第11話 ワシはお前を幸せにするぜよ |
メリーを助ける変わりに夜の海へと転落した太郎。
なんとか助け出されてホッとするのも束の間、見守る人々の
心配は太郎の記憶がどうなっているかに集中していた。
医師から過去の記憶を取り戻したときのために、東京に帰った
美和子を呼び寄せるよう言われる。
激しく切ない話しで久しぶりにドラマを見て泣きそうになった。
サタケミキオさん初のオリジナルドラマだと言うことだが、
とても良くできたドラマだったと思う。
後腐れ無く別れるために太郎が仕組んだ嘘。
それは土佐清水での記憶を残したままでの別れ。
太郎の気持ちが理解できるほどにこのドラマの切なさを実感で
きると思う。
何よりも切ないのは岸田家と最後の別れを交わすときの太郎
の態度だろう。泣くことも許されず、感情を表すことも出来
ない別れ。家族として生活してきた10年の歳月の重さを考え
れば、体全体で悲しみと無念さを体現しても良い場面なのに
それが許さない無情の別れだ。
太郎が自ら選んだ記憶喪失という選択は、生きている間に
気軽に土佐清水の土地を踏むことが出来ない意味であり
今生の別れに近いものである。
このドラマの優れている点は、やはり方言を使った演出だろう。
私はこのドラマを単純に一地方都市で行われているご当地
ドラマという主旨で方言が使われているのかと思っていた。
それが最終回を見ると違うものだということがハッキリ
した。
全ての演出は太郎の性格付けのために使われたものであり、
二つの人生と二つの家庭を隔てる意味で上手く使い分けて
いたんだね。
太郎が土佐弁ではなく東京弁/標準語になった時の一瞬の
冷たい感じがその場を包み込み、視聴者に緊張感を与える。
個人的に美和子が別れ際に語る"へぱ"を聞くのが毎回の楽しみ
になっていたが、地方弁の暖かさを感じるほどに、このドラマ
に出てくる奇抜なキャラクターに愛着が沸く感じがする。
太郎や鈴、そして土佐清水の住民のその後は全く分からない。
唯一鯖子が生きているという所だったり、太郎と鈴はこの世
では結ばれなかったが、孫の世代の二人が良い関係になりそう
な所が脚本家であるサタケさんのエッセンスだろうか。
あれだけ栄華を誇っていた土佐清水の住民の憩いの場である
映画館の閉館という時の流れの無情さもドラマの良さを際立た
していると思う。
一つだけ不自然だったのは、クロワッサンと鈴の関係かな。
太郎のライバルとしてはこのクロワッサンのキャラクターが
弱すぎる。命を賭けて組織からの脱退を図ったと言う面では
男らしいが、流石に鈴の相手しては不自然ではないだろうか。
評価:★★★★★★★☆☆☆ (7.0)