三十四丁目の奇蹟 Miracle on 34th Street
1947 America 96mins
監督・脚本 ジョージ・シートン 製作 ウィリアム・パールバーグ
原作 ヴァレンタイン・デイビス 撮影 チャールズ・G・クラーク、ロイド・エイハーン
音楽 シリル・J・モックリッジ
出演 モーリン・オハラ、ジョン・ペイン、エドモンド・グウェン、ジーン・ロックハート




 

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 ニューヨークの街。街では、クリスマス用の飾り付けがされる店が増えてきた。そんな街に一人の老人クリス・
 クリングル(エドモンド・グウェン)が何処に行くともなく歩いていた。飾り付けをしている店員(ロバート・ギスト)の事が
 目に入り、ふと足を止めてショーウィンドウを眺めると、老人は店中で作業を行う店員に、窓越しに話しかけた。
 ”トナカイの位置が違う”、”ダッシャーは私の右側だ”、”ドンダーの角は4本に分かれている”・・・etc・・・
 彼が指図する先にあったのは、サンタクロースがトナカイを引き連れてプレゼントを配るのを象ったミニチュア
 のセット。
 更に街を歩いていくと、道では大々的に冬の一大イベント、”クリスマス”を祝うパレードが行われようとしてい
 た。クリスマス商戦でしのぎを削るメーシー百貨店の宣伝用のパレードでは、毎年サンタクロースに扮した男が
 沿道で見ている子供達に手を振ることを行っていた。
 現場で指揮を行うのは、毎年このイベントを担当しているメーシー百貨店の社員のドリス・ウォーカー
 (モーリン・オハラ)シェルハンマー(フィリップ・トンガ)。部下たちにあれこれ指示するものの、あまりの忙しさに
 てんてこ舞い。次々と問題点が出てきて、二人ではとても細かいところにまで対処できないような状況だった。
 クリスはそんなパレードの準備している裏方を見ていると、パレードで先導するハズのサンタクロス(Percy
 Helton)が、泥酔しているのを目撃する。外気が寒いためにアルコールで暖めているというのだが、子供に及
 ぼす悪影響/サンタが飲酒して、子供の持つイメージを壊さないように注意した。その事実をドリスに告げに
 行くクリス。代役が居ないため困惑していると、目の前のクリスがサンタクロスのイメージにピッタリだと思った。
 そこで彼に代役を頼むと、始めは返答を渋るが、子供のためだと思うと、快く引き受けるのだった。
 パレードが始まると、ドリスは自分の役目はひとまず終わったと思い、自宅に帰って休息をとることにした。

 帰宅すると、家政婦のクレオ(テレサ・ハリス)が仕事をしていた。ドリスは娘のスーザン(ナタリー・ウッド)の所在を
 聞くと、向かいの家のフレッド(ジョン・ペイン)の好意で、彼女の面倒を見てくれているという。フレッドの家は、
 大通りに面しており、彼の部屋からは沿道のクリスマスパレードが見えたのだった。

 フレッドは、スーザンと共にパレードを見ていた。今年のサンタクロスは昨年に比べると、
 良いアルバイトを雇ったという彼女。フレッドが彼女に何を話しかけても、夢もないような
 現実的な話しになるのであった。母親の影響で、一切おとぎ話も聞いたことが無いという。
 するとそこにドリスがスーザンを迎えにやってきた。
 フレッドはスーザンの様子を良く見てくれた割に、ドリスとフレッドはほぼ初対面のような
 関係。昨日は、スーザンを動物園に誘ってくれたというのに・・。フレッドはドリスに、スー
 ザンが全く夢の無いような話ししかしない事をたずねると、彼女は娘にサンタクロースなど
 を信じないように、全て真実しか教えていないと言う。
 右の写真、スーザン役のナタリー・ウッド(左)と母親モーリン・オハラ(右)。ナタリー・ウッドが幼い〜〜
 

 ドリスは彼女を連れて帰ろうとすると、突然スーザンは、母親に話し始めた。

 ”フレッドをこれから食事に誘いましょ

 一瞬、スーザンが完璧にフレッドに懐いているかに見えた。しかし次の瞬間、スーザンは全ての種明かしをして
 しまうのだった。それは、フレッドがドリスに好意が有るために、スーザンに食事を誘ってくれるよう頼んだのだ
 った為の芝居だったのである。しかし、ドリスは強ち嫌な気分ではなく、それを了承する事となった。

