バットマン フォーエヴァー Batman Forever
1995年 アメリカ 119分
監督 ジョエル・シュマッカー 製作 ティム・バートン、ピーター・マクレガー・スコット
原作 ボブ・ケイン 撮影 スティーブン・ゴールドブラット
美術 バーバラ・リング 音楽 エリオット・ゴールデンサル
出演 ヴァル・キルマー、クリス・オドネル、ニコール・キッドマン、ジム・キャリー
  トミー・リー・ジョーンズ、ドリュー・バリモア、パット・ヒングル、マイケル・ガフ






 


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 ゴッサム・シティでは、この日街を騒然とさせる出来事に遭遇する。ゴッサム・シティ銀行を一人の男性トゥー
 ・フェイス(トミー・リー・ジョーンズ)が占拠し、そこのガードしている男(Joe Grifasi)を人質に取って、ビルの屋上に
 立てこもったのである。トゥー・フェイスは、ガードマンの男に、”じきにヤツ(バッドマン)がやってきて助けてくれ
 ると思っているのだろう?”とか、”ギャンブル” が好きなのか?を尋ねた。この世はヒーローになる者も居れば
 それにすがって生きる臆病者も居る。それは何故なのか・・・全ては運命。理屈もへったくれもない、デタラメ
 でいい加減な運命だと高笑いした。コイントスこそ正義の証だというと、彼は手に持っていた一枚のコインを
 指で弾いてそれをまた手で掴む。そして出たコインを元に、目の前の人質の行く末を決めるのだった。
 それで決まった男の運命は、すぐに消滅させず、バットマンを誘き寄せる為のエサだとして、巨大な金庫の中
 に閉じこめてしまう。この様子を下で見ていたゴードン長官(パット・ヒングル)は、部下に ”バットシグナル
 を出すよう指示し、それを見たバットマン(ヴァル・キルマー)は、すぐに現場にやってくるのだった。
 現場には、ゴードン長官に呼ばれて異常心理学・・特に多重人格の専門家チェイス・メリディアン(ニコール・
 
キッドマン)も来ていた。バットマンを見ると、研究対象としての興味を持ち始めるチェイス。バットマンも、彼女の
 著書である書籍を読んでおり、彼女のことを少なからず知っていた。チェイスの分析の結果、トゥー・フェイス
 は、何でも2に纏わることが好きだという。話し合いによる説得は無駄で、人を殺すことを何とも思っていなく、
 常識的な善悪を区別する事が通用しない世界に生きている男だと話した。すると、バットマンは一人でビルの
 中へと侵入し、エレベーターを伝って上層階へと進んでいく。その行動を計算に入れていたトゥー・フェイスの
 部下は、エレベーターが到着するのを待って銃を構えた。そしてその階に来たと同時に、一斉に銃声を響かせ
 るのだった。
 何秒かの間、もの凄い音が鳴り響いた後、一瞬の静けさが辺りを包む。それと同時にゆっくりとエレベーターの
 ドアが開き始めた。中には何も居ない・・・と思ったと同時にバットマンが出現し、次々と手下の者たちを蹴散ら
 していく。そして人質の姿を見かけると、真っ先にその場所へと向かうのだが、それはトゥー・フェイスが仕掛け
 た単純な罠だった。そこに入ると同時に、厚い鉄格子が入り口を塞ぎ、二人は閉じこめられてしまう。
 すると突然その金庫は動きだし、ビルの壁を突き破り、ヘリコプターがその金庫を上空へと吊し上げる。
 しかもその金庫の底には、たっぷりと硫酸が注がれていた為、少しでもそれに触れれば、命が亡くなる状況
 だった。上にしがみついていた二人。実はトゥー・フェイスは2年前に、弁護士をしていた頃、被告の男/暗黒
 街の顔役ボス・マロニー(デニス・パラディーノ)から硫酸を浴びて、左半身が負傷していた。その時、左脳を損傷
 し、それ以来凶悪な犯罪者となったのだった。その現場にバットマンも居たものの、その行為自体を止めること
 が出来ず、その事をトゥー・フェイスは根に持っていた。

