第11話 涙の告白は奇跡を呼びますか

岩瀬健は会場から吉田礼を連れだし、気がつけば二人が出会った
小学校へと向かっていた。教室や校庭を見て回り、二人は少しの
間、思い出に浸ることになる。

過去では無く現在で決着を付けるという事で、やはり結論は
結婚披露宴の席に託された。
それが映画「卒業」のダスティン・ホフマンになるのか、
それともあだち充漫画「みゆき」の様なパターンになるのか、
実に興味深い流れだったと思う。

実際には「みゆき」色の強い結末が用意されていた訳だが、
描き方はやや抽象的で、幾つかの不満が無いこともない。
ただドラマの構成としては良くできていたと思う。

あくまでドラマでは岩瀬健というキャラクターの性格を変える
ことなく一貫して不器用さを描いた。主人公だからといって
存在自体を優遇させることへの嫌悪感を無くし、過去の記憶を
都合良く入れ替えてしまう事への不条理さを限りなく排除した
作りにした。
そんな不器用な優しさに光を照らすべく、過去に戻る度に
縁取りを鮮やかにする為の作業を続け、各々の事象にメリハリ
の付く様し向けてきた。

やはりドラマとして面白いのは、不器用さを演出したのは岩瀬健
だけでなく、吉田礼にもその非をぶつけた事だろう。
面と向き合って意志表現が出来なかった岩瀬健にばかり責任を
押しつけるものではなく、そんな優しさから目を背けてきた吉田礼
の性格にも問題が有るという作りだった。

それを実感させるスライドショーは良くできていたし、これまで
の小さいエピソードの積み重ねである集合体がこの中に詰まって
いる作りは見事だった。

岩瀬健の優しさの表現はまさに日本的なものだと思う。
気配りの仕方、意思表示の仕方、それらが相手に見えない様に
慎ましげに陰で努力する。

岩瀬健のスピーチによって賽は振られた。
紆余曲折が有りつつも初恋を貫いてしまう辺り、忘れ去られた
日本というモノを喚起させる作りで、何処か彼に愛着が沸いて
しまうのは、そんな日本的なものを含ませているからなのかも
しれないですね。

過去への拘りと未来志向という相反する二つの考えを上手く
融合した流れでもあるし、失敗する事以上にやらずに後悔する
なというメッセージ性も含まれていて、ドラマとしてはなかなか
面白く構成されていたと思う。

一つ気がかりなのは、多田さんか。
好きな相手の幸せを第一に考えろとはよく言われることだけど、
なかなか出来ることではないよね。
まぁドラマではよくあるシチュエーションなのか。少なくとも
結婚披露宴での波乱は韓国ドラマでは日常的に有る描写だ(^o^;

評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)

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