相棒14
(2015年10月期・TV朝日・水曜21時枠)

プロデューサー:伊東仁、西平敦郎、土田真道


http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/





第10話 英雄〜罪深き者たち

脚本/金井寛 監督/池澤辰也
--------------------------------------------------------
--- 昔 ---
山林の奥で山小屋が燃えるところ、2人の子供たちが飛び出して
くる。2人の子供は大黒様の掛け軸を持ってくると、その掛け軸
に誰から教わったのか小刀を使って手に傷跡をつけ、二人で
血の結束を誓う。

--- 2015年・年末 ---
自友党の片山雛子議員と音越栄徳官房長は、音越を中心として
新会派"New World Order"を結成を発表する。既成概念に
捉えられず強い日本を実現する。総裁選を前にして新会派結成
にはどんな意図が有るのか。現総裁に戦いを挑むとして、「私も
彼女も負けたことが無いので手を組めば勝つ」と自信を持って
みんなの前で演説する音越。「新世界を作る!」をスローガンに
掲げると、司会進行役をしていた第二秘書の森戸智紀は、各議員
への個別質問をこの後受けるとして二人の議員を壇上から下ろす。
次の瞬間、突然爆発が起きると背後の雛子のポスターが炎上する。。

KBSニュース・鷹島瑶子は、午後8時に壇上で爆破事件が有った
として報道。現場レポーターの高松記者が現状を語る。

冠城は事件ばかりで正月もまともに休めないとして文句を告げる。
この仕事には年末・年始などないという右京。右京に休暇は
何処にいくのか尋ねるが、まだ決めていないという。冠城もまた
決めていないというと、君はいつでも休暇みたいなものだとして
嫌みを言われる。そんな冠城の元に事務次官から電話で呼び出しが
あり、右京とはまた休暇明けにでも・・と挨拶をして出て行く。

右京は休暇は何処にも行かずハーブティのブレンド作りをしよう
と考えていると花の里の月本に語る。そんな花の里にも珍客が
訪れる。足を撃たれて捜査一課を退職した三浦元刑事が杖を
ついてやってきたのである。あなたと飲むとは不思議だとして、
警視庁にいる時には決して実現しなかったという。
ここに来たのは偶然かと右京は尋ねると、実は退職してから気の向く
ままに旅をしているが、富山を旅行中に本多篤人の話を聞いた
のだという。政治的判断で極秘裏にテロ組織と交渉して、テロを
未然に防ぐ変わりに法的には死刑にしたと見せかけて別の人生を
与えたという事件だった。その後娘の茉莉と暮らしていたみたい
だが、茉莉は不治の病で長くはないとし、本多の姿が確認出来なく
なったものだという。昔の刑事のカンでちょっと調べたと
いう三浦。何故一課に言わないのかと問うと、大事になったら後輩
を巻き込みたくないということだった。右京は旅行がてら本多親子
の様子を見てくるという。

一方冠城は呼ばれた場所に行くと、そこには片山雛子を筆頭に
公安や警察幹部たちが大勢集まっていた。雛子に逢う冠城は久しぶり
だとして声を掛ける。

一方右京は木本百合(茉莉)の見舞いに病院に行くと3日前に亡くな
っていることを知る。父親が居たはずだと尋ねるとよく見舞いに
来ていたがここ一週間は見て居ないという。

警視庁の内村たちは公安局や内閣官房副長官・片山雛子が居る
前にやってくる。今回の爆発事件の件で雛子はあくまで本多の
関わりがないかどうかを気にしていた。公安三課の須賀原正夫
警部補によると極左グループ「赤いカナリア」の活動家の爆破
テロとの関連を調べているという。創設メンバーが逮捕された
のは6年前炭疽菌によるテロの中止を交換条件に本多の釈放を
要求し法律上では死刑執行をした上で、小野田官房長官が各省庁
からあつめられた新鋭メンバーが根回しの為に動いていた。
本多はもう一度司法の審判を受けた痕、今度こそ逮捕されるべき
だったが、片山議員によって法律上死刑になった人間として
扱うよう指示を受けたという。