 7番街西34丁目に、メイシー百貨店はそびえ立っていた。近くにはキンベル百貨店というライバル店も軒を
 連ねているが、今年は、クリスが演じたサンタクロースのお陰で、よりメイシー百貨店の方が盛況な賑わいを
 見せていたのであった。クリスがロッカールームで、同じくアルバイトしているアルフレッド(アルヴィン・グリーンマン)
 と話しをしてくつろいでいると、そこにシェルハンマーがやってくる。サンタクロース役のクリスの影響力を絶大な
 もので、クリスマスのプレゼントを求めにやってきた子供に、売れ残りのおもちゃを薦めるよう話した。クリスマ
 スをお金儲けにしか考えられない男に、苛立ちさえ覚えたが、その場ではその指示に従うことを話した。

 メーシー百貨店のクリスマスイベントの目玉の一つ。店舗の中央広場で一人一人サンタクロースと会話を楽し
 む事が出来るようになっていた。そこには子供やそれを率いてきた親たちで、列を成していた。会話を求める
 親子の中には、クリスマスに何を買っていいのか分からない人、二つのプレゼントが欲しくて決めかねている
 人などが相談しに来る人も居たのである。その中の一人、子供ピーター(Anthony Sydes)とその母親(テルマ・
 
リッター)が相談にやってくる。ピーターは消防車のおもちゃを欲しがるが、全て売り切れており、ここには無か
 ったのである。親としては、ピーターに諦めるように別のおもちゃを薦めて欲しいというが、クリスは、消防車
 のおもちゃならば、角のおもちゃ屋に売っている事を説明した。驚きの表情を見せるピーターの母親。それも
 そのハズ。自分の店の売り上げの事を考えて、その会社の利益を優先するような売り方をするのが通常で
 ある。しかしクリスは、子供の事を優先して、子供の欲しいものが別の店に売っていることを教えてくれたの
 だった。

 それを知りシェルハンマーは愕然とするが、意外や意外。商売を考えるよりも、クリスマス本来の精神を優先
 したクリスの事が評判になり、メーシー百貨店は優良店として、更に客足は増えるのだった。
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 突如ニューヨークの街に現れた老人クリスは、誰もが夢に描くサンタクロースの姿に似ていた。
 そして自らもサンタクロースだという。人徳も備わっている彼は、忽ち街の人気者になるのだが、ある時
 起こった事件をキッカケに、彼は一体 ”何者”なのかに焦点が当たる。果たして彼は本物のサンタクロー
 スなのか。
 後にTV映画としてリメイクされ、リチャード・アッテンボロー(Richard Attenborough)が扮したカラー版
 『34丁目の奇跡』('94原題は同じ)も製作された。

 最高に楽しい映画ですね。リメイク版共々、毎年クリスマスが近づくと必ず見たくな
 る映画の一つです。
 一見、サンタクロースは本当に居るのか居ないのかを議論/裁判する映画なので、
 その内容に心配してしまいますが、そこはジョージ・シートン(George Seaton)監督
 の手腕の光るところです。
 子供たちのサンタクロースを信じる力、また信じたいと思う心が映画の中では非常
 に良く伝わり、ラストは感動を引き起こします。
 

 前作では企業間の陰謀が渦巻き、毒毒しさが爆発していましたが、本作では実際反論している大人の
 中でもサンタクロースを信じたいという心が伝わってきて非常にソフトタッチな映画です。近代的な感覚
 だと、より感動を呼ぶ為には、より反対論者の優位性を演出していきますが、どちらかというと本作では、
 言葉一つといった感じがします。もちろんこの一つを証明する事の難しさ/もどかしさが、より映画の
 世界に引きつけていると思います。

