エイリアン2 Aliens
1986 America 139mins 評価 ★★★★
監督・原作・脚本 ジェームズ・キャメロン 製作 ゲイル・アン・ハード 撮影 エイドリアン・ビドル
製作総指揮 ゴードン・キャロル、デビッド・ジャイラー、ウォルター・ヒル
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 シガニー・ウィーバー、マイケル・ビーン、ランス・ヘンリクセン




 

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 1でなんとか脱出し冷凍睡眠化したリプリーの乗った船が、ウェイランド・ユタニ社のサルベージ船にたまたま
 発見されリプリーはなんとか助かった。生存者は当然リプリーだけ。すぐに宇宙ステーションに連れて戻さ
 れると精密検査を受ける事になった。リプリーの乗った船は地球への軌道に乗って順調に航行していたものの
 地球軌道上で発見されずに太陽系を離れてしまった。そして、たまたま航行していたサルベージ船の網にひっ
 かかったのだった。漂流したリプリーが再びサルベージ船の乗員に起こされた時には、既に57年の月日が
 経過していた。リプリーの帰還はまさに奇跡としか言いようが無かったのである。しかしあの船で悪夢の体験
 してきた事は、疲れ切った体と共に彼女の心の中は後遺症として、今でも鮮明に残っていた。そんな中でも
 会社側では事実検証が行われることになる。リプリーは聴聞会に出席を求められ、先に提出した報告書と共
 に、宇宙船で起こった詳しい説明を求められた。その中での議題は、貨物船ノストロモ号のエンジンをリプリー
 が破壊したことに集中していた。リプリーが話す証言の一部は、宇宙船に設置してあるフライトレコーダーに
 記録してある。会社側の認識では、ノストロモ号が未調査の惑星LV426に着陸し、再び元の軌道に戻った
 ところで、リプリー自身によって船のエンジンの自爆装置を作動させたという事だった。いずれも不可解な行動
 として捉えられていた。何度リプリーが異性生物の存在を説明しようとも、それを信じようとはしないのである。
 会社側の関心は、時価にして4200万ドルにも及ぶノストロモ号の破壊の責任の所在にあったのだった。会社
 側はリプリーの話しを聞いて、既に分析班が彼女が乗ってきた脱出艇の詳しい調査を行ったという。しかし
 異性生物が居たという痕跡はまるで無かったと報告を受けていた。そして惑星LV426にも土着生物は居ない
 と科学者たちも発言する。リプリーは、エイリアンは元々違うところに居た生物で、彼らの乗った宇宙船が何処
 からともなく飛んできて、それに誘き寄せられるように近づき、その船の中にいたエイリアンは人間の体内で
 孵化し成長する異性生物であると説明する。更にリプリーはノストロモの乗員、一等航海士のケインから聞い
 た話しをする事にする。彼の話によるとエイリアンの乗っていた古い宇宙船には、もの凄い数の卵が乗って
 いたという事だった。それが地球に来ることになれば、人類は瞬く間に絶滅すると警告し、すぐに惑星LV426
 の調査を行うことを主張するのだが・・・しかし会社側は、既にあの惑星には157名の居住者/開拓者がおり、
 何の報告も受けていないという。現在10数年かけて人間が生活できるように宇宙コロニーを建設中だと説明
 した。開拓者は現在60世帯から70世帯がその星で生息しており、LV426の住人は157人にものぼる。会社
 側との意見に食い違いにリプリーはもどかしく思うが、現実主義/利益優先の彼らには聞き分けて貰えそうに
 無かったのである。審問を終えて、また自室に戻って休もうとすると、そこに会議の席で、エイリアンの存在を
 否定していた会社側の研究員・カーター・バークがやってくる。更に隣には宇宙海兵隊のゴーマン中尉も居
 た。ゴーマンによると、最近LV426からの通信が途絶えており、その原因の調査を行うと共に、もしエイリアン
 が居れば、宇宙海兵隊の精鋭たちを送り込ませ、最新鋭の武器で絶滅させようというのである。リプリーには
 同行してもらいアドバイスをするだけで全く危険はないと持ちかけてきた。しかしリプリーは、先程の会社側の
 対応を見てこの一連の騒動とは関わり合うのをよそうと思っていた事もあり、その申し出を断る。バークは行く
 気になったら、自分のオフィスに連絡して欲しいと、彼女の元に名刺を置いていくのだった。

