相棒9
(2010年10月期・テレビ朝日水曜21時枠)

脚本:戸田山雅司(1)(2)(9)、太田愛(3)(5)、櫻井武晴(4)(6)(8)
徳永富彦(7)、古沢良太(10)
監督:和泉聖治

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_09/



第10話 聖戦
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練馬の公園の高台から富田寿子は、ある一軒の家を双眼鏡で
眺めていた。耳には盗聴していると思われるイヤホン。
彼女が眺めている先にいたのは、
折原忠志だった。電話して
いる彼に対して、寿子はタイミングを合わせてボタンを押す。
すると目の前の住宅は突然寝室が爆発するのだった。

遺体安置所に駆けつける妻・
夏実と娘・秋穂。特に妻は号泣し
警察が事情を聞こうとするも話しにならない。
刑事達は、彼女を自宅の爆発現場へと連れて行くと、何らかの
爆発をしたみたいだが、詳しいことは分かっていない事を告げ
る。
被害者は金融会社の営業のトップだった、折原忠志。
旅行する事になっていた折原家だが、夫の忠志が急な接待の
ために、先に妻子だけが京都へ旅行に出かけて、翌日に合流
することになっていたという。

右京は鑑識の米沢に呼び出され、現場から発見されたものを
調べる。電波の受信機、そしてそれに連動した爆弾の形跡が
沢山見つする。米沢によるととても構造が独創的だという。

夏実から話を聞く。
夫のことを恨みに思っている人物は居ないか?という問いかけ
に、主人は人を殺したことがあるので、そう思っている人は
居るだろうという。12年前に彼はバイク事故によって、
富田
広人(20歳)
を轢いて亡くしていた事があった。その時、忠志は
コカインを吸引した跡が検出され、4年の実刑判決が出ていた
のである。

富田広人の母・寿子が働いている
レストラン"フライング・ガ
ーデン"
で話を聞くと、マネージャーの岡部は寿子の事を普通の
主婦でよくやってくれている女性だという。夫・
邦夫は3年前にガンで
病死している事を知る。普通の主婦が爆弾など作れるのか?

右京らは爆発の現場を見に行く。
右京は爆発が天井を吹き飛ばすほどの威力ではあるが、一部屋
吹き飛ばすくらいの火力で有ったことを知る。そして
カーテン
が途中で閉まらず
、窓からは公園が一望できる。
夏実から更に詳しい話を聞くと、自分には離婚歴があり、
娘は実の子であは無いこと。前の夫はDVで娘が一歳にならない
位の時に家を飛び出したこと。その際借金をしており、それを
返済するために風俗で働いていたことを語る。借金をしている
時に金融会社の担当だったのが折原だったと聞く。

念のために公園を調べに行くと、確かに爆破現場をこの公園か
ら見ることが出来た。公園には
クッキーの欠片が落ちている
のを目にする。寝室の内部だけが爆発していることを見れば、
この公園から爆発させるタイミングを見計らっていた可能性
が高いと分かる。

寿子の家を訪ねる。すると早速公園に落ちていたものと同様の
ビスケットが出てくるのを見る。
彼女は今でも亡くなった息子の荷物を大事そうに取ってある。
息子の部屋には、彼が働いていた
"村川電機製作所"の工具など
が見つかる。神戸と右京は、彼女が犯人である事に間違い無い
と実感するが・・

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幸せそうに暮らす一家の夫・折原忠志が殺害される。
寝室にいた彼は犯人が仕掛けた爆弾によって殺害されたという
もの。容疑者として、12年前に息子の富田広人を殺害された
母親・寿子が捜査線上に浮かび上がるが、彼女は捜査を想定
して、綿密に証拠を消していた。果たして証拠を見つけることは
出来るのか!?

極普通の主婦が今までで一番の強敵だったという点で、とても
興味深い物語だった。

今回の案件、右京で有っても責めきれず、投了間際で夏実のアシ
ストが無ければ問いつめきれないものが有った。

不思議な内容の話で、息子を失い死人のようであった被害者の
母親は、殺人を計画した途端に生き甲斐を得て、かつての自分
以上に花を咲かせていく。

人間は死ぬ気になれば何でも出来るというけれど、まさに今際
の際を体験したことで、自分の人生が120度変わってしまった
感じだ。街角で歩く彼女の事を、雑誌編集者が取り上げる・
取り上げないの差を描くことで、そんな心情の変化を取り上げた
格好だが、芸が細かいというか、ここまでそんな変化を取り上
げる必要も無かったのかもしれない。

今回、過去の事件の引き金にもなっていた大学の同期で忠志
の親友である江上健造とその家族にも触れることになったが、
復讐の連鎖以前に、ベースとなる親子関係がこのドラマを上手く
構成させていた事は言うまでもない。

白石美帆の使い方が面白く、なんでこんなあり得ない所で出て
くるのかと思えば、最終的には彼女のお陰で、右京たち自身も
命拾いした部分がある。

そしてなんと言っても今回は、南果歩さんの安定した演技力が
ドラマを最後まで興味深く惹き付けたと思う。
夏実に対して、彼女の気持ちを逆なでするかのように、貴方の
夫をバラバラに出来て最高の気分だと告げる辺り、夏実の妄想
なのかと思うほど、寿子の大胆さが見られると共に、別の意味で
生を実感しているであろう彼女の心情が上手く垣間見られた
話しだと思う。

右京と神戸の対立の構図は、これまでにも有ったけど、相変わ
らず融通の利かない右京では有るが、ブレない強さが有るな
と思った。
でも神戸が単独で捜査を始める辺りは、少々強引なこじつけだ
った感じもするし、右京が一課の伊丹たちに話しをして捜査令状
を出させるけれど、令状を取るにもそれなりの証拠がいるのに、
何の容疑で令状が取れたのだろうか?

杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
神戸尊 …… 及川光博 (警部補・特命係)
宮部たまき …… 益戸育江 (小料理屋"花の里"。元右京の妻)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
小野田公顕 …… 岸部一徳 (警察庁/警視監)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)


富田寿子 …… 南果歩 (主婦、息子をバイク事故で失う)
折原夏実 …… 白石美帆 (離婚した際借金を背負うが、再婚)
折原忠志 …… 天野浩成 (夏実の夫、金融会社営業トップ)
江上恵理子 …… 石野真子 (健造の姉)
江上建造 …… 中野英雄 (忠志の大学時代同期)
刑事部鑑識課員 …… 青山剛昌
雑誌編集者 …… 久米田彩 (雑誌"マダムモード")

折原秋穂 …… 山田菜々香 (娘)
富田広人 …… 小林優斗 (青年期、電機関係に就職)
富田広人 …… 吉川史樹 (子供の頃、心臓が弱かった)
島田
岡部 …… 土屋良太 (レストランオーナー)
富田邦夫 …… 市山貴章 (寿子の夫、ガンで亡くなる)
江上初子 …… 花原照子 (夏実の母、余命幾ばくもない)
南雲幸次郎 …… 大石吾朗 (南雲プロダクション)
南雲理奈 …… 村田唯 (娘、就職が決まる)
大英興業 …… 嶋崎伸夫 (採石場)

角谷栄次、美織、岩田知幸、河田義市
竹内晶子、飯塚ひより、中田敦夫、川名幸男、西岡航


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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