 ”俺と同じ運命を味わえ!!わははははははははーーーー”

 ヘリコプターに乗り込んだトゥー・フェイスの下品な笑い声が鳴り響く。バットマンは咄嗟に、ガードマンの男が
 耳にしていた補聴器を借りると、金庫の扉のロックを外すためにダイヤルを回し始めた。間一髪、硫酸の海に
 浸かる前に扉を開けると、バットマンは腰に装備していたワイヤーを使い、ヘリコプターに繋がれたワイヤーを
 切断して上手く金庫を元の位置に戻す。そして自らは、コックピットの方へと詰め寄っていった。
 しかしトゥーフェイスは、ヘリコプターを自由の女神像の方角に目がけて進ませ、いち早くパラシュートで脱出し
 てしまう。逃げ遅れたバットマン。像にぶつかると同時に、間一髪、海の中に投げ出される形で脱出するのだ
 った。

 バットマンは昼間は、ブルース・ウェインとして、ウェイン・エンタープライズという大企
 業を自ら率いていた。
 そのエレクロトニクス部門は、ほぼ独占状態で、好調な利益を確保していたのである。
 彼は重役のフレッド(マイケル・ポール・チャン)に案内させ 自ら視察に訪れると、研究開発
 部に所属するエドワード・ニグマ(ジム・キャリー)が彼の前に躍り出てきた。ニグマは
 ブルースの事を心底尊敬し崇拝していたのである。
 右の写真:研究員のニグマに扮するジム・キャリー。彼の演技を見るだけでも映画を見る価値有り?
 

 ブルースは、そんなニグマに対し、何か良いアイディアでも伝えに来たのか?と尋ねた。すると彼は、自ら発明
 したものを
 彼に見せると、それはTV信号をコントロールし、直接人間の脳に伝えることが出来るもの/ニューロン
 を刺激することで、脳波を自由に操作できるものだった。これを視聴者が使用すれば、まるでTVの中に出演
 しているような感覚を覚えることが出来る・・・しかし、まだこれは未完成で、人体実験の為の資金を少し融通し
 て欲しいと直訴しに来たのだった。しかし、そんな会話の途中にも、外を覗くと、空に ”バットシグナル”が出て
 居ることを知る。するとブルースは、計画の詳細をレポートにして、秘書のマーガレット(キンバリー・スコット)
 提出してほしいと頼む。しかし、ニグマはすぐにその答えを求めると、ブルースはそれならば許可しない事を
 告げた。人間の脳/心を直接いじる事は倫理的にも問題が多すぎるのが、その理由だと告げる、急いでその
 場を去っていく。ニグマは、その返事を聞くと、もう少し話しの分かる男と思っていたと呟き、先程の態度とは
 一変し、計画に賛同しない彼の事を憎しむようになるのだった。
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    今日もゴッサム・シティの平和を乱す男が現れる。バットマンに逆恨みして襲いかかるトゥー・フェイス・・
    そして、自分の研究を認めなかったブルースに憎しみを覚えるニグマ/リドラーの存在。そんな人間の
    恨み、妬みが横行している街で、一家で街のサーカス団を経営していたグレイソン家がトゥー・フェイスに
    襲われ、一人の男ディックを除いてその家族は皆殺しにされてしまう。他に身よりのないディックを、ブル
    ースは引き取るのだが・・・
    シリーズ全編に渡り、オールスターキャストが出演した、大味なヒーロー映画の第3弾。

