太陽にほえろ!
1972年7月21日から1986年11月14日・全718話
日本テレビ

プロデューサー(日本テレビ):津田昭、岡田晋吉、清水欣也、山
口剛、川口晴年、中村良男、酒井浩至、服部比佐夫
プロデューサー(東宝):梅浦洋一、梶山仗佑、新野悟
企画・原作:魔久平(共同ペンネーム)
原案:小川英
音楽:大野克夫

http://www.teletama.jp/drama/index.html





第90話 非情の一発

脚本/長野洋 監督/児玉進
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刑務所では、河野が坂田に接触し、仕事に依頼をする。
しかし坂田はその依頼を断る事を告げ、オレは殺しはしない
主義だという。報酬は3倍だぞという河野にオレは10倍もらっ
ても断ると語る。
そんな中608号(坂田)に面会が来る。
面会に来たのはサングラスをかけた山村だった。
坂田に対してあと一週間で出られるそうだなと告げると、
オレは模範囚だからだという。オレはもう変わった事を告げ、
オレも年だと語る。出所したらどうするのかと問うと、もしか
して仕事の心配をしてくれているのかと問う。お前の仕事が
問題だとすると、坂田は嫁さんをもらうという。ささやかな
マイホームか欲しいという彼に対して、絵島マリなのか?と
問うと、結婚式には呼んでくれるのかと問う山村。喜んで
出席するぞと語る。

山村はボスに報告する。
絵島はファッションモデルをしている人物で彼が事件を起こす前
に知り合い服役中にも面会に来ていたこと。坂田はプロの用心棒
であり腕っぷしと銃の腕の立つ人物だという。一つの契約で
メシを食べているものだとすると、ジーパンは殺し屋なのかと
問う。するとゴリは寧ろ殺さず屋だと告げ、人殺しだけは絶対
にやらない人物だという。山村はヤツは絶対に結婚はしないと
告げ家庭を持つようなヤツではないのだという。必ず何かを
計画しているハズだと。

出所する日。
刑務所の前にはマリが車で坂田が出てくるのを待っていた。
その車を監視しているのは山村だった。マリは坂田を車に
乗せると走り出す。山村はその車を尾行するが、坂田には
それに気が付いていた。

マリは自宅マンションに連れて行く中、窓から覗くと山村の
車が駐まっていることに気が付く。
マリはシャワーを浴びる中、坂田はタバコで一服。
その直後郵便屋がやってきて荷物を坂田に手渡す。
坂田はそれをライターの火であぶって紐解くと、中には300万
と共に拳銃が入って居た。そして高利貸しの男の写真が入って
いるのだった。

一係では山村がずっと張り込みしていることを知る。
デンカが出張で5日間留守にしていた間、ずっと山村が張り込み
していた事を語る。ゴリは辛抱強さには恐れ行くというと、
久美からはそれがゴリと山さんの違いだと指摘される。

一係では今の所マリには不審な繋がりはない事を調べ上げ、
なんで彼女のような人物が坂田に惚れるのかと語る。山村
は内線なので電話は管理人室を通るのでかかってきた電話は
調べているという。どうやって坂田が仕事の依頼人と接触する
のかが分からなかった。
大雨が降る中、ジーパンが山村の車にやってきて差し入れする。

窓から外を覗くマリはどうして警察はあからさまに張り込み
している姿を見せているのかと問うと、牽制してオレが何か
しないように圧力をかけているのだという。坂田はマリに
対して外国に行って結婚式を挙げないかと語ると彼女も喜ぶ。

ゴリは山村に対してこんなことをしても意味があるのかと問う。
ヤツは例え生まれながらにしての犯罪者だとしても40歳であり、
結構な美人とマンション暮らしをしているので今度こそ足を
洗うのではないかと。しかし山村はアイツはオレと同じ世代の
人間で終戦後の食うか食わずかの時代を生きてきたこと。よう
やく社会では中堅処で働き盛りであり、逆に言うと働き盛り
は自分の先が見えているということだという。法の外で体を
資本にして生きて来た男がもうすぐ駄目になると分かっている
事を告げ、あの目はきっと何かをやろうとしていた目だという。
最後の勝負に出るのだろうと語る。
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山村は自分と同世代と仕事人の男性・坂田が出所することを
聞いて彼の動向を気にしていた。坂田は用心棒として法を犯す
ことも厭わない人物だが、殺人だけは行わないとする信念を
持つ男だった。
山村は自分と坂田は背合わせの場所にいて、一つ間違えば山村
が今の坂田のポジションにいてもおかしくはなかったというの
である。そんな彼が今後は用心棒としての仕事が出来なくなる
であろうことを受けて、山村は彼が犯罪を犯さないようにマーク
していくが・・・

