相棒 シーズン3

脚本/砂本量
監督/長谷部安春

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_03/



第7話 夢を喰う女
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捜査一課の伊丹らは取り調べをしている中、特命係の薫を呼び
出す。現在元大蔵事務次官・
湯浅昭則殺しの重要参考人である
容疑者の
知念信夫から事情聴取しているのだが、薫に是非その
役目をして欲しいという。実は薫が一課にいた頃、伊丹は
薫の容疑者落としの技術に感服していたというのである。
気をよくした薫は、知念から殺害について話を聞こうとするが
彼は自分の人生を延々と語り始める。
右京は特命係にやってくると、薫が取調室にいる事を知って
やってくる。もう十分話しただろうから帰宅してもらって良い
という右京。大きな事件が起きると必ず現れる
自首マニア
男だと告げ、自分もかつて彼の話を聞かされたという。

そんな中、更に殺人事件が起こる。
殺されたのは
八尾圭吾(67歳)タツミ総合開発の元重役で、
胸を一突きナイフの様なもので刺されて亡くなっていた。
死亡推定時刻は夕べの10時から12時。現場には何も印刷されて
いない
白表紙の本が置かれていた。それは一件目に起きた湯浅
昭則殺人事件と全く同じ手口だった。
八尾が勤めていた会社に話を聞きに行くと、彼は信頼に厚い人物
で社内で恨みを買うような人物ではなく、マスコットキャラクタ
ーの"たっちゃん"の生みの親であるという。

薫は現場に落ちていた白表紙の本を見て、一体それにどんな
メッセージが秘められているのか?と疑問に思う。まさかあぶ
り出しか?と告げると、米沢はクスリと笑い出す。伊丹と言って
いる事が同じだという。
右京は米沢に被害者の所持品リストを頼む。
しかし生前最高の地位を得た人物が何故こうも狙われるのか。

被害者に共通するものを探る。住んでいる場所が世田谷区で
有ること。右京は
図書館の貸し出しカードはどちらも世田谷区立
南図書館
である事に気がつく。

図書館にいくと司書・
佐伯要一から話を聞く。
被害者の写真を見せると確かに最近よく顔を見せていた人たち
だという。
辻村めぐみがその辺の事情を知っているとして、
事務所で話を聞く。辻村は二人の本の貸し出しリストを調べる
と、自伝を書こうとしてその手の本を借りている事を知る。
偶然二人とも自伝を書こうとしていたのか。辻村によると、
最近
自分史ブームで自費出版する事が容易になった為に定年後
の60歳以上の男性が出版する傾向にあるとの事。
自伝を書くことは人生をもう一度生き直すという事なのだという。
その背景には近年の出版不況が有り、出版業界が苦肉の策として
自費出版のサービスを行い始めたことにあるという。
まさか自伝を書かれて困る人物が殺したのか?と薫。遺体に
残されていた白表紙の本は私のことは書くなと言うメッセージ
なのではないか?と推測する。

薫は芹沢に捜査状況を尋ねると、捜査本部では被害者は強請ら
れていたのではないか?という見方をしているとのこと。被害者
の口座からいずれも一千万円近い金が引き出されているという。

右京は一人で図書館にいく。
右京の周りを彷徨いている人物・
大滝亮の姿があった。
たまたまそこに居た常連の知念信夫から話を聞くと、右京の座
っている席は、
大滝の指定席なのだという。同じ席でないと落
ち着かないみたいとの事。
そんな中、右京は知念信夫から二人を殺したのは私だと告げる。
証拠は?と問うが、知念は口を閉ざしてしまう。いい加減にしない
と捜査妨害で捕まる事を告げる右京。
右京は司書の辻村が、初老の男・
清水直久と親しげに話している
のを目撃し、二人が図書館から出て行くのを尾行する。
二人は高級レストランに入ると、清水が話す言葉をメモしたり
録音している姿が有った。