    バットマンがマイケル・キートン(Michael Keaton)からヴァル・キルマー(Val Kilmer)に変わりました。
    それ故に・・という事でも無いかも知れませんが、バットマンの着るスーツ/バットスーツが一新されます。
    毎回バットマンでは、ストーリーの楽しみよりも敵のキャラクターへの期待の方が強くなりつつありますが
    本作では、なんとトミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)ジム・キャリー(Jim Carry)のコンビが
    それに当たります。どちらも悪役としては申し分ない雰囲気と演技力を持っていますが、前作『バットマン・
    リターンズ(’92原題Batman Returns)でも、クリストファー・ウォーケン(Christopher Walken)
    ダニー・デヴィート(Danny Devito)の影に隠れてしまったのと同様に、本作でもジム・キャリーの扱いの
    大きさの前にトミー・リーも隠れてしまった感じです。トゥー・フェイスという人物のバットマンに対する恨み
    とか、何故彼が”2”(ギャンブル)に拘るのかを考えた場合でも分かるとおり、脚本のこじつけ方/練り
    こみが悪く、逆にウェインの元で働いているリズラーの方が、逆恨みするには良いシチュエーションです
    よね。
    映画では、多くの事を詰め込みすぎました。恐らく、1作目、2作目のバットマンのイメージを崩さないよう
    配慮して、今までのバットマンに対する評価の高かったものを全て取り込もうとした結果だと思います。
    主に1作目では物語に深みを持たせるために、バットマンが生まれるまでの経緯を、過去に起こった
    事件と共に、上手く挿入していたのですが、ここでもバットマンが何故悪人と戦うのか・・苦悩するシーン
    などを取り込んでいます。2作目では、敵のキャラクターも分散化(ペンギン、キャットウーマン、マックス)
    し、上手い連携技を使って弱い部分を補強していった作品となりました。この映画でもそのどちらの要素
    も加えていった為、少し枠に収まりきらなかった印象を受けました。
    この映画では大きく分けると4つのストーリーがあるように思います。上記の通りブルース・ウェインの
    過去と交えた苦悩の日々。リドラーの敵対心。トゥー・フェイスのいわれのない逆恨み。そして、新しく
    加わったロビンの存在です。上手く絡み合うかと思えば、どれもチグハグで一本筋には行かず、つなぎ
    合わせただけのストーリーでした。

    やはり映画では、ジム・キャリーの好演が光りました。リズラーが現れると必ず笑いが起こります。
    悪者故に憎いキャラクターなのですが、彼が演じると決して憎めないキャラクターになります。
    彼が出現する時に次々と仕掛ける罠”ナゾナゾ”。これがもう少し気の利いた答えだと面白かったのに、
    先の展開に気を持たせるようでいて、実にくだらない答えでした。
    どの場面でも彼が出演しているシーンは面白いのですが、一番笑ったのが新作の発表会をリッツ・ゴッ
    サム・ホテルの最上階で披露した時です。当然街の有力者たちが招待され、その中にはブルースの姿
    が有るのですが、彼はブルースのモノマネし、髪型からメガネの取り外す仕草から、全てを彼にあわせる
    のです(^^;

   一方、この時、彼の横にいた女性はドリュー・バリモア(Drew Barrymore)でした。元々
   はトゥー・フェイスの横に居たのですが、映画の中の彼女の扱いがあまりにも小さいの
   が笑えます(^^; TVで見る限り殆どセリフの無いシーンでした。彼女をこんなに贅沢な
   使い方が出来るなんて今じゃ考えられませんね。(ウディ・アレンなら可能かも(^^;)) 
 
   そして忘れてならないのが、ロビンの初登場でしょうか。アニメで少し見たときは、もう少し頼
   りないような印象を受けたのですが、元サーカス団員ということを利用して、結構いろんな重
   要なシーンでアクロバティックな登場の仕方をします。しかし敵地に乗り込んだ時の弱い事
   (^^;
 

