容疑者Xの献身 (2008年フジテレビジョン、アミューズ、S・D・P、FNS27社) 脚本：福田靖 企画：大多亮 原作：東野圭吾 監督：西谷弘 製作：亀山千広 プロデューサー：牧野正、和田倉和利 【ドラマ版「ガリレオ」】【SPドラマ 「ガリレオΦ」】

▽地上波初!天才数学者が仕掛けた究極のトリックにガリレオが挑む

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武蔵野医科大の院長・大倉正宏が乗ったクルーザーが羽田沖で
突然爆発し亡くなる。しかし調査の結果、爆弾が仕掛けられた
跡はなく、偶発的な事故ではないのかとされる。しかし事故が
起こる数日前に脅迫文が送られて来ているのも事実だった。

湯川はガラス加速器の原理を使い、ネオジウム磁石の様な
強力な永久磁石を加えるとその原理が何倍もの破壊力を生む
事を利用し、磁力の力を究極に高めることが出来ればクルーザ
ーの炎上事故を証明できると語る。
超伝導加速器を使って実証実験する。犯人は恐らく似たような
装置を作ったのだろうという。磁力はMRIやCTスキャンに使わ
れていると語ると、羽田沖には梅屋敷メディカルシステムの
開発工場が有る事に気がつく。事故が起こった日には電磁ノイ
ズが検出されており、強力な地場が発生したことは明らかだっ
た。

花岡靖子とその娘・美里は母子家庭だが仲良く暮らしていた。
母・靖子は錦糸町のホステス時代に貯めた金を使って、念願だ
った弁当屋「みさと」を開店・経営している。
靖子らのアパートの隣人・石神哲哉は毎朝、彼女の店で
"おまかせ弁当(600円)"を買うのが日課となっていた。
そんな彼女の前にある日突然、元夫・富樫慎二がアパートに
やってくる。もう私に付きまとわないでと語るが、富樫はお前
は一生俺から逃げられないという。この場は金を払って帰って
貰おうとする靖子。しかし帰ろうとする彼の頭に娘・美里は
突然鈍器で殴りつける。致命傷を負わすことが出来無かった事
で反撃されて襲われる美里。靖子はコタツの電源コードで彼の
首を巻き絞め、美里は富樫の手を必死に押さえる。やがて動か
なくなる富樫。しかしその物音を気にして隣人の石神はやって
くる。対応に出た靖子は、彼にゴキブリが出たので娘と騒ぎ
になっただけだとするが、石神は全てに気がついていた。

ある時遺体が発見される。第一発見者は少年野球の少年達。
遺体の衣服は燃やされ、裸のままで放置されており、手足の
指紋は全てバーナーで焼かれており、顔面は潰されていて
判別が付かない。被害者が乗ってきたと思われる自転車が
放置されておりそこからは指紋が検出することが出来た。
検死の結果、遺体の死亡推定時刻は12月2日の午後6時から10時。
その後の調査の結果、温泉旅館の扇屋に泊まっていた人物と
指紋が一致した結果、被害者は富樫慎二で有ることが判明する。

富樫の死因は頸部圧迫によるもの。こたつのコードの様なもの
で縛られていた。結婚歴が有り、そこから元妻・花岡靖子が
重要参考人となる。内海と草薙はすぐに彼女のアパートに行く。
彼女が勤めていた錦糸町の"マリオン"に富樫が来ていたことが
判明し彼女の住所を聞いているのが確認されていたことも有っ
て富樫は靖子と接触した事を予想するが、靖子は逢っていない
という。2日の夜のアリバイを聞くと娘と一緒に映画を見に
行ったという。
その後ラーメン屋に行きカラオケ店に行った事を供述する。
平日の夜に果たしてそんなに遊びに行く物だろうか・・・
アリバイが完璧すぎると草薙は感じるが、調べていく内に
確かにラーメン屋とカラオケ店で目撃証言が出てくる。
後は映画館に本当に行ったかどうかではあるが、彼女の部屋から
パンフレットと同時に映画の半券が見つかるのだった。
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河川敷で一体の遺体が見つかる。
指紋も焼かれて顔や歯の治療痕からでは判別できず、何一つ
身分を証明する物がない中で、意外なところから身元が判明
していく。

被害者が新品の自転車を盗んだとされるのは偶然なのか。
何故犯人は自転車の指紋を拭き取らずに去ったのか。
アリバイを証明するための映画の半券は何故あるのか。
そしてアリバイを証明する過程で娘の同級生と映画館で逢った
というのは何故なのか。

12月2日に殺害されたこの遺体と容疑者・花岡靖子を結びつ
ける事は出来るのか。

天才数学者と物理学者の対決って事だけど、あんまり数学者とか
物理学者らしさというのは見られない気がする。
湯川と石神の言葉遊びのような視点から、ドラマの真相を突き
とめていくという内容だった。

映画としては冒頭で起きたクルーザー爆破事件がこの一連のドラ
マの中にどう溶け込んでいくのかという事ばかりが気になって
しまうが、アリバイ崩しに着眼点を持たせていた所で、それらが
無意味で有ると判明していくところにサプライズ感がある。

