愛と死をみつめて 監督/犬童一心 脚本/鎌田敏夫 出演/草なぎ剛、広末涼子、室井滋、高橋克実、木村多江 ユースケ・サンタマリア、東幹久、市川由衣、山口紗弥加 池田努、吉岡美穂、小雪、平田満、日野陽仁、小野武彦 平岩紙、神田正輝、伊藤蘭、大杉漣 (2部のみ) 出演/徳永えり、鷲尾真知子、根岸季衣、田島令子、高橋由美子 http://www.tv-asahi.co.jp/aitoshi/ |
広末涼子が関西弁を話す姿を見ていると、昨年見た映画
「ジョゼと虎と魚たち」の主人公・池脇千鶴とダブるものがあるな。
聞き分けの良い場面や真理を上手く突いた発言をする辺りの演出は、
まさに池脇千鶴みたいだった。
ちょっと長いドラマだったし、文脈を揃えて書くのが面倒なので
気になったところだけをぶつ切りにした感じで感想と評価を書き
たいと思います。
●距離感の妙
そう簡単には会えない二人の距離感。
価値観の相違や精神的な面、また物質的距離を巧みに演出の中に
描き出したところが、ドラマとしての妙だったのかもしれない。
顔の見えない相手が今何をしているのか、どんな事を考えている
のか。
東京と大阪は交通費にして1180円、一泊600円だったそうで、
学生としては相当辛かったと思う。
携帯電話などの情報インフラの普及・交通のインフラの整った
現在ではその苦労は通じづらいものがあるのかもしれない。
●複雑な心境
病気を治すことが本当の幸せではないのかもしれないという
複雑な心理や死ぬことよりも辛い手術を受けさす事への
躊躇いの気持ちなど、これまでのドラマの中ではあまり描かれる
事のない心理が存在していて考えさせられることも多かった。
そんな視聴者と等身大のキャラクターを庶民派俳優のユースケ・
サンタマリアが上手いこと演じた。
●二人だけの強い絆
生きる決心をさせたはずの彼自身が一度は挫折しかかり、
睡眠薬を服用してしまう所など、互いの関係を同等の位置に
置いたことも上手い演出だったと思う。
一方が亡くなれば一方は生きていけないという二人の関係性を
描くには十分伝わる展開だった。
そんなもたれ合う微笑ましい関係に降りかかる不幸の連続は、
人生の皮肉を思わせるが、そんな皮肉が視聴者を感情移入させ
るのに十分な役割を果たした。
またそれに関連して病気の広末涼子を取り巻く恋人と家族関係
の位置づけも面白いように描かれている。
手術することを悩んでいた彼女の心には家族の説得は通じな
かったものの、恋人の言葉が結果的に心を動かせた。
親が無力という事は決してないのだけど、親が面会に来る時の
映像を限りなく少なくし、二人の関係をクローズアップした
演出が効果的に使われた。
●愛されるのに十分な広末のキャラクター
最も辛い心境にある彼女が率先して病院の患者のケアの仕事を
している事。病気ならではの彼女が出来る事を最大限行った事
に対して、人間としての強さを感じた。救われる立場ばかり
でなく、救う立場の人間としての彼女の役割を与えたことは、
よく出来たシナリオだったと思う。
妹・市川由衣のシーンも少ないながらも印象に残った。
逆に指摘したい点
前々から思っていた事だが草なぎ剛の"怒る"演技はかなり不自然
に見える。特に本気で怒れば怒るほど不自然だ。
評価:★★★☆☆