問題のない私たち

監督・脚本/森岡利行
出演/黒川芽以、美波、沢尻エリカ、野波麻帆、勝村政信
大塚寧々、森絵梨佳、小松愛、安間里恵、小松愛唯、小貫華子
小柴彩、森本ゆみ、秋山ひかる、秋山みなみ、朝倉彩
伊吹ひかり、植松里沙、金子愛美、久米田美穂、佐藤あゆみ
佐藤弥生、鈴木晴香、津田恵、廣田朋菜、堀切麻紀
矢城綾唯美、山崎彩央、森田亜紀、迫英雄、東山麻美
中原和宏、浜谷康幸、佐藤仁、工藤剛、権藤七彦、重松隆志
湯川崇、清水道明、二宮和加子、古川康大、真乃みのり
三上哲、岸田良介、工藤慎一郎、尾崎恵、津々浦愛美
森岡朋奈、岡元夕紀子、浜田晃

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母親を幼い頃無くして父子家庭で育つ笹岡澪は、クラスメート
を引き連れ潮崎真莉愛を虐める。これは“不快感に対する正当
防衛であってイジメではない”。そんな屁理屈を武器に悪ぶれた
姿も見せない生徒達。そこに新たに転校生・新谷麻綺がやって
くる。明るくて運動神経も抜群の彼女にやがて澪たちの視線は
移り変わり、いじめのターゲットは彼女になる。しかし他の
クラスメートたちはそれには賛同せず、逆に麻綺によって言い
くるめられたかつての仲間は、澪をターゲットにしてイジメに
及ぶ。

最初の一時間はクラスメート間でのいじめの連鎖を描き、
虐めるものが突如として虐められる立場になり、いじめに逢う
人の気持ちを描く。残りの時間は、ターゲットが世代を超えて
教師対生徒の構図になり、ここでもイジメのような悪循環に
陥る。

何と言っても映画は骨太の笹岡澪の貫禄さとそれに対峙する
形で存在する新谷麻綺の関係が面白い。その二人の間で心の傷
を癒し、常に良い方向へと導こうとしている潮崎真莉愛の存在も、
この映画の中ではとても重要な役柄だ。

この世代特有の者なのか、とにかく生徒達は群れたがり、
集団からはじき飛ばされる事への恐怖感から義務的な関係を
形成し、言葉や態度もその都度180度変えてしまう。
ある意味では集団性の持つ恐ろしさと、見て見ぬ振りをする事へ
の罪悪感を描いた作品なのかも知れない。

常に先頭に立つ者としては全ての責任がつきまとうし、視線も
一身に浴びなければならない。リーダーに率いられている者
たちは自分がイジメのターゲットにならない様、リーダーの
顔色を伺う。

とても面白い映画だし、実際に似たような経験がある人には、
ちょっぴり刺激の有る内容だと思う。

先生の自己保身のための姑息さ加減にどこまでリアリティが
有るのかは議論の余地がありそうだが、主人公を通して虐める
側の立場から虐められる立場の心境の変化と二度とそのような
連鎖に巻き込まれたくない気持ちはとても良く出ている。

先生に目をつけられた笹岡澪に対して、全員が何か仕返しを
するのでは無いかという期待の目で見ている。これがまた非常
に無責任な態度でこの映画を象徴しているシーンの一つでも
有り憤りを覚えるのだが、笹岡澪が何の行動も移さなかったの
は、イジメの連鎖に懲りている彼女ならではの態度なのかも
しれない。

父親が自分の学校生活に興味の視線を向けてくれなかったり、
義母との関係に於いて、手作り弁当を巡る繊細なニュアンスの
話しなどが盛り込まれていて面白いのだが、この辺はやや中途
半端な描き方になっている感は否めない。

そんな関係が有耶無耶のままで、しかしそれでも最後に晴れ晴れ
とした表情を見せるのは、やはり潮崎真莉愛の存在が大きいの
だろうね。本当の友達とは幼馴染みの友達ではなく、自分が
一番苦しいときに手を差し伸べてくれた人ではないかなと思わ
せる。

しかしこの映画、スクール水着にブルマ姿と、別の所でも
狙っている感じがしてくるなぁ。

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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