東京タワー (2004)

監督/源孝志  脚本/中園ミホ、源孝志
出演/黒木瞳、岡田准一、松本潤、寺島しのぶ、宮迫博之
平山あや、加藤ローサ、半田健人、余貴美子、岸谷五朗

既婚の年上の女性と学生である年下の男性、2組の恋愛のケースを
描いた話。

黒木瞳は限りなく子供っぽい役であるし、岡田准一は何色にも
染まっていない純粋無垢な青年役であるが、黒木瞳との
出会いによって彼女色にどっぷり染まっているという役柄。

年の差カップルを題材にした映画だけれども、限りなく年の差
を意識したような演出を避けたような印象ばかりが残る内容だ。

映画では台詞や展開に乗せて主人公らの性格を色濃く描いている。

結婚して良かったのは一人で食事をしなくても良くなった事
だと言い切る黒木瞳の役柄は随分、一人寂しい時を嫌い
誰かに依存するような性格の持ち主だ。

黒木瞳のケースは、そんな自らの性格を認めつつ、今の生活
環境や境遇を全て捨ててでも年下の相手との恋に没入するのか
という選択に迫られる展開が用意されている。

この二人、何によって引かれ合っているのかはよく分からない。
作者自身も理屈ではない動物的空気が男女を引きつけると結論
づけている通り、金や権力などの物質的な魅力ではない何かが
作用しているようだ。

この恋愛が一時の感情によるものなのか、恒久的なものなのか。
恋愛関係にある当事者ならば誰でも愛は永遠のものだと感じて
いるはずであり、ドラマではこの辺の違いを明確にするくらい
の説得力のある絆が欲しいところだ。

寺島しのぶのケースは、35歳女性の欲望は絶対に分からないと
断言しているように、これ以上に複雑だ。
彼女の性格は男性本位の関係ではなく、自分の都合に合わせた
関係を望んでいるかのように、彼女と恋愛関係に落ちる松本潤の
事を振り回すだけ振り回す。
別れるときも結ばれるときも彼女の手綱さばきにかかっている。

この関係の中で面白かったのは、平山あやの存在だと思う。
不倫関係によって家庭を滅茶苦茶にされた松本潤の事を憎んでも
居るし、年上である女性の中に自制心が無かったことに対しても
怒り心頭している。

迷走する寺島しのぶの事を一喝する展開も良かったし、それに
対して殴り返す寺島しのぶもまた彼女の性格を如実に表していて
良かった。

この映画結論から言えば、描写には多少のリアリティは有っても、
展開は現実的では無い。結婚して多少なりとも倦怠期を迎えて
いる女性が想像の中で羽根を伸ばすための映画なのかもしれない。
一度きりの人生だし、今の人生が自分にとって悔いの残らない
ものなのか、一度は考えたことのある人ならば面白いかもしれ
ない。

評価:★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)

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