エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事 The Age of Innocence
1993 America 138mins
監督・脚本 マーティン・スコセッシ 製作 バーバラ・デ・フィーナ 音楽 エルマー・バーンスタイン
原作 イーディス・ウォートン 脚本 ジェイ・コックス 撮影 ミハエル・バルハウス
出演 ダニエル・デイ・ルイス、ミシェル・ファイファー、ウィノナ・ライダー




 

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  1870年代のニューヨーク。女性が花を摘み歌を歌う・・・今日はオペラの初日で、オーケストラの演奏に
  のせて舞台上で演じられていた。そんな劇を見に来たミンゴット家のウェランド伯爵夫人・エレン
  皆の注目の的であった。しかし、皆が注目しているのは家柄や容姿、装飾品などではなく、彼女の私生活
  上の醜聞であった。奔放極まる女性・・そう彼女に押された烙印は決して甘いモノではなく、この社交界で
  のそんな浮ついたウワサは、豪族に取っても死を意味していた。
  エレンの姿を見ると、下にいたニューランド・アーチャーは、一族に挨拶するため席を離れる。
  ニューランドは、そっと近づき彼女の横にいたメイに耳打ちする。今夜のボーフォート家の舞踏会で
  婚約発表したいことを告げるのだった。メイはエレンの妹。自由奔放な姉に比べてメイは伝統や格式など
  を尊重した大人しい女性であった。ニューランドとエレン、メイは昔からよく遊んだ事のある幼なじみ。
  ニューランド家とミンゴット家は、ここニューヨークの枝分かれした家系の2本柱として君臨し、両家の
  結婚となれば、社交界への影響もかなりのものだった。ニューランドの狙いはそこにあった。
  この婚約発表を機に、今まで非の向けられているエレンへの醜聞を反らそうという思惑があったのだった。

  ボーフォート家の舞踏会にエレンの姿は無かった。エレンは、結婚のためヨーロッパに在住していた
  ものの、夫の伯爵とは不仲になり、実家のあるニューヨークについ先頃帰ってきたのである。しかし、彼女は
  自分の思うがままに一人暮らしを始め、豪族としてはかなり質素な家に暮らしていた。
  ここニューヨークでは、格式、伝統、家族というものは絶対的である。これを乱す者は、エレンのように
  悪評を立てられ、本人だけでなく一族の立場をも失わせるのだった。
  シラトンジャクソンは舞踏会の席でこの悲しい結婚物語を好奇心の目で聞いていた。彼は50年間の
  数多くの醜聞を熟知しておりそれを話すことが趣味のようになっていたのだった。
  ニューランドとメイはミンゴット老夫人の邸宅へ訪れる。彼女はメイの祖母であり、社交界の皇太后の
  ような存在で顔が広かった。しかし近年では肥満のため、邸宅の2階へ上った事は無く、寝室も1階に
  据え置いたのだった。
  ニューランドは老夫人に婚約の報告をする。すると、老夫人は喜んで祝福する為、2人のための結婚の
  朝食会を開くことを約束してくれたのだった。そこにエレンとボーフォートがやってくる。そこで始めて
  彼女にもメイとの婚約した事を報告したのだった。

  週末、シラトンがニューランド家を訪れる。彼は得意の醜聞話をするために週末になると必ずやってきた。
  ニューランドの母と姉は、内気なもののこういった話しを好んでいた。この日も話題の中心はエレンの
  別居話である。ニューランドの母はエレンの出現によって、この婚約話がかき回されることを嫌った。
  エレンの夫である伯爵はまつげの長い優男で、女性と陶磁器には目がなかった。エレンは彼によって
  生活を縛られ人質同然の身であるだけでなく、伯爵が浮気をしていることを知った秘書の者がそれを
  助けるために彼の元から離してローザンヌで一緒に暮らしていた事を話す。その事情を聞いたニューランド
  は夫は娼婦と戯れているのに、何故エレンが離婚をして人生をやり直そうとしている事が罪な事なのか?
  と、世間で騒がれているエレンの醜聞をもどかしく思い、せめて身内の者たちだけでも彼女の行動を
  指示してくれるよう話すのであった。
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     格式に捕らわれない人生を送るエレン。そして、それを見守る幼なじみのニューランド。
     果たして、この退廃的な貴族社会の中で2人の行く末はどうなるのだろうか?

     1800年代後半のニューヨークを舞台にした華やかな社交界とは裏腹に、そんな生活には興味が
     無く地味な生活をしている女性がこの社交界でクローズアップされる・・といった映画なのですが、
     そんなエレンを何時の頃からか気になっていたニューランドが、攻撃されるエレンを影ながら
     心の支えとなって、彼女の妹と婚約していながらもエレンの事が好きになっていく、といった展開
     で話しの進んでいきます。
     ニューヨーク式の文化は、ヨーロッパ式の文化から真似て来たものが多いのだけど、中でも
     この世界では横の繋がりが必要とされ、皆との足並みを揃えないと悪評を立てられとんでもない
     方向へと転がってしまうところがあります。
     夫と別れてニューヨークに戻ってきた事だけでなく、そのまま実家に帰らずに一人暮らしを始めたこと、
     そして、その家も名門家を感じさせる事が無く必要以上に飾り立てることなく、自分のしたいように
     して生活を始めてしまいます。
     また、パーティーの席では必ず飾り立てたドレスで出席するのが慣わしとなっているものの
     そんなドレスは嫌だとして、欠席してしまうという・・・その様な事から冒頭から既に、周りの者からは
     無言の圧力をかけられている所から始まります。

