相棒 Season12
(2013年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

脚本・輿水泰弘(1)、金井寛(2)(5)(12)、櫻井武晴(3)、戸田山雅司(4)(8)
徳永富彦(6)、飯田武(7)、太田愛(10)、高橋悠也(11)、真野勝成(13)
監督・和泉聖治(1)(2)(3)(10)、東伸児(4)(7)、近藤俊明(5)(6)、橋本一
(8)(13)、安養寺工 (11)、近藤一彦(12)
プロデュース・伊東仁、西平敦郎、土田真通
音楽・池頼広

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第13話 右京さんの友達
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右京はパソコンに向かって文章を書き、カイトは小説「傷口と
ナイフ」を読んでいた。
その小説には「孤独は山の中に有るのではなく街の中にある」
と言った哲学者の言葉が引用されていた。

カイトは"あの人"は何で僕たちを呼んだのかと右京に尋ねると
お茶会に行けば分かる筈だと語る。

右京はある時、趣味の紅茶のお茶会に出席する。同席した江藤
は紅茶に対するウンチクを語るのを右京は聞いていた。すると
そんな会話に割り込むようにして、毒島幸一(42歳)が現れる。
無知な人間は自分から無知をさらけ出すものだとして、江藤が
語るマッタケレ茶園の件で誤解していることを訂正していく。
紅茶好きは産地に関係なく味を楽しむものだと告げ、貴方の場合
紅茶が好きなのではなく、紅茶に詳しい自分を認めてもらう事
を求めているのではないかと告げる。
犬を連れた毒島に右京は興味を持ち話しかける。
彼は「犬と紅茶だけしか信用出来ない」とする無類の人間不信
さを初対面である右京に語る。右京はふと名刺を渡す。毒島は
無職なので名刺がない事を告げる。
右京は一期一会の出会いかと感じていたが、再び一週間後に
茶会の誘いがかかる。

カイトを連れて毒島のアパートへと足を運ぶ。
アパートは取り壊しが決まっている為に、土足での生活も許可
されているとして、右京やカイトに靴のまま部屋に上がって
欲しいという。質素ながらもアパートは海外の雰囲気が漂うもの
が有った。アパートに関するウンチクを聞かされる中、二匹の犬
の写真を目にする右京は、以前のお茶会で毒島が犬・アルを抱えて
来ていたことを思い出し、犬のことに言及すると既に他界したと
聞かされる。
右京は書斎に沢山の蔵書があることに気が付き見せてもらうと、
ミステリー小説で溢れていた。毒島はこれでも半分は処分した
のだという。翻訳されていない作品を海外から取り寄せていると
いうくらい、毒島は小説好きだった。
毒島は紅茶を淹れる事を告げると、右京たちは紅茶好きの彼が
どんな紅茶を入れるのか楽しみにする。

紅茶はアンティークのカップに淹れられる。
カイトはその注ぎ方が右京と同じだったことに目を引く。
犬と紅茶にしか興味がないので、カップには拘りを持っているの
だという。毒島は紅茶を淹れながらも、右京のことをネットで
調べた結果、「都民ジャーナル」の中で、和製シャーロック・
ホームズだという記事を見かけた事を告げ、カイトはとりわけ助手
のワトソンと言った所なのかと告げる。
毒島は警察は馬鹿しかいないと思っていたとし、先日は頭の悪そう
な二人の刑事が来たという。
先日隣の部屋で女性・佐藤静香(28歳)が殺害され、容疑者として
彼氏であるミステリー小説作家・烏森凌が逮捕されたのだという。
警察を馬鹿にしているという事は、この事件は冤罪だと思っている
のか?と問うと、警察は信用出来ないと思っているだけだと語る。
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 右京はある時お茶会で知り合った一人の男性・毒島幸一と不思議な
交流が始まる。そんな彼からお茶会に招かれ、カイトも連れて
いくと、その家の隣で女性が殺害されたことを知る。既に容疑者
も逮捕されており、事件としては解決しているかに思われたが・・・

今回のドラマは右京が書いた架空の小説を元にしているような
語り口で描かれているので、本名ではなく、代名詞が台詞の中
で多く登場する。
やっぱり馬鹿な二人の刑事と揶揄されたのは、"あの二人"のこと
なのか。
普段は「僕の想像ですが・・」という下りで語られることも、
文芸に長けた相手とのやりとり故に、そういう前提は不要
とまでにズカズカと自分の小説と称して、事件の流れの解明に
宛てていくところなど面白い演出が施されている。

聞き慣れない脚本家さんによるシナリオだったので、相当相棒
の設定を見直して製作したであろうことは想像に難くない。
本来設定されている右京のキャラクターを改めて掘り起こしたような
感じで、右京の刑事として、人間としての信念の根底にある英国
紳士の臭いを感じさせる作りが行われていた。ベテランの脚本家
さんが忘れていたキャラクター設定の造形を改めて原点に立ち返る
ように掘り起こしていくところがまた憎い作りである。

そして誰もが疑問に思っている過去の"相棒"に対する言及も
珍しく行われて、名前こそ出なかったものの、7代目相棒(薫)から
言われた"協調性がなく、仲間を立てることをしない"右京の警視庁
内での立場を今回の主人公に当てはめて、上手いこと描いたな
と思わせた。

今回登場する男性は右京と似たもの同士だった。
しかしそんな右京との違いは何かというものを描いたエピソード
であり、一見すると右京も似たような状況ならば同じ行動を起こ
してしまうのではないかと思わそうな感じだけど、その違いという
のを今回の毒島幸一が考察しているところが興味深い。
一人の人間の人生を語る「孤独の研究」というテーマの右京の小説
だけど、「孤独と孤高」は違うということを毒島本人が語っている。
毒島が自分の能力を活かせる場を持てれば、右京のようになって
いたのかも知れないし、有る意味では切なさを感じるところもある。

捜査自体を省略した流れが有り、調書と数少ない情報から掘り起こした
物語の流れがあるので、あくまで仮定として描かれているけど、
右京自身の性格や人生とダブらせて描かれているからこそ、その信憑性
にもある程度の説得力を感じるところなのかも知れないね。

完全犯罪に近いのにどうして名乗り出たのか。
人によっては優先すべきものが有るということで、この容疑者の
男性もウソを付くことは出来ない性格だったにせよ、唯一愛した
女性との約束こそもっとも優先させるべきものだとする辺りが
またなんとも言えない味が出ていたね。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
甲斐享 …… 成宮寛貴 (警部補・特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (二代目"花の里"女将)
笛吹悦子 …… 真飛聖 (国際線・客室乗務員、享の彼女)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁・次官)
陣川公平 …… 原田龍二 (捜査一課・経理課)

毒島幸一 …… 尾美としのり (ミステリー小説批評家、紅茶好き)
佐藤静香 …… 佐藤寛子 (ホステス)
烏森凌 …… 加藤厚成 (ミステリー小説家、静香の彼氏)
大沢重光 …… 田中耕二 (文芸の批評家)

安藤一人、品川恵子、小飯塚貴世江、榎本桜、船越理恵
國津紘子、金井敏英

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)


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