翌日、右京は犬の散歩に出かける清水を尾行し公園で声を掛ける。
大手
ケイトウ商事の重役だった清水。右京はかつてパーティー
で一度会っているとし、彼から話を聞く。湾岸戦争当時中東に
居たという彼に、右京は自伝でも出版されてはどうか?と語る。
すると自伝を出版しないか?と熱心に勧められた事を告げ、
口述筆記をお願いした事を知る。

右京らは辻村の働く図書館に行く。
彼女は人の人生は一冊の本と同じで、一つとして同じ本は無い
様に人それぞれだという。半生を語るときの男性はとても楽し
そうだとし、退職した人から話を聞くことは為になるし、話に
深みがあるという。清水の事も口述筆記するつもりとの事。
湯浅や八尾について尋ねると、二人からも口述筆記を頼まれて
いたが、完成する前に亡くなったという。原稿はまだ白紙である
事を聞く。
そこに伊丹たちがやってきて、被害者から金銭の受け渡しが
有ったことを尋ねられる。自費出版ではせいぜい100万程度
なのに1千万円の金を受け取っている事を尋ねると、それはあく
まで二人の気持ちだという。退職金をだまし取ったのではないか?
と尋ね、彼女からアリバイを尋ねる。すると清水と一緒に酒を
飲んでいた事を聞く。
清水からも裏付けを聞く。決して彼女を庇っている訳ではない
との事だった。

伊丹たちは上司の内村と中園から呼び出される。
清水は弁護士協会にも顔が広く、協会から捜査に関してクレーム
が来たという。これ以上の捜査はするなと止められる。

右京らは、花の里で美和子も交えて飲むことに。
男性は自尊心を満たすために、そして自慢好きで見栄っ張り
な為にそんな自伝を書きたがるのだという。右京もそれには
反論できなかった。
しかし辻村には男性達の話を聞くことに何の意味があったのか?
美和子は金以外に理由は無いでしょうと語る。

辻村家へいく右京と薫。
家には沢山の蔵書が並んでいた。彼女はこの広い家に一人暮ら
しであり、両親が元々蔵書家だった影響も有って今の職に就いた
という。これだけの本を手に入れたり管理するのは金銭的にも
苦しいのではないか?と尋ねると、彼らが援助してくれる事を
聞く。本は人類の財産であり寄付してくれた人の本をここに
並べたかった事を聞く。何故他人の人生に拘るのか?と問うと
自分の人生は空っぽであり、そんな空っぽな人生に彼らの人生
が埋めてくれるのだという。
亡くなった二人の自分史を書くつもりは有るのか?と問うと、
あんな悲惨な最期では書く気になれないと体の良い言い訳を
告げる。

再び図書館に行くと、司書の佐伯要一から、辻村が来てから
図書館に落ち着きがなくなったという。男達の心をざわめかせ
るのだという。自分は静けさと平穏さを愛している事を聞く。

清水は辻村に会うと、殺したのは君ではないよね?と問う。
実は酒を飲んだがあの日のことは酔っていて良く覚えていない
という清水。辻村は私のことを信じてと告げ、貴方は私と
同じ臭いがすると語る。家族が居ても孤独で、本当の貴方を
知っているのは私だけだという。

清水はそれを聞いて彼女に渡すための金を銀行で下ろす。
銀行から出てきたところを右京達が声を掛ける。右京は自分の
身分を偽っていたことを謝罪し、貴方と同様に彼女に金を渡した
人が二人も殺されていることを聞く。しかし清水は、あなた方に
退職者の気持ちが分かるかとし、金を渡すのは自分の意思だと
いう。
薫は明らかな詐欺なのにと苦虫を噛みつぶしたような気分にな
るが右京は本人の意思なので今のところ何も出来ないという。

そんな中、特命係の薫に電話が鳴る。
所轄からのもので、そこには知念がいた。
知念は持っていた包みから血の付いたナイフを見せ、私が
殺したのにどうして信じてくれないのか?と迫る。
すぐに取り押さえられ、ナイフを調べるとAB型の血液が検出
される。八尾の血液型が確かAB型だったという。