     映画では、もちろん衣装や建物のセットがもの凄く華やかで豪華さをだしているのだけど、更に
     料理や食器、調度品などが、もの凄く気を使ったようなものを使用して、この社交界というものを
     際だしています。僕はあまり芸術とか、そんな感じのレトロな調度品にはあまり興味が無いので
     その効果のほどはよく分からなかったのですが、晩餐会によって自分たちの色をよく現していて
     良かったです。
     しかし、やっぱりウィノナ・ライダー(Winona Ryder)は良いですねー(^^;
     まさに適役だったと思うのですが、このメイはいつ頃からニューランドがエレンの事を好きだという
     事が分かったのでしょうか・・・ニューランドは、始めからメイとの婚約の報告を躊躇っていた感が
     あったので、既に幼い頃から気になっていた存在であったものの、エレンが結婚した事により、一度
     は諦めたものの、思いがけず戻ってきた事によって再燃したといった感じでしょうか。
     好きだという感情が高ぶって、早く婚約期間を脱して結婚しようとしたり、架空の出張をつくって
     エレンに逢おうとしたりして・・・やっぱりそんな行動からメイは彼が自分以外の人を好きになった
     と言うことを読みとったのでしょうか。
     愛しているからこそ互いに別れる道を選んだのですが、今まで自分に偽りなく生活してきたエレン
     にとっては辛いでしょうねー。しかし、ニューランドよりも冷静で、彼の知らぬ所で帰国の手筈を
     つけていたという。
     そしてなんといっても、この後起こった海岸での対面のシーンでしょう(^^;(実際は逢わなかったけど)
     ラストのシーンにも繋がる重要な場面で、海岸にいたエレンが船が灯台を過ぎるまでにこちらを
     振り向いたら声をかけよう・・なんて賭けを自ら課してしまうニューランドなのですが・・僕があの
     場面の主人公だったら振り向かないで欲しいと思いますが(再び好きな気持ちが蘇ってくるため)、
     この辺でメイが後ろでそんなニューランドを見ているシーンがあると分かりやすくて良かったか
     もしれません(^^;

     ラストは急ピッチで事が運ぶのですが、3人の子供が産まれて(長男・テッド/芸術関係、次男ビル/
     考古学、建築関係、長女メアリー/スポーツ、福祉)幸せそうな家庭なのですが、最後にセリフだけが
     流れた場面で幾つか興味深い事を言っていましたのでメモって置きました。
     ”メイの青春は一度粉々に崩れて本人が知らぬ間に再建した””この明るい無邪気さ故にメイは現実
     の変化が認識出来ず、子供達は自分たちの意見を母から隠すようになった”と。
     メイの青春ってなんだろう・・子供のビルが実は感染症にかかって亡くなっているのでそれに係って
     いるのか、夫が別の女性を気にしている事に気が付いたのか、今まで育ってきた環境/貴族社会
     が崩壊した事にかかっているのか・・ 
     最後の最後の展開がまた上手く出来過ぎていた感じがするのが、メイが亡くなり子供が結婚前に
     最後の親孝行ということで、仕事という名目でエレンの住むヨーロッパへ船で行くことになるのですが
     この計画の引き金となったのは、ビルの婚約者によるものであると言うこと。
     三つの宿題が婚約者から出ているという項目の一つに、学生の頃世話になった夫人にお礼を・・・
     といった感じのものがあったのですが、多分エレンがニューランドの事を好きだと言うことが分かって
     いたのでしょうね。この婚約者というのが、ボーフォート氏の元妻と親しかった人と言うことなので
     納得・・かな(^^;(ボーフォート氏の元妻とは、ボーフォート家が倒産寸前になったときに、ミンゴット
     家の老夫人に融資の頼みをしに行った人なのですが)
     最後逢っても良かったんじゃないか・・と思うのですが、逢わなかったところに風情を感じるところです。
     (風情っていうのも可笑しいけど(^^;)
     こんな場面をみていると、『インディ・ジョーンズ 若き日の冒険』のエピソードの一つを思い出して
     しまいました。シチュエーションとか全く違うのですが、ロンドンで女権論を唱える女性と巡り会って
     結婚する約束までするのですが、インディはベルギー兵として戦地にいってしまうのでその混乱で
     別れる事になってしまいます。しかし、93歳になったインディが街中でその女性と再会する物語
     です。日本でも地上波で数年前に放送したので見た方も居るかと思います。

     映画の中の日本・・・と言うことでこの中でも日本の文化が幾つか出てきていましたね。
     その中でも特に印象的なのは、ニューランドとエレンの2人が結ばれるか・・または社交界からの
     破滅を意味する場面で未知の土地へ行くことを考えたニューランドが考えていた土地が日本なん
     ですね(^^;1870年代っていうと明治時代ですね。

     ダニエル・デイ=ルイス (ニューランドアーチャー/主人公)
     ミシェル・ファイファー  (エレン/伯爵夫人)
     ウィノナ・ライダー    (メイ/ミンゴット家・22歳)
     リチャード・E・グラント  (ラリーレファツ/プレイボーイ)



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