映画 「手紙」 (2006年)

監督/生野慈朗
脚本/安倍照雄、清水友佳子

東野圭吾さん原作の映画。

両親を早くに亡くし兄・剛志は弟・直貴を一人で支えて生きて
いる。自分と同じく不憫な思いをさせまいとして、弟を大学に
入学させるための資金をコツコツ貯めるが、無理がたたって腰を
痛め仕事は休職。それでも尚、弟のためにとの思いから空き巣
に入り、差し違えて家の主を殺してしまうというもの。

映画は加害者の家族の視点に立ち、犯罪者の家族が世間から
誹謗中傷、差別を受け生活する様子を描いたもの。
殺人犯の家族という事だけでこの映画に出てくる主人公は
たちまち加害者でも有り被害者となってしまうところが、
この映画の面白さでもある。

映画を見ているととてもオーソドックスな内容だなと思うのだが
次第に核心に近づくにつれ、とても引き込まれる内容となって
いる。

手紙のやりとりが唯一外界との交信の手段である受刑者の兄。
映画の面白さは、世間からの風当たりの強さを感じるのは
そんな受刑者の兄ではなく、その弟だという点だ。
刑務所という壁一つ隔てた外の世界では厳しい社会が待ち受けて
いる。刑務所とは有る意味では受刑者にとって差別から守られる
為の防波堤になっているというところは、この映画を見て気づか
された点だ。

映画では幾つかの転機がある。
一つは沢尻エリカ役の白石由美子との出会い。
そしてもう一つは会社の会長役を演じた杉浦直樹との出会い。
そして最後は被害者家族である緒方忠夫との出会いだ。

差別のないところを探して生きている武島直貴だが、それが
間違いであると気づかさせてくれるのはこの人たちとの出会い
が全て。真摯に向き合うことの必要性は色んな映画やドラマ
で見かけるけれど、逃げの人生を送ると結局問題を先送りに
するだけで何の解決にも成らないことを端的に教えてくれる。

やや不自然な設定が有るのも事実だ。
白石由美子や杉浦直樹はとても出来すぎた人間で、特にこの映画
の沢尻エリカがあまりにも可愛すぎる。
ただそうした不自然な設定ではあるが、人間は犯罪者に対して
差別的な視点だけを持ち合わせているという以上に、人間の中
にも暖かさに触れるという点がこの映画の良さに繋がっている。

犯罪者が何処まで反省しているのか、苦悩しているのか。
言葉には言い表せないようなことを一通の手紙だけで
被害者の親族に伝えるのだから凄いね。

出演/
山田孝之 (武島直貴) 弟
玉山鉄二 (武島剛志) 兄。殺人犯で無期懲役
沢尻エリカ (白石由美子) 直貴の理解者
吹石一恵 (中条朝美) 直貴の恋人
尾上寛之 (寺尾祐輔) 漫才師。直貴とコンビ
田中要次 (倉田) 大検を受ける工場の人
山下徹大 () 朝美の婚約者
石井苗子
原実那
松澤一之
螢雪次朗
小林すすむ
松浦佐知子
山田スミ子
鷲尾真知子
高田敏江
吹越満 (緒方忠夫) 被害者の家族
風間杜夫 (中条) 朝美の父親
杉浦直樹 () 電機会社の会長

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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