右京らは知念から事情聴取して聞き出す。
以前証拠は有るのか?と尋ねたときには出せずにいた証拠を
何故今頃持ってきたのか?と問う。あの時は無かったが今出てきた
のだという彼。私の部屋にあるのを見つけたとの事だった。
誰かが知念の家にナイフを置いたのは明らかだった。
大金を下ろして彼女に渡すのを見ていた人物の仕業。
芹沢に頼み所轄から上がってきた捜査資料を見せてもらう。
現在清水に対して所轄の尾行は解除された事を聞くと、右京
たちは急いで清水が行きそうな辻村の家へと向かう。
そんな清水の事をナイフで襲いかかる男が居た。
図書館の常連の大滝亮だった。ずっと彼は指定席から辻村の
事を監視しており、彼女のことを独占しようとして勝手な
思いこみをしていたのだろうという。
右京らは間一髪間に合い清水の命を救う。
そして清水に対して、彼女は金を受け取っても自伝を書くつも
りは無いことを訴えるが、彼は話を聞こうとはしなかった。
右京らは辻村に会うと、いつか貴方自身がこのツケを味わう時
が来ると警告する。
たまきは騙された清水の話を聞いて、例え騙されていても
幸せだったのかも知れないと呟く。

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二人の初老の男性が殺害される。
全く関係のなさそうな二人は何れも社会的地位の高い人物で
有ることと、同じ世田谷区に住んでいること。
彼らは同じ図書館に通っていて、似たような書籍を借りている
のが判明するが、単なる偶然なのか。

なんだかDVDでは欠番になっている作品のようなので、一応フル
ストーリーを書いてみました。いつも書いている時間よりも
三倍くらい時間がかかったぞ。
録画を止めたり何度も巻き戻したりしてストーリーを書いている
訳ではないので、かなりうろ覚えで書いている部分も多々ありま
すが、参考程度に。
地元の自治体とか似たような職業で働く方達には不快なのかも
しれないけれど、正直禁止にする程の作品ではない気がする。

今回のドラマで良く設定されているのは、高岡早紀さんの
小悪魔的要素を上手く詐欺に結びつけている点だ。実際にこんな
事をしていそうな印象ばかりが残ったけど、このイメージは
高岡早紀さんというよりも高岡由美子さんの印象なのかも知れ
ない。

若干ポイントとなる自首マニアの男の挙動不審っぷりに違和感
が有るものの、事件の根底にある定年後の必要とされなくなった
男性の寂しげな心情が上手くドラマの中で描かれ、騙されていた
として幸せだったのかも知れないという辺りは、なんとも寂しさ
の余韻を残す内容だった。
キャバクラとか水商売の多くは、こんな心理を巧みに誘導して
いるものだね。

伊丹と薫の関係など、この頃は一番面白かったし、たまきや
美和子の絡ませ方は良くできていた。

いつかあなた自身がこのツケを払わなければならない時がくる
という右京の言葉だけど、こういう人こそ逆に栄えていきそうな
気もする。整合性を求めたい気持ちはよく分かるんだけどね。

杉下右京 …… 水谷豊 (特命係)
亀山薫 …… 寺脇康文 (特命係)
奥寺美和子 …… 鈴木砂羽 (帝都新聞社会部記者)
宮部たまき …… 高樹沙耶 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦 信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢 守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田 六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策部)
内村 完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田 公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)

大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)


辻村めぐみ …… 高岡早紀 (司書)
清水直久 …… 浜田晃 (自伝を辻村に書いてもらおうとする)
知念信夫 …… 飯田孝男 (自首マニア)
大滝亮 …… 伊藤初雄 (犯人、辻村のストーカー)
佐伯要一 …… 大石継太 (司書、辻村を煙たがる)

大橋一三、飯塚雅臣、谷寛之、小西宏旺


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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