今の価値感ではなかなかあり得ない犯罪者を一途に愛する
女性の物語。しかしよく考えると、加護亜衣さんとその夫の
関係はこれに近いものがあるのか。

硝煙反応検査など行わない当時の捜査故に成り立つ物語といえば
その通りだし、これだけの尾行捜査をされている中での犯行だ
と考えるとそれを実行するのはかなり苦しい感じがする。

しかしドラマではそんな細かい事実以上に、山村と被疑者の
行き違った同世代の男との両極端の関係を通して、固執してでも
止めたいものとは何かということを突き詰めていく物語だった。

まだ犯罪が起きていない状況の中で、未然に防ぐのもまた刑事の
仕事とはいえこれだけ一人の人物に固執した捜査を行っても
良いのかどうか。

事件としては目の前で起きた殺人事件に対して発砲した凶器さえ
見つからなければ逮捕出来ないとするあっけなさは感じる。
その分証拠品の銃の受け渡しや銃を隠す過程に関しては拘りを
持って描いた感じで、次々と連携して証拠隠しをする流れが
有った。

犯行を犯した後、女性が男性に恐怖を感じて雲隠れしてしまう。
一係の人物が何処までこの流れに関与しているのか分からない
ものの、今まで山村が彼を尾行していたのとは逆に、今度は
坂田が山村を尾行していく構図というのは面白いものが有る。

二人が会話するシーンが多く、
山村が
「積みを憎んで人を憎まずとされる程、オレは立派じゃない。
殺人が憎い、人を殺し傷つけ騙すヤツが憎い」
と語った際に、
「あんたもガキの頃、大人に散々騙された口か・・」
と坂田からの言葉を聞く限り、まさに山村も坂田になり得たこと
も有るのだろうなとおもっていたけど、
「一つ間違えばあんたはオレになっていただろう」と言われた山村
は、「そうかもしれないが、でも間違ってはお前はオレにはなれない」
というやりとりがこのドラマの二人の関係を象徴していた。

マリが交通事故を起こしたシーンは何が起きたのか分からなかった。
ハードボイルドな仕事人がいる中でかかっているラジオの音楽が
やたらとポップ過ぎるなという感じがした。
単に浮かれて事故を起こしたのかと思えば、彼は河野を通して
ターゲットがオマチ・リュウゾウだと指令を出した裏の人物が
東名経済会の檜垣五郎という大物暴力組織だったこと。
女性が怖がって一度逃げたことで檜垣を密告されると考えたのだろう
か?

受刑者繋がりで山村が河野に対して、貴様が警察の内通者だと
組織のものたちは思うだろうとして脅すシーンが有ったけど、
その逆のパターンが女性にも該当してしまったのか。

何故そんな男が坂田も一緒に殺さなかったのかは謎だし、事故の
割りに坂田は随分元気だなって感じだったけどね。

最後は山村が上手いこと坂田の行動の裏を読み取った格好だった
けど、殺害しなければならない山村の切なさみたいなものを
感じるエピソードだった。


藤堂俊介 …… 石原裕次郎 (七曲署・一係のボス、係長)
山村精一 …… 露口茂 (山さん)
石塚誠 …… 竜雷太 (ゴリさん)
島公之 …… 小野寺昭 (殿下)
野崎太郎 …… 下川辰平 (長さん)
内田伸子 …… 関根恵子 (シンコ)
柴田純 …… 松田優作 (ジーパン)
永井久美 …… 青木英美 (七曲署の庶務係)

坂田 …… 内田良平 (仕事人)
絵島マリ …… 片山由美子 (モデル)
檜垣五郎 …… 神田隆 (東名経済会)
河野 …… 船戸順 ()

青沼三朗、塚田末人、相馬優子、今井英次



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