相棒14
(2015年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第6話 はつ恋

脚本/谷口純一郎 監督/和泉聖治
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男が倉庫の上から転落する。

右京は米沢の元に行く。
昨夜芝浦の倉庫で遺体として発見された人物の事だった。
冠城は僕を置いていかないでくださいというと、右京は探した
がいなかったという。米沢はあなたは呼んでいないとして敵意
を向ける。倉庫ビルから落ちた転落死だが、他殺だろうとの事。
腹部に刃物で刺された跡が有ったのだという。被害者はジャンク
アーティストの山本将人。ジャンクアートとは廃品やガラクタで
作った芸術品のことだと右京は説明する。一ヶ月前にパリの
歴史有る芸術賞を日本人で初めて受賞したので右京は注目して
いたのだという。

現場へ行き倉庫を調べるとそこはアトリエになっていた。
3階から落ちたという。冠城は室内にはガラクタばかりだと
思い価値があるのかと問うと右京は中には数千万円するもの
だという。芸術家が亡くなると更に価値が上がるという。
床には材料なのか何か落ちていた。作ったものを本人が気に入
らずに壊したものなのか。しかし右京は将人の作品は金属だけ
で作るのが特徴で壊れているのは金属ではないという。白手
を出して持ち帰るという。マジっすか?全部ですよと右京は語る。

伊丹ら捜査一課は将人と同居していた星野玲奈から話を聞く。
一緒に暮らして15年になるという。しかし結婚はしていない
とのこと。事件当日に変わった様子は無かったかと尋ねると、
ここ数日、彼はアトリエに寝泊まりしていたので分からない
という。芸術家は自由気ままな人が多く、特に将人のように
一気に注目された人にはその傾向が有ったのではないかと。
トラブルがないか、昨夜7時のアリバイを玲奈に尋ねると、
残業していたとし、自分は新川の坂上税理士事務所の事務員
をしているという。伊丹は彼女の太ももにアザがあるのを
目にする。思い切って彼女に山本から暴行を受けていないか
と問う。

特命係では右京が作業している中、角田が「暇か?」とやって
くる。何をしているのかと問うと被害者のアトリエの壊れた作品
を復元すると言っていると冠城は説明する。角田は小耳に挟んだ
がこの事件では男女のトラブルが有ったみたいだという。山本
が玲奈に暴行を振るっていたり、余所でも女を作ったりして
いたという。動機としては十分でも玲奈にはアリバイがあるとの
こと。冠城はジャンクアートの勉強をしていた。彼女ならば破片
のことも知っているかも知れないとして、右京に勉強中の雑誌
を見せる。すると白石由紀というアートディレクターが山本を
プロデュースしている事が分かり、更に一緒に個展を開こうと
していたことが判明する。

個展の準備会場へと足を運ぶ。
白石に欠片の件を写真で見せるが自分には心当たりはないと
いう。現場では個展開催時期が迫り殺伐としていて、スタッフ
の一人は脚立がないと激怒していた。アートディレクターとは
具体的にどんな仕事をするのかと問うと、アーティストのプロ
デュースやサポートを公私にわたって行うという。私の場合
彼とはスタッフというよりもファミリーに近かったとのこと。
右京はゴッホの弟のテオ、ピカソの恋人のドラのように芸術家
には理解者の影がある事を語る。
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ジャックアーティストの男性・山本将人が倉庫の上から転落
して亡くなるが、転落する前に何者かによって腹部を刺されて
いることが分かる。他殺殺人だろうとして米沢からの知らせで
右京達は捜査に乗り出していく。

捜査一課の伊丹・芹沢の役割を右京達は潰さず、また米沢の
登場を鑑識という形以外に冠城というライバルをぶつけて
描いていくことでバランスに配慮した形のエピソードだった。
逮捕直前の捜査は全て伊丹に任せていたし、伊丹の中でも
伊達に長いこと捜査官をしていないとばかりに、自分なりに
被害者と同棲している女性が暴行を受けていることを見破って
いた。

調べていくウチに過去の事件のことが明らかになり、人が
変わってしまった理由というものを深く掘り下げていく。
人が突然変わるには何か理由があるハズで、その理由を
紐解いていくウチに、徐々に時代や環境と共に変化していく
女性の心というものと、普遍的な愛情を持っている男の差と
いうもの触れていくものだった。

二人の人物が幼いときの殺人事件の秘密を共有しているところ
など完全に「白夜行」を踏襲しているけど、やはり不安感故に
暴力的な姿勢を持ち始めてしまったところが皮肉として描かれて
いた。

才能があるのに才能を隠さずには居られなかった過去の事情。
彫刻の受賞のためにその土地を訪れたのは僅か1週間での出来事
で、殺害したのも一瞬のことだけど、それが一生を左右する
ものとして存在してしまうところは切ない。

足枷の問題が引き合いに出された。
女性は自分のことを助けてくれた男性の為に心が移り変わった
今でも一緒に居なければならないという脅迫概念を持ってしま
っている。またそんな彼の才能を引き出すと同時に引き出して
はいけないパンドラの箱までも開けてしまった女性が、それを
ネタにアーティストの足枷にするところなど、えげつなさも
存在する。

同じ日に放送したNHKの海外ドラマ「Once Upon A Time」でも
島に残らねば生きていけない男性が、愛する女性を引き留める
ことは足枷となってしまうことも有って自己犠牲を見せていた
りもしたし、ヘンリーという孫を助けるために犠牲になって
でも助けようとしている人物が沢山いるということで、本来は
ありがたいことなんだけどね。

それにしても右京と冠城、互いに口調が移っているところが
あるよなぁ。今回も冠城の「はいぃ〜?」が有ったし、右京が
冠城の語る台詞をオウム返しして、「マジッすよ」と語る
やりとりが笑えたな。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、法務省キャリア官僚)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目"花の里")

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長。警視監)
日下部彌彦 …… 榎木孝明 (法務省事務次官)

星野玲奈 …… 笛木優子 (坂上税理士事務所の事務員)
山本将人 …… 内浦純一 (ジャンクアーティスト)
白石由紀 …… 中原果南 (アーティストのプロデュース)
坂上武雄 …… 石井テルユキ (坂上税理士事務所)
小松典子 …… 前沢保美 (児童養護施設"清岩学園")
佐々本徹 …… 岡村寿啓 (未認可の佐々本調査事務所・所長)
少年期の将人 …… 須田琉雅 (小学の頃佐賀、彫刻で子供彫刻展掌
)
少女期の玲奈 …… 中村優花 (父から虐待される)
星野浩史 …… 西岡秀記 (玲奈の父、西多摩郡奥多摩)
白石のスタッフ …… 森本のぶ



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