『憲法39条刑罰法規の不遡及(ふそきゅう)二重刑罰の禁止』。
死んだ亡霊の本多には弱点とも言える茉莉がいたが、その茉莉も
亡くなっていたのである。

右京は電車で富山県・後浦に降り立つ。
役者に行き植村明梨から木本百合の件で話を聞きたいという。
右京は彼女のお墓の参りがしたいとのこと。右京はそこでここは
雛子と新会派を結成した音越議員の選挙区だという事を知る。
彼は地元のヒーローだとし、船上で講演パーティーが開かれる
事を知る。

5年前に本多とテロ組織を逮捕したが6日前に捜査員の監視を交わして
姿を消していた。
雛子の講演の壇上で使われた爆弾は小型で片方側だけ爆風が飛ぶ
という精巧な仕掛けがして有り、如何にも本多が作ったものだとさ
れた。あのまま再逮捕していたら本多は政府と赤いカナリアの交渉
全てを洗いざらい世間に公表していたハズで、日本のテロリストと
断固交渉しないという前提が崩れる為、本多がそのようなことを
企まない為にも警察全体に動いてもらいたいということだった。
--------------------------------------------------------

内閣官房副長官の片山雛子と官房長官をしている音越栄徳が
新会派結成の際に突然壇上が爆発する。そんな背後では、5年前
に超法規的措置でこの世で娘と母方の土地で名前を変えて静かに
暮らしていた本多篤人が監視していた2人の捜査官の前から消え
ていなくなっており、更に組織犯罪対策五課が監視対象になって
いた角田たちは元暴力団組長で現在は東南アジア・サルウィン国
に渡り爵位/外交特権を持つ鞘師九一郎が居なくなっていること
を知る。年末年始右京は、半年前に長期間の休暇を取っていた
こともあり、特にやることもなくハーブティの調合などをして
のんびりと過ごそうとしていたが、そんな会話をしている最中に
花の里には元捜査一課の三浦信輔が現れ、右京に旅行先で本多篤人
のことを耳にしたとして語る。娘の茉莉は余命幾ばくもなく、
彼は刑事の頃の癖で篤人のことを少し調べてみたものの消息が
途絶えていることを語る。

未だに相棒の中では"赤いカナリア"という言葉が息づいている
のは驚きだけど久しぶりに登場の本多篤人、そして何よりも
三浦元刑事の登場・消息が有り、そこから事件を拾い上げて
くる右京の姿が有った。毎回右京が事件を拾い上げる人だと
まずいのでちょっとアクセントをかけた格好だったけど、
「深夜食堂」などに見る花の里での出会いや会話がきっかけで事件の
臭いをかぎ分けるというのも面白いところなんだろうね。
まぁそういうのを取り上げてしまうとドラマは警視庁の人間ではなく
所轄の人間臭い物語になってしまうのだろうけど。

政治的な話になると登場してくる片山雛子の存在もスペシャル感を
出した格好だった。時にイラっとさせるキャラクターだったし今回も
そうなんだけど、このキャラクターの人生を追いかける格好で女性初の
首相まで上り詰めていく様子を描いていくのかなと思った。
人を踏み台にして、狡猾さを見せては、今回もまた力を付けていく
のかと思ったけど、まさかの辞職という流れはちょっと彼女らしさ
は無かったな。
ただ現実社会でも幾多の女性首相誕生を感じさせる流れがあるものの、
何処かで足を引っ張られて日本ではなかなか上にはいけないところも
有るし、良い引き際だったのか。ドラマでの台詞の中にもあるけど
彼女に関連する人が次々と亡くなっていってしまうということも有るしね。
しかし政治家まで上手いこと定着したキャラクターを築き上げていた
相棒ワールドってある意味では凄い。もう相棒ワールドの中でも政治家
としてここまで長いスパンで登場する人は居ないだろう。

