相棒 Season12
(2013年10月期・テレ朝・水曜21時枠)

脚本・輿水泰弘(1)、金井寛(2)(5)(12)、櫻井武晴(3)、戸田山雅司(4)(8)
徳永富彦(6)、飯田武(7)、太田愛(10)、高橋悠也(11)、真野勝成(13)
山本むつみ(15)
監督・和泉聖治(1)(2)(3)(10)(15)、東伸児(4)(7)、近藤俊明(5)(6)、橋本

(8)(13)(14)、安養寺工 (11)、近藤一彦(12)、真部千晶(14)
プロデュース・伊東仁、西平敦郎、土田真通
音楽・池頼広

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第15話 見知らぬ共犯者
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有村亮は英国・ロンドンのソーホーシアターで、好評を得た
舞台役者だった。日本への帰国便の中で悦子は、彼の座席近く
に「殺しのデッサン」と書かれた台本が落ちている事を知り
乗客が一時期日本でも有名だった俳優の有村である事を知って
感激する。
悦子は帰宅するとカイトに白ワインのお土産、右京に茶葉の
お土産を渡す中、昔ファンだった芸能人・有村に逢った事を語
る。
イギリスの新聞にもソーホーシアターで熱演している彼のこと
を「観客を魅了する鬼気迫る演技」として書かれていた。
右京は小劇場ながらも実力者しか演じられないソーホーシアター
で実力を認められるなんて素晴らしいことだと絶賛。なんと
か演劇を見てみたいとすると、今度その画家殺しの劇は日本でも
公開されるようだと語る。

そんな会話をしていると角田がコーヒーをもらいにやってくる。
有村の話をしていると、角田は5年前にマスコミに激しく叩かれて
海外に拠点を移した芸能人である事を聞く。
なんでも舞台で失言が有り、「観客は俺を見に来る」と強気な
発言をしたことが原因なのだという。右京は確かに傲慢だが、
叩かれる程ではないのではないかと問う。すると彼は辛口評論家
として有名な山路康介に噛み付かれたのだとし、彼の論評が
きっかけで激しいバッシングの嵐になったのだという。その時の
演劇も評判は散々だったとのこと。復活を賭けた日本舞台への
凱旋だろうと語る。

そんな中、山路康介(68歳)が自宅で殺害される。
発見したのは家事代行業者の女性職員で、死因は鈍器で頭部を
殴打されたことによるものだという。死亡推定時刻は昨夜
21時から22時。雑誌のご意見番で一人暮らしをしていた。
釣り大会の賞品のトロフィーで殺されたようだと告げ、
室内は物色された形跡が無いことから、強盗目的ではなく怨恨
によるものだろうとの事だった。

右京たちもその事件を新聞で知ると改めて山路家を訪れる。
書斎を見ると評論家にしては物足りないものが有る。
普通評論家ならば資料とか録画記録などで雑然としているハズ
なのに、物が少ないのである。

彼がコラムを寄稿するつぼみ出版に行く。
すると編集の責任者から、辛口の評価が売りの人だが、あくまで
個人の感想に過ぎないものだという。先生には色んなコメント
をもらっていたとの事だった。
カイトたちは彼が書いたコラム・雑誌を見て、一度目を付ける
と凄い粘着性に標的をバッシングする人物である事を知る。
右京は、ソクラテスの言葉を引用し、
「近頃の若者は勉強すべき時にゴシップに興じて困ったものだ」
と語る。カイトは人を誉める記事では売れないのが現状だろうと
語る。
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辛口評論家の山路康介が自宅で殺害されて発見される。
調べていく内に彼の評論がきっかけで芸能界から引退を余儀なく
されたものも多いことを知る。目撃証言からそんな彼の評論に
よって自殺に追い込まれた若手女優の父・大倉修司が捜査線上に
浮かび上がり、事情を聞くと自供していくことになる。
しかし右京は現場を見て何処か腑に落ちない部分があることを
知る。

鏡に映し出される真実の中に、虚像と現実とが交錯していると
いう着眼点はとても面白く出来ているのだけど、肝心のキーワード
となっている鏡の使い方があまりに都合良く利用され過ぎていて
少々映像として見ると説得力を欠いていたと思う。

ダイイングメッセージなどによく有る、"逆さの文字"が決め手と
なるものだったけど、トロフィーに付着する指紋を拭きつつも
鏡に映るトロフィーの文字だけを頼みに虚偽の自供をするという
辺りがちょっと心細いネタではある。そもそもあの角度から見て
高齢の男性の視力であの文字を追えますか?って感じのもの。

演技者として自分が評価された演技を実践で利用する機会に恵まれる
という皮肉さだったり、その唯一の観客となってしまった大倉修司
は最高の演技を見せられたとする皮肉が込められていそうだし、
何よりも、「俺の演技を見ろ!」とばかりに、自分の演技を否定
した評論家の前で、その演技を実践したという事実自体が何よりも
皮肉であって、そういう部分だけ掻い摘んで見ると、とても考えら
れたシナリオだと言えそうだ。

ドラマとしては、この世は如何に無責任に発せられる情報が多い
のかを描いているのだろう。「ペンは剣よりも強し」という言葉が
有るように、文筆家である程に、情報の扱い如何によっては
一人の人間の人生を終わらせることが出来るということを考えれば
各々責任を持って欲しいところがある。インターネットで拡散して
いく情報の習性を利用して、一度傾いたバッシングの流れが何時まで
も、特定の人格を否定するものとして根付いてしまうところは、
現代社会を象徴していて、その事実が閉塞感とも繋がり、なんとも
言えないものを感じるところだった。

一見すると有村と大倉に繋がりが無いように思われたことも、
最後になって父親の語りで分かるという辺りの見せ方は上手かった
と思う。

そして新人の脚本家さんがありがちな右京時代の設定・イギリス風の
知識を使用した捜査・着眼点というのを今回も利用している。
ただ最後は情に訴えるもので、俳優が自供しないと、起訴するのは
難しかったようにも思う。

「見知らぬ共犯者」というところから、ヒッチコックが描いた交換殺人
事件を取り扱った映画「見知らぬ乗客」を意識しているのかなと
想像して見ていたけど、内容としては関係がなかった。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
甲斐享 …… 成宮寛貴 (警部補・特命係)

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (二代目"花の里"女将)
笛吹悦子 …… 真飛聖 (国際線・客室乗務員、享の彼女)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁・次官)
陣川公平 …… 原田龍二 (捜査一課・経理課)

山路康介 …… 小林尚臣 (辛口で知られる評論家)
有村亮 …… 天野浩成 (かつては人気俳優)
大倉奈津 …… 中山絵梨奈 (女優)
大倉修司 …… 中山仁 (奈津の父親)

石原善暢、平川和宏、大槻修治、外山誠二、浅木信幸
川崎真実、坪内悟、多田安希、ジェフ・デービス、山中修平


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)


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