   映画ではシリーズを通してお約束?シーンが出来つつありますね。それは何か?毎回主人公のブルース
   と恋仲になる女性が居ることです。こんなパターンを見るとジェームズ・ボンドの007を思い出してしまい
   ますが、流石に前回のキャットに比べると存在感の薄い異常心理学者役のニコール・キッドマンでした。
   ホントはもう少し、バットマンが苦悩しているシーンっていうのが前面に押し出されてこそ、この役は活かさ
   れてくると思うのですが、ちょっと残念です。本来バットマンの正体は、『ウルトラマン』のように、他人に
   その正体を隠してこそという感じがするのですが・・・まぁ、今更言ってもしょうがないですね(^^;

   一つ、前作よりもパワーアップしたのが、バットマンの動きでしょうか。実はシリーズを通してあまり ”コウ
   モリ” らしい演出は無かったのですが、激しく空間を利用し、いろいろと彼が使う武器も魅力的なものが
   沢山ありました。『インディ・ジョーンズ』シリーズで、主人公インディが手にする ”鞭”にも似た”ワイヤー”を
   使った数々のアクション。凄いことにワイヤーを利用してバットモービルが垂直の壁を登っていくシーンに
   は参りました(^^;
   そして、バットモービルが壊された事で、新型の乗り物が幾つか出てきましたね。
   空を駆けめぐるための飛行機型の乗り物まで出現しました。
   今後もこの手の小道具は目が離せませんね!


    ヴァル・キルマー    (ブルース・ウェイン/バットマン)  ウェインエンタープライズの社長。そしてバットマン。
    クリス・オドネル     (ディック・グレイソン/ロビン)   サーカス団の一人。ロビンとは”鳥”の名前。
    トミー・リー・ジョーンズ (ハーベイ・デント/トゥー・フェイス)元弁護士。ギャンブル好きの悪党。
    ジム・キャリー      (エドワード・ニグマ/リズラー)  ウェインの会社で働く研究者。
    ニコール・キッドマン  (チェイス・メリディアン)        異常心理学/多重人格の研究。ブルースの様な男が好き。
    パット・ヒングル     (ゴードン長官)            PART1から出演しています。
    マイケル・ガフ      (アルフレッド/執事)        ウェインの父の代からの執事。
    キンバリー・スコット   (マーガレット)            ウェインの会社の秘書。
    ドリュー・バリモア    (シュガー)              トゥー・フェイスの横にいる女性。
    Debi Mazar      (スパイス)              トゥー・フェイスの横にいる女性。
    エリザベス・サンダース (ゴシップ・ガーティ)         街の権力者。
    デニス・パラディーノ   (ボス・マロニー)          トゥー・フェイスに硫酸を浴びせた人。回想シーンにて。
    Rene Auberjonois  (バートン医師)
    Joe Grifasi      (銀行のガードマン)         トゥー・フェイスに人質にされる。
    フィリップ・ムーン    (ニュースキャスター)
    Jessica Tuck     (ニュースキャスター)
    マイケル・ポール・チャン(会社の重役)
    Jon Favreau      (アシスタント)
    グレッグ・ローレン    (エイド)
    ランゼイ・エリス     (若い頃のブルース)        回想シーンにて。
    マイケル・スクラントン  (トーマス・ウエイン/父)     回想シーンにて。
    エイリーン・シーレイ   (マーサ・ウエイン/母)      回想シーンにて。
    ティム・ジャクソン    (ゴッサムシティ警察)
    ジョージ・ウォーレス   (ゴッサム市長)           黒人の市長。
    Glory Fioramonti   (グレイソンの母)          サーカス団。トゥー・フェイスに殺される。
    ラリー・A・リー      (グレイソンの父)          サーカス団。トゥー・フェイスに殺される。
    ドン・ウィルソン      (ギャング団)
    シドニー・ミンクラー   (ギャング団)
    ゲイリー・カスパー    (ヘリコプターパイロット)      トゥー・フェイスに銃で殺される。
    アンドレア・フレッチャー (レポーター)
    Ria Coyne       (科学者)
    マーガ・ゴメス       (ジャーナリスト)

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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