刑事ジョンブック目撃者 Witness
1985年 アメリカ 112分
監督 ピーター・ウィアー 製作 エドワード・S・フェルドマン 原作 パメラ・ウォレス
原作・脚本
 ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス
出演
 ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローバー






 

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  1984年、ペンシルバニア州の田舎町。ここには、アーミッシュと呼ばれる人たちが集団で街を形成
  して住んでいた。この者達は、17世紀以来、聖書の教えを自分たちなりに解釈し、それを守り続ける
  ため、暴力を禁止し質素な日常生活を行い、別の主義主張を持つ村人以外と生活することを禁ずるなど
  を掟として生活していた。そんな掟を守るものが、ここランカスター郡だけでも1万人以上住んでいるのだった。
  レイチェルもその中の一人で、この日村では、レイチェルの夫の死を弔う為、村の教会で葬儀を
  行っていた。そして、それが終わると息子サミュエルと共に、姉が住むボルチモアを訪問するため
  列車へと乗り込む。そして、その乗り換えの地点でもあるフィラデルフィア駅で、列車を待つ間
  2人でベンチに座る。しかし、サミュエルは初めて村を出て別の文化に触れることに目を輝かせ、
  ベンチでただ黙って座って居られず、構内を歩き回る事に・・そしてトイレに足を運ぶと、既に先客が一人
  居ることに気が付いた。トイレの個室の戸を閉めると同時に、2人の男がトイレへ慌てるように
  入ってきたかと思うと、その瞬間ナイフで先にいた男の首を切り裂いたのだった。サミュエルは隙間から
  この様子を一部始終観ていた。その内の一人ははっきりと顔を確認出来るほどにである。微かな物音から
  不振に思ったこの男は、一つ一つトイレのドアを見て回る。そしてサミュエルの居るドアを開けようとした
  とき、間一髪、サミュエルは隣の個室の壁の下から潜り抜け隣に移り、なんとか気付かれずに
  済んだのだった。
  警察がこのフィラデルフィア駅で捜査・現場検証を始める。サミュエルは第一発見者として、警部の
  ジョン・ブックに事情を聞かれる。そして調書を取るため一度署に向かうことに・・・
  警察署は雑然としていて、皆忙しそうにそれぞれの仕事をしていた。ジョンもまた、デスクにかかってきた
  電話に対応する。サミュエルは珍しそうに室内を動き回るが、ある所で立ち止まったまま一点を凝視する。
  その様子をみたジョンは異変に気が付き声をかけると、サミュエルは静かにその先の写真を指さした。
  その先に有ったものは・・・麻薬課警部補、マクフィー刑事が青少年補導の表彰式の際に写された写真
  だったのである。果たして、この結末は如何に・・・
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     犯人は近くにいた・・・その事を上司の署長に話すとそれ以降命を狙われるハメになる、ジョンと
     レイチェル、サミュエル。麻薬課という事を利用し横領に手を染めた警察官と、一人秘密を知って
     しまったジョンとの死闘の行方。

     僕は初めてタイトルを観たとき「刑事・・」という事で、警察、麻薬、汚職・・・と連想出来ること
     で、この手の映画は食傷気味で全く観る気がしませんでした。
     どうせ、一人の男が腐りきった署内の悪事を暴くために、ジェームズボンド張りのスパイ的捜査を
     繰り返して、署長を倒すと、更に裏でマフィアと繋がりを見せていて、その組織に潜入して
     全滅させるとか・・多少筋道が違うだけで、そんな感じの映画を五万と観てきたからです。
     SFXの技術が進み、演出が派手になっただけで、やっていることは大した変わりはないんですよね。
     しかし、これは本当に虚を付かれた感じで、刑事ものとは名ばかりの古い文化を守るアーミッシュと
     新しい文化人の代表でもあるジョンとの交流の話しです。
     最初のシーンを観たときから、犯人に対する推測を立てたりして、変に意識してみたものだから
     同じ部族でもあるアーミッシュの中に犯人が居るんだろう・・とか(レイチェルの夫を殺した犯人がこの
     葬儀に参列した中にいるんだろうなーとかそんな感じの思いです)、意外な展開に感じました。

     そんな部族だから、無愛想に接するのは当然なのだけど、その中でも異色を放つ、レイチェルと
     サミュエルは別。取り調べでサミュエルを引っ張り回したものだからもう少し不機嫌な態度を見せるか
     と思ったのですが、何時の頃からかジョンの事を意識し始めて居るんですよね。(もちろん最初は
     別の世界の人・・ということでの興味を持っているのですが)
     怪我してベッドで寝ている時のジョンに対して看病していたのは、人間本来の優しさや献身だけでなく
     既にジョンを愛しはじめていたのでしょうか・・・
     その後、実生活でも得意な(俳優になる前の職業)ハリソン・フォード(Harrison Ford)の大工仕事姿が
     観られますがなかなか様になっていてよかったですねー。(今でも休みの日になると、車の修理など友
     人の分まで請け負うみたいです(^^;) このぶっきらぼうな男が、サミュエルや父親などと会話だけでな
     く、そんな態度で接していく姿が所々でみられてシナリオ的にも良かったです。

     しかし少しも接していない人たちからは良い印象を持たれることはありません。特に仄かにレイチェル
     に恋心を抱くダニエルからは当然敵対視されるし、更に輪の中に居るレイチェルにまで、悪い噂がたち
     始めます。(幼い頃から慣れ親しんでいるはずなのに、なんでこうも危機的な状況になるのかな・・腐った
     みかんはやはり放り出される運命にあるのでしょうか(T_T)
     でもこんな態度の現れとは逆にラストで、ジョンと村人にある種の一体感が生まれた事がこの映画の
     中で一番スッキリした部分でありました。表面的に観光客を殴りつけた事で村を出ていくことに
     なりますがダニエルと帰りの道でコンタクトを取るシーンなどは最高です。

     やっぱり互いの文化は尊重し合わないとダメですよね。ジョンは、村にいる限り郷に従うのは
     当然だとしても、別に全てに染まる必要はないし、暴力(争い)を否定するのは良いことだとしても
     プライドを捨てる必要はないと思います。(アイスをヤンキーに押しつけられるシーンなど)
     こういう信仰の人たちって自分たちの信念を少し押しつけがましい感じですよね。サミュエルは
     子供故にいろいろな興味を持つのですが、なんかそんな芽を摘み取ろうとしているような気がして・・
     その後のシナリオがあれば、成人したらサミュエルは村を出ていくだろうなーと思います。

     今回サミュエル役をした、ルーカス・ハース(Lucas Haas)ですが、可愛いですよね(^^;誰かに似て
     いる・・と思って考えていたのですが、なんとなくデビュー当時のウィノナ・ライダー(Winona Ryder)
     似て居るんです!!(と思うのは僕だけでしょうか(^^;)

     ハリソン・フォード    (ジョンブック・警部)
     ケリー・マクギリス    (レイチェル/アーミッシュ)
     ルーカス・ハース    (サミュエル/レイチェルの子供)
     ダニー・グローバー   (マクフィー刑事/麻薬捜査課)
     ジョセフ・サマー     (シェファー本部長)
     アレキサンダー・ゴドノフ(ダニエル/レイチェルを好き)
     Patti LuPone     
(エレーン/ジョンの姉)
     ブレット・ジェニングス 
(カーター巡査部長/ジョンの味方)
     Jan Rubes      
(イライラップ/レイチェルの父)
      マリアン・スワン     (シェファーの妻) 


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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