ドラマはいくつものメッセージ性の込められたものを感じるけれど、
キーワードは新旧世代交代と、世間から忘れられたものの存在
による反旗を翻す様子が描かれたのかな。
昔のテロリストと今のテロリストの違いなんかも描かれたのだろう。
信念とか仁義などを前面に出す昔ながらの、テロリストと暴力団が
手を組んで一体何をするのか。
片山にしてみれば、超法規的措置で当時は良い作戦に思えたものの
これだけ明るみにされると隠せないことも合って辞表したのか。

「国から遺棄されたもの」とか近年では聞き慣れない「尸林」なんて
言葉が出てきたこともまた共通するテーマの下で、描かれたものが
あるように感じる。

尸林なんて不気味に思える場所に住む人もいるかと思えば、角度を
変えてみることによって、逆にそこに人はありがたみを感じて住んで
いる人も居たりするんだね。
人は人の犠牲の上で成り立つ物だし、元々大地の特性からみれば、
生きて居る人は、死んだ人を踏みつける形で大地に根を下ろしていく
訳で、ドラマではインドの思想なんかもふんだんに取り入れられた
格好だったのか。

昔の方が良いとは思わないけど「New World Order」なんてきな臭い名前
の新会派を結成する二人の議員の方がよりきな臭さを感じる流れで、
唯一本多が更正するに値するものとして、娘の存在が有ったけど、
そんな娘が亡くなったことでたがが外れてしまうのではないかとする
程に信頼感はなく、その悲しみと怒りの矛先は、何処かに復讐心として
向けられているのかと思ったけど、結果として見ると、被害を最小限
にするために、最後は彼なりの信念を貫いて身を引いたというところ
なのだろう。右京だけは篤人の言葉である「テロの犠牲になるのは
いつも無辜の民ばかり、自らのテロ闘争を後悔している。自分の
ようなものが現れないよう、その思いを伝えたい」と語っていたことを
信じていた。

ただ自殺してしまった議員の人も、例え音越の名誉毀損のような嘘に
よって引きずり下ろされたものだったけど、子供たちに変な思想を持ち
込んだりしてちょっと議員らしさは感じなかった。

大黒天に対するトリビア的な流れや願い石から派生して、その石の意味
を語るというのも悪くは無かったか。
「相棒」を意識させるようにして、2つ一組の願い石の先に有るもの
は何か。相棒である人もそうだし、どんな願掛けをしてそれを分かち
有っているのか。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
冠城亘 …… 反町隆史 (4代目相棒、法務省キャリア官僚)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目"花の里")

伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長・刑事部長)
中園照生 …… 小野了 (警視正・参事官)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
甲斐峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長->官房長付。警視監)
日下部彌彦 …… 榎木孝明 (法務省事務次官)

片山雛子 …… 木村佳乃 (内閣官房副長官)
音越栄徳 …… 西村和彦 (官房長官)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (元捜査一課)
本多篤人 / 木本遼一 …… 古谷一行 (元極左グループ"赤いカナリア"幹部)
本多茉莉 / 木本百合 …… 内山理名
植村明梨 …… 武田梨奈 (富山県後浦村役場職員)
鞘師九一郎 / ツニャカオ …… 橋本さとし (サルウィン国外交官)
大黒隆明 …… 重松収 (元富山県後浦出身の議員)
柄谷時生 …… 郭智博 (孤児として育ち、鞘師の下で働く)
須賀原正夫 …… 越村友一 (警視庁公安部公安三課)
黒崎健太 …… 中原裕也 (東京地検特捜部検事)
森戸智紀 …… 山岸門人 (第二秘書)
浦上直 …… 鍛冶直人 (鞘師の部下)
明梨の少女期 …… 須河涼 (少年のよう)
時生の少年期 …… 橋爪龍 (一緒に過ごしていた)

真下有紀、はやしだみき、田中夏海、及川莉乃、桐山浩一
古沢一郎、鈴木太一、石塚良博、山森大輔、山本郁子、
岡野友起、須賀勇亮、千十千、中泰雅、鈴木浩司、松田祐司
小川柊斗、高橋里英、桑原洋一、沼倉計太、神崎由莉子
岡本富士太(写真)、清川均(写真)、石川祐地(写真)、江戸田健司
伸上満、佐藤誠



inserted by FC2 system