帽子 (広島発特集ドラマ)

〜老いた帽子職人と若き警備員が大切な人との再会の旅に
出る・生きる誇りとは


太平洋戦争の頃、海軍御用達の帽子作りだった"高山帽子店"。
父の仕事をする姿を見て育った春平は、自分も父のような職人
になりたいと思う。
電話の音で目が覚める春平。窓から外を眺めると、庭には室内
を監視するように設置されている警備会社のカメラが有った。
東京に住む息子が一人暮らしをしている父親のことを心配し
設置したもの。
春平は商売に使う為のハサミが無いことに気がつく。
最近物忘れが酷くなり、この日も探し回ることになる。
庭の選択物が取り込まれて居らず、店のシャッターが開いてい
ない事を不自然に思った警備会社"ライフシステム"は緊急出動
をかけ春平の家へと社員を送る。この界隈を担当するのは、
河原吾郎だ。吾郎は窓の外から室内を眺めてみると春平が倒れて
いる事に気がつき、急いで近くに駆け寄る。しかしそれは春平
のイタズラだった。人騒がせだと憤慨するも、いつもの事だと
呆れ気味の吾郎。店を開店していないのはハサミが見つからない
からだとして一緒に探してくれるよう頼む。すると吾郎は二階
からすぐにハサミを見つけてきた。春平はいつも誰かがハサミ
をもっていくと弁明するのだった。吾郎はすぐに仕事に戻るが
一通の手紙を忘れていく。
そんな時制服の帽子を巡って保護者会が開かれているのを知り
春平は急いで中学校へ足を運ぶ。今では学生帽を被っている
所が少ないので廃止すべきではないかという保護者達。
かつては廃止派のみんなも中学の誇りだと言っていた事があり、
流行遅れでも良いものは良いと発言。自分の損得で言っている
のではないかとの発言にケンカになる。
帰宅すると吾郎が忘れていった手紙が気になり、中を覗くと
そこには吾郎の母親・世津の余命が3ヶ月である事が書かれて
いた。複雑な家庭の事情が有り、現在の娘からの手紙であるが
問題は母親の名前だった。世津というのは春平の家の近くに
住んでおり、よく面倒を見ていた女性。しかも冗談とはいえ
大人になったら結婚しようと交わしていた関係でもあった。

原爆の被害によって別れ離れになる親子と嘗ての恋人。
人生に於いて欠落したものを取り戻すために再会を果たす。

余命幾ばくも無い時期に親子が引き寄せられ合うという物語
は結構多いね。時期的に終戦、原爆を盛り込んだ内容で、
舞台は広島の呉市。

戦争や原爆の被害や悲劇を直接的に描かず、間接的に描くという
のも、終戦からは随分と月日が流れたことを意味するものなの
だろう。

目的は朝倉あきさんで見たドラマだが、ドラマとしては
とても良くできた内容だった。

親は子供を捨てる事があるのか。子供は親を捨てることが有る
のか。この二つのアプローチを高山春平と河原吾郎の物語で
描いた話しでもある。

やはり面白いのは高山春平と河原吾郎という世代の違う人物の
引き寄せ方だろうか。このアプローチの仕方を誤ると、嘘臭い
ドラマになるので難しいものがあるのだろうが、なかなか
良くできていたと思う。しかも二人に共通する人物を念頭に
置いて、それぞれに会いたい理由を作ったところも、とても
面白いものだと思う。

高山春平の物語は、かつて結婚を約束した世津を止めることが
出来なかった事に対する後悔の念だ。
仕事の為に別れの場所に立ち会えなかった事。
しかし今にして思うと、"帽子"に対する拘りが見て取れて
春平と世津二人に共通するものを上手く絡ませて描いた感じを
受ける。

河原吾郎の物語は、母親が自分を捨て家族を捨てて別の男に
走った事に対する怒りの念だ。
勿論それは誤解だと分かるのだが、父親から全ての事情が語ら
れる時の躊躇無い語り口になんとなく違和感を感じる。ただ
短い時間なので仕方がないのかな。

どちらも誇りを失っていたモノの、世津に会うことでそれを
取り戻した意味でもとても有意義な再会になった。

ただ春平と世津の年齢差が開きすぎているような感じがしたのは
気のせいか?

高山春平 ……… 緒形拳
河原吾郎 ……… 玉山鉄二
竹本世津 ……… 田中裕子
河原雅之 ……… 岸部一徳

山本晋也、山本龍二、北見敏之、笠原秀幸、朝倉あき
高橋克明、岩田丸、柚木佑美、大西麻恵、富田麻帆
牟田悌三、青野光臣、吉本武史、末武太、小林英里香
梶本浩喜、高木信義、高橋駿海、森脇崇行、内藤典悟
吉田一貴、濱野議晶、小玉真寛、水島憲弘、小金丸大和

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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