ジョゼと虎と魚たち (2003年)

監督/犬童一心
出演/妻夫木聡、池脇千鶴、新屋英子(祖母)
新井浩文(ジョゼ幼馴染み)、上野樹里、江口徳子、藤沢大悟(弟)

社会との接触がまるで無く、拾ってきた本の知識と障害者を
恥ずべきものだと思っているお婆さんが唯一の心の拠り所という
池脇千鶴に対し、希望の光を照らす妻夫木聡の存在。

彼女が社会との接点を見いだす意味でも彼の存在は大きいし、
これからの人生を眺めてみた場合に、精神的な拠り所としての
彼の存在は計り知れないものだ。

健常者が障害者のドラマを作るときには、どうしても現実離れ
した話を描いてしまう。特に違和感を覚えるのが障害者は
人間として健常者と何も変わるものが無いという一種の偽善者
ぶった作品と夢物語のようなストーリーだ。
しかしこれはちょっと違う感じがした。
それでも障害者から見ればリアルでは無いのかも知れないが、
少なくとも人間の本質に近づいた感じのするドラマだった。

ドラマの凄さを引き出したのは、障害者である事の他に、
社会との接点を持たない環境に彼女を置いたことなのかも知れない。
障害者にとって社会とは隔絶したものという意識が強いのだと思う。


ドラマでは色んな所で複雑な心境にさせてくれた。

やはりその最たるは離れていくのが分かって付き合っている
彼女の心理と聞き分けの良すぎるその態度だった。
男性経験も一巡し、男性の心理を分かり切った女性がやるような
演技の女性像を演じた池脇千鶴。まるで大竹しのぶがやるような
演技だった。

また不安な心が有るはずなのに、その心さえ押し込んでしまい
見た目には相手に気づかせない態度もまた凄かった。
それだけにいざ弱い面を見せられると、見ている方としても
不安な気持ちに駆られた。

妻夫木聡側の偽善な態度から愛に変わる瞬間と男性のサガを
絡めた葛藤なんかも上手い感じに表現されていると思う。

結婚という現実に対して将来を見据えて涙の別れを決断する彼
にも有る意味納得してしまうものが有る所がドラマとしての妙
なのかも知れない。


上野樹里がちょっと八方美人といった感じに描かれていた為に
妻夫木聡との関係がやや希薄にも思えたのが残念だった。


余談ですが、
この映画韓国でも上映されており、評判が高く追加上演が
決まった作品だったとか。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/10/18/20051018000079.html
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/10/18/20051018000079.html

評価:★★★★☆

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