また石神の花岡靖子に対する視線の中に、どれ程彼女に対する
固執した愛情の姿が存在するのか。その愛情の裏返しにある
猟奇的な感情が徐々に顔を覗かせていくのに対して、実際には
それらの感情が同じ猟奇さを持ち合わせていても、靖子に直接
向けられたものでもなく、彼女の周りに登場する男性に対して
向けられた物でもないという所に再びサプライズが訪れる。

上述したことだが一連の事件に数学者としてのイメージが存在
しない。どうも数学者というと数字に強いというイメージしか
無いわけだが、どちらかというと今回の一件は犯罪心理学者が
演出したような事件にも思える。

このドラマでは愛情という非科学的なものは鬼門に近い物が有り
数学者や物理学者にとっては得体の知れないものの様な扱いを
される。ドラマを見ていて愛がそんなものたちの判断を鈍らせる
とか、機械のように正確な行動を見せるものが、そんな要素で
失敗を犯すという展開が用意される物かと思っていた。
一連の犯罪計画に於いてもそれが突破口となって事件が解決
していくのかと思ったが、意外にもそのミスが発覚するのは、
一番最後の場面だった。対人関係に弱そうな石神らしいミスで
靖子が自分のために責任感を感じるとは思っていなかったのだろ
う。

石神を演じた堤真一さんの演技力は認めるところだが、湯川が
これを事件だとする着眼点の場で石神が"君はいつまでも若々
しい"といったセリフを述べるシーンは少々説得力がなかった。

石神のキャラクターを見ていると正直この人物に全幅の信頼を
寄せても良いものだろうかという不気味さが存在する。
しかしそんな感情とは別に娘の美里は彼に懐いている感じがする
ところが、面白いように焙られていく。

事件解決と同時に何故靖子に対して自ら手を汚したのかが最後
に描かれる。普通に暮らしている人物にとっては何でもない
ようなことだが、石神にとってどれだけ彼女たちが癒しの存在
のようになっていたのか。これまでイメージしていた石神の
キャラクターとは逆にとても純粋な想いが描かれ、最後のサプ
ライズとしてドラマを締めくくった。

しかし雪山登山の件はドラマにあまり上手く溶け込んでいなか
ったな。石神は人殺しはしないと信じていた湯川だったけど、
実際に人を殺していたと知ったときにはゾっとする思いがした
のではなかろうか。登山ではちょっとしたサスペンス仕立ての
演出だったけど、片山右京さんの事故が最近有ったばかりなので
変な意味で興味深さが出てしまった。

湯川学 …… 福山雅治 (帝都大学理工学部、物理学科)
内海薫 …… 柴咲コウ (刑事)
草薙俊平 …… 北村一輝 (刑事)
花岡靖子 …… 松雪泰子 (弁当屋"みさと"店長)
石神哲哉 …… 堤真一 (数学博士)
工藤邦明 …… ダンカン (靖子の知人)
富樫慎二 …… 長塚圭史 (靖子の元夫・35歳)
花岡美里 …… 金澤美穂 (靖子の娘)
葛城修二郎 …… 益岡徹
柿本純一 …… 林泰文 (刑事)
弓削志郎 …… 品川祐 (草薙の後輩)
城ノ内桜子 …… 真矢みき (監察医)
有園文雄 …… 石坂浩二 (国際防衛研究所・所長)

栗林宏美 …… 渡辺いっけい (帝都大学理工学部)
村瀬健介 …… 林剛史 (帝都大学理工学部)
小淵沢隆史 …… 福井博章 (帝都大学理工学部)
森英太 …… 伊藤隆大 (帝都大学理工学部)
渡辺美雪 …… 高山都 (帝都大学理工学部)
谷口紗江子 …… 葵 (帝都大学理工学部)

鈴木卓爾、東根作寿英、三浦誠己、海老原敬介、青木一、福井裕子
小松彩夏、リリー・フランキー、八木亜希子

飯尾英樹、崔哲浩、山本東、神木優、宮沢大地、杉本凌士
上谷健一、積圭祐、樋口浩二、松本寛也、森岡龍、栩原楽人
後野知史、勝倉卓、浜近高徳、明石知也、松田丈偉、滝澤晴幸
新冨重夫、天田益男、ジーコ内山、内田恵司、藤原進一朗
仁藤明彦、福本ユウト、さきの翔太、西原信裕、岡本拓朗
内田朝、佐藤仁、三上剛、大塩ゴウ、松山尚子、中野英樹
後藤果萌、松本研也、平吹正名、小沢和之、いんげん、久保井晃
安達武、岸谷勉、芝本保美、田村正義、宍倉保彦
ジャッキー・ロビンソン、川又シュウキ、外園大
Ethan Amis、Don Kenny、Gregory G、Romana Gadja、Roma Anna
平尾仁、大家仁志、小豆畑雅一、井上夏葉、小暮智美
桐本琢也、中村啓子

評価：★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)