまりよく知らない。
でも基本的にどの時代の若者も共通して感じる思いがあるだろ
うし、このドラマの中でも得体の知れない強大な権力に立ち
向かう若者たちが主人公と有って、何処か納得してしまうもの
が存在している。

三億円事件を取り上げたり学生運動が盛んな、有る意味では
群雄割拠のような激動の時代の中で、「初恋」というタイトル
からイメージする淡い感じのギャップが、実に興味深く映り
なんとも言えない味を出している。
みすずが居場所を求めて彷徨い歩く危うい女子高生の姿と
世間を賑わせた3億円犯人の実行犯というギャップの鋭さを
象徴しているかのようだ。

一人一人の物語の中に肩入れできるだけのドラマが存在
しないこと。主人公のみすずと岸との間にも計画実行に至る
までに象徴的なドラマが存在しないこと。群像劇といえども
時間と空間を共有する尺の短さ故に、ドラマ全体を薄味な
ものにしている事が、この映画に於ける欠点と言えば欠点。
終盤にかけてドラマが急速且つ劇的に動きだす時、前半で
その事がしっかりと描けていれば、もっと切なさを感じる
内容だったと思う。

しかし時代を象徴するジャズ喫茶"B"が少しずつ朽ち果てて
いく姿。仲間が一人ずつ出入りを辞め始めて、みすずだけが
取り残されていく感覚。更には兄の死によって完全に孤立化・
孤独化していく様子が、岸への思いの中に上手く気持ちを
募らせていき、みすずの恋物語としてはとても面白く描かれて
いたのではないか。

三億円事件に関してはちょっと滑稽な部分も多い。
ハラハラさせようとする意図があるのかどうかは分からないが、
小手先のトラブルを付け加えた感じのドラマだった。
みすずにとって他人から必要とされる事が何よりの報酬だった
のかも知れないが、岸にとって自らの野望を年端のいかない
か弱き女性を利用した感じが強く、自らは実行犯としては
遠目から見ているだけというのが何処か腑に落ちない点だ。

しかし小嶺麗奈さんがヌードになっているとは知らなかった!
これが一番のサプライズかも。

みすず (宮崎あおい)
岸 (小出恵介)
亮 (宮崎将)
ユカ (小嶺麗奈)
タケシ (柄本佑)
テツ (青木崇高)
ヤス (松浦祐也)
バイク屋 (藤村俊二)

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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