 夜、またしてもリプリーの睡眠を妨げるモノがあった。エイリアンが襲ってくる悪夢・・・彼女は帰還して以来
 毎晩のようにその悪夢に悩まされてきたのである。リプリーはその事に耐えきれず、ついに同行することを
 決心するのだが・・・
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    無事生還を果たしたリプリーだが、再びエイリアン撲滅隊のアドバイザーとして惑星LV426への同行
    を求められる。悪夢に悩まされる彼女にとって、それを振りほどくには自らエイリアンを撲滅するシーンに
    居合わせる必要があるとして、参加を決意するのだが・・・

    うーん、さすがジェームズ・キャメロン監督。
    エイリアンの数が前作よりも数え切れないほど増えた分、一匹当たりの存在感は減少したモノの、
    集団が成す恐怖心とか絶望感がヒシヒシと感じられて面白かったです。
    エイリアンの”撲滅”とは言っているものの、実はリプリーが同行した宇宙海兵隊は、何も出来なかった
    というのが正解で、エイリアンを如何に”倒す”というよりも如何にして”生き延びる”か?!が全てでした。
    あまりの数のエイリアンから一瞬たりとも攻勢に転じるシーンなんて有りはしません。なんと言っても数が
    数だけに大抵の映画の場合、あとエイリアンが何匹存在しているのか?というのを朧気に記している
    ものなんだけど、もうそんな次元を遙かに越え、この星から逃げるが勝ちの世界。

    映画の中ではエイリアンの存在はもちろん、今回の敵はやっぱり仲間内にも居ます。この存在こそが
    際だって映画の演出に一役買っていました。
    会社側とリプリーの対決。エイリアンの恐怖の事など知らず、商品価値としてしか見られない上層部の
    人間たち。『踊る大捜査線』の青島刑事の”事件は会議室で起こっているのではなく現場で起こっている”
    とは良く言ったモノで、まさにこの見解の違いこそ、至る所で腹ただしい結果を生み出していました。
    (でもこの映画の場合、バークが単独で行った線が強かったのですが)
    映画はサバイバルゲームとばかりに次々と仲間たちが亡くなっていく展開。最初は会社側の人間と同様
    に、リプリーの言葉などに耳を貸さなかった同乗員の宇宙海兵隊の戦士たちも、上陸した瞬間、次第に
    目の色は変わり始めます。現場を指揮するゴーマン中尉は会社側の人間なのでしょうか。部下からも
    全く信頼を得ていなく、口々に陰口を叩かれています。この対立関係が最も表面化する所は、やはり
    最初に建物に侵入するシーンでしょうか。兵士達が向かっている所は、この星の住人の生き残りが
    いると思われる大気処理工場の地下3階の冷却装置近く。(携帯が義務づけられている個人用発信器
    PDTの電波を受信した事で、この地点に密集している事が分かる)そんな危険な敵の真っ直中に行くの
    にも関わらず、銃器の使用により機械の爆発の危険性をはらんでいる事から、突然、火炎放射器以外
    の使用を禁止してしまうのです。

    一方リプリーは前作の『エイリアン(’79原題Alien)でアンドロイドの暴走により、酷い
    目に遭っている事から、この船内にもアンドロイド/ビショップが居ることを知り、
    嫌悪感を示します。しかし57年の月日からアンドロイドも格段に進化し、人間に対し
    て決して危害を加えないようにするため、行動抑止装置がついたタイプのアンドロ
    イドに進化しています。次第に信頼感を得ていくと共に、リプリー自体も女戦士とし
    て映画の中で成長していく所は、今回の見所の一つかも知れません。
 

    戦闘を開始する合図。それはエイリアンにより子供のために繭にされた女性を発見し、その女性の腹の
    中から子供エイリアンが生まれてきた事から全ては始まります。その瞬間、突然辺りが濃霧に覆われ、
    視界が悪くなるばかりか、今まで生物探知機にも全く反応を示さなかったはずの計器が、モニターには
    一斉に正体不明の物体が映し出されます。周りは単にエイリアンが居たという痕跡だけがあるのかと思
    えば、そこはもうエイリアンの巣の真っ直中。壁の中から次々とエイリアンが躍り出てくるシーンはかなり
    怖いです。1人、2人とエイリアンにやられていくのですが、現場でのシーンを直接撮さず、リプリーらが
    画面を通してみている映像・・・前線にいる兵士のスーツに取り付けられたカメラから映し出される映像と
    して伝えられていく辺りは、なかなか凝っていて上手いです。