 エドモンド・グウェン(Edmund Gwenn)演じる老人クリスは、一体何者なのか?
 映画では、非常にナンセンスなこの解答を求めて大人たちが目くじらを立てることになります。
 人徳が備わっており、実際子供に接する態度や彼の言動を見ていると、そんな事は抜きにして一体どん
 な人物なのか興味にひかれます。突然落ち込んだ少女/ドイツ語で話す子供を元気づけるために、彼は
 その子供の通じる言語で会話するシーンがあります。何を教わった訳でもないのに、百貨店での仕事も
 次々とこなしてしまうのです。そんな何でも出来そうな彼でも、今回最も難解なのは、夢を忘れた子供に
 如何にして再び夢を持たせるのか。その最善の策は、嘘でも何でもその子の持つ夢を実現させてあげる
 事。その夢の大きさが難解であれば有るほど、夢叶ったときの衝撃は大きいものです。

 この映画が面白いのは、そんな大人たちの茶番劇を嘲笑うかのように、子供たちが効果的に活躍し、
 映画を盛り上げている事だと思います。
 夢を忘れてしまったのはナタリー・ウッド(Natalie Wood)演じるスーザンですが、始めから夢がないわけ
 では無く、そんな環境に育ったから。その最たるは母親の存在。しかしそんな彼女がフレッドから頼まれて
 ドリスと近づく為の作戦を決行するシーンは、嘘が付けずにネタをバラしてしまうなど、かなり面白いやり
 とりを聞くことが出来ます。
 そしてなんと言っても裁判のシーン。検事側の反対弁論を覆すのに使った作戦は、その検事の子供を
 使ったところ。


モーリン・オハラ      (ドリス・ウォーカー)     現実主義。メーシー百貨店の企画部長。
 ジョン・ペイン        (フレッド・ゲイリー)      弁護士。ドリスの隣に住んでいる。
 エドモンド・グウェン    (クリス・クリンブル)     サンタクロース?
 ジーン・ロックハート    (ヘンリー・ハーパー判事)  ”サンタ”裁判を裁く人。
 ナタリー・ウッド       (スーザン・ウォーカー)   ドリスの一人娘。夢を持たない女の子。
 ポーター・ホール      (ソーヤー)          メーシー百貨店専属のカウンセラー/心理学者。
 ジェローム・コーウァン  (トーマス・マラ)       被告側の地方検事。サンタは居ない!
 ボビー・ハイアット     (トーマス・マラJr.)    トーマスの息子。サンタが居ることを証言。
 アン・スタントン       (マラ夫人)          法廷での1カットのみ出演。
 テレサ・ハリス       (クレオ)            ドリス家の家政婦。
 Harry Antrim       (メーシー社長)        メーシー百貨店の社長。
 ウィリアム・フラウレイ   (チャールズ)
 フィリップ・トンガ      (シェルハンマー氏)    メーシー百貨店のドリスの同僚。
 レラ・ブリス         (シェルハンマー夫人)   泥酔。電話でドリスと話すシーンのみ出演。
 アルヴィン・グリーンマン (アルフレッド)        メーシー百貨店でサンタのアルバイト。
 パティ・スミス        (アリス)            メーシー百貨店のサンタに会いに来た女の子。
 James Seay       (ピアス医師)        福祉施設の先生。クリスの事を知っている人。
 Anthony Sydes     (ピーター)          サンタに欲しいモノをお願いする人。
 テルマ・リッター      (ピーターの母)       サンタを絶賛する母親。
 Herbert Heyes     (ギンベル)
 ウィリアム・フォレスト   (ロジャース医師)
 ロバート・カーネス     (医者)
 ジーン・オコーネル    (大臣)
 ジェーン・グリーン     (ハーパー夫人)      ハーパーが娘と息子に無視される場面で登場。
 Percy Helton      (泥酔サンタ)        クリスと交代。
 デディ・ドライバー     (テリー)
 ロバート・ギスト      (飾り付け)
 アルヴィン・ハマー    (トーマスのアシスタント)
 スティーブン・ロバーツ  (警備員)
 Marlene Lyden     (ドイツの少女)       ロッテルダムの福祉施設からアメリカ人に養女にされた。
 アン・オニール       (ソーヤーの秘書)
 Jeff Corey        (リポーター)
 Ida McGuire      (楽隊/バトン)
 リチャード・アーヴィング (リポーター)
 ジャック・アルバートソン (郵便局員)
 Guy Thomajan     (郵便局員)


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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