夜行観覧車 (2013年1月期・TBS・金曜22時枠) 原作：湊かなえ 脚本：奥寺佐渡子、清水友佳子 音楽：横山克 演出：塚原あゆ子、山本剛義ほか プロデュース：新井順子 協力プロデュース：橋本孝 主題歌：「VOICE」AI http://www.tbs.co.jp/yakoukanransya/

第10話 犯人が語る事件の動機…家族の未来
--------------------------------------------------------

--------------------------------------------------------

高橋家の長男・良幸はマスコミを集めて会見を開くことにする。
自分たち家族には人には言えない秘密が有ったとして事件の
真相を語っていく。前日の晩に良幸は慎司から父親から
常習的に暴力を受けていたという事を聞いた良幸だったが、
アザの出来方を見る限りでは、常習性の有るアザには見えず、
それがウソだと分かる。しかし良幸は父親を悪役に仕立てること
で家族を守る為の行動を取り始める。

死人に口なし!とはまさにこのこと。

父・弘幸の後妻を見る目なり慎司に対する視線が嘲笑している
かのような感じに描かれていたけど、それも実際には劣等感
というフィルターを通して見た淳子の妄想っぽい視線だったから
なのかな。

最終話は面白く構成されていた感じで、まとめ方としては上手く
出来ていた。このドラマ、全8話くらいの構成だったらそれなりに
面白く出来ていたであろう事を考えるとかなり惜しい気がする。
事件が発覚した後から最終話にかけて、直前でかなりグダグダ
した流れが有り、一向に話が進んでいかずに遠回りしている
感じにしか見えない所が残念だった。

夜行観覧車というタイトルがまた秀逸で、最初は人としての
ステータスなり、バイオリズム的発想で観覧車に例えている
のかと思ったけど、その場から動かずぐるぐると回っていること
を日常生活に例えているし、また上手く着地地点に戻る頃には、
家族の関係が元通りになっているところなど、象徴的な存在と
しては良く出来ていたと思う。

狭義的には人の持つプライドなり、優劣を付けたがる人の習性
みたいなものがドラマを構成していた部分だけど、広義的に
見れば、コミュニティに於ける人間関係がとてもリアルに
描かれて、面白い要素として存在していた。

勇気をもって言いたい事を言う事こそ本質的なもので、
街をホントによくしたいのであれば、どうすれば良いのか。
自分の生活環境を改善する為には何が必要なのかを上手く投げか
けたドラマだったと思う。

血のつながりというものもドラマを構成する上では重要な
要素だった。家族を構成する上で血のつながりこそ優先される
べきなのかを問う流れも有り、最終的にはその血のつながりを
越えた家族というものの形を示した格好で、興味深く出来て
いたな。
次男は血のつながりに拘り、母親を庇うために父親を悪く言おう
としたけど、長男は家族を守る為に実の父を悪く仕立た。
とても複雑な構図だったけど、誰もが乗り越えるべき試練を
与えた格好で、後味としては悪くなかったね。