    そういえば一人、この星でも生存者が居ましたね。レベッカ/ニュート。見つけたと
    きに、リプリーらの事を警戒して逃げてしまうのですが、子猫が逃げ回るかのようで
    実に可愛らしいシーンで、手を出したゴーマン中尉に噛み付く辺り思わず微笑んで
    しまいました。『麗しのサブリナ』(’54原題Sabrina)で、オードリー・ヘプバーン
    (Audrey Hepburn)がガレージに居たハンフリー・ボガート(Humphrey Bogart)
    ら逃げまわるシーンにも似て、お奨めのシーンです。
 

    助かったと思えば助からず、また助かったと思えば助からず・・・この調子で、彼女たちの居場所を減らし
    次第に追い詰めて行く事で、広い惑星内での事とはいえ、完璧に密閉したような空間を作り出して
    切迫感を演出していきます。そして時間なども上手く利用し、常に緊張感を持続するような雰囲気を
    出しています。この辺のバランスの良さも流石キャメロン監督でした。

    最後は冒頭からその存在を臭わせていた大気処理施設を爆発させる事により、この惑星にいるエイリ
    アンたちを殲滅させようという作戦です。元々は、軌道上から核爆弾で破壊しようという案が浮上して
    いたものの、着陸船がエイリアンに乗っ取られてしまい、その作戦は取れなくなってしまいました。
    軌道上を無人で飛んでいる司令船ロケットへ、遠隔操作する事により、再び着陸船を呼び寄せる事に
    なります。もうこの辺からは常に息詰まるようなシーンの連続です。最終決戦とばかりに、エイリアンも
    室内に侵入してきて、先にも記述した会社側の人間バークの陰謀にハマったり、ニュートが下水に落ちて
    しまうなど、なかなか事が上手く運びません。しかも無事終わったかと思い安心していると、もの凄い
    展開が待ち受けています。あのリプリーが来ていた作業ロボットのようなパワートスーツは、なかなか
    笑えますが、やっぱりエイリアンの最後は、シリーズ1・2・4と同じ様なお約束を守った演出ですね。
    この辺は面白いので実際見てみてくださいね(^^;

    シガニー・ウィーバー     (リプリー)          1からの生き残り。
    ウィリアム・ホープ      (ゴーマン中尉)       実戦には全く不向き。部下からの信頼も薄い。
    ポール・ライザー       (カーター・バーク)     会社の研究員の一人。エイリアンを持ち帰ろうとする。
    マイケル・ビーン       (ドウェイン・ヒックス伍長) ラストまで生き残る一人。
    ランス・ヘンリクセン     (ビショップ/上級参謀)  進化したアンドロイド。最後はエイリアンに引き裂かれてしまう。
    ビル・パクストン        (ハドソン技術伍長)   電磁ロックドアを開けたりする。
    キャリー・ヘン         (レベッカ・ジョーダン)   通称ニュート。彼女だけがこの星157名の唯一の生き残り。
    マーク・ロルストン       (ドレイク一等兵)      エイリアンの酸を浴び亡くなる。バスケスとちょっと仲良し。
    ポール・マックスウェル    (バン・ルエン)       会社の人間。冒頭の聴聞会にて。
    ジェニット・ゴールドスタイン (バスケス上等兵)    女戦士。ラストのダクトでエイリアンに囲まれて死亡。
    アル・マシューズ        (エイポーン軍曹)     黒人兵士。最初の戦闘(冷却棟)で亡くなる一人。
    リッコ・ロス           (フロスト)         最初の冷却棟で爆発に巻き込まれ死亡。
    コレット・ヒラー         (フェッロ)          会社側の人間。着陸船のパイロット兼通信係。着陸船墜落死。
    シンシア・スコット       (ディエトリッチ)       1番最初の犠牲者。バスケスの火炎放射の火で亡くなる。
    ダニエル・カッシュ       (スパンクマイヤー)    会社の人間。フェッロと共に着陸船墜落で死亡。
    トレヴァー・スティードマン   (ウィースボースキー)  最初の冷却棟で視界が悪い中、エイリアンにやられる。
    ティップ・ティピング      (クロワ)           最初の冷却棟で爆発に巻き込まれ死亡。フロストと共に。
    バーバラ・コールズ      (繭にされた女性)    お腹からエイリアンが生まれる。
    ブライン・フェアマン      (ドクター)          冒頭で出てくる医者。


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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