スペシャルドラマ・海峡

第1話 釜山港の別れ
終戦の日本と韓国で悲恋に生きた女性の感動作第一回

http://www.nhk.or.jp/drama/kaikyou/

脚本/ジェームス三木

1945年、終戦となった日は同時に朝鮮にとって36年にわたる
日本統治からの解放・独立の日でもある。そんな中釜山に
生まれて育った女性の戦後の混乱期を生き抜く様を描いた
作品。

流石NHKだけあってしっかりとした作品だった。
日本側から見た朝鮮統治視点と朝鮮側から見た感情を上手く
盛り込んだ作品となった。

ドラマに登場する海運会社を経営する朋子の叔父の進藤は
日本側の視線でドラマを物語る。民間の業者で自分の利益
ばかりでなく朝鮮の利益のために働いてきたと自負する男。
それら全ての私財を敗戦によって没収されることになる。
一夜にして富を奪われる事の無念さはよく伝わってくるモノ
がある。

一方そこで働く社員は、当然日本統治に関して快く思って
いない朝鮮たちだ。個人としての関係なのか、民族としての
感情なのか。当然お世話になった社長との関係は情として
存在するモノだろうが民族としての感情が優先し、進藤の
失墜を喜ぶ立場だ。

そんな難しい状況の中で、国境を越えた愛情は成立するのか。

ドラマ設定として面白いのはやはり、良江朋子は日本人でも
有るが日本の地で生まれたのではなく釜山で生まれ育った点。
途中のセリフの中にもあるが、釜山は故郷ではあるが、祖国では
無いという現実だ。
時代が時代だけに祖国だからといっても生活を保障してくれる
ものは何一つ無く、日本はまるで外国の様な未踏の地で
ある所が、このドラマを絶妙なものとしている。

天涯孤独となる良江朋子を助けてくれるのは、日本人ではなく
木戸俊二という青年。この人が朝鮮の人間だと分かるときの
衝撃はドラマとしてのアクセントとして上手く利用され、
ドラマとしてのテーマを浮かび上がらせてくれる。

助けてくれるのは日本政府でも日本人でもなく、朝鮮人という
現実。

どうしても祖国を捨てることは出来ない良江朋子。
祖国を日本によって失い生きてきた朝鮮人の木戸俊二の方が
国境は関係ないとする考え方で先進的なものが存在する。
この時代にそんな先進的な考え方で生きる朝鮮人が居るのか
どうかは分からないが、36年間の日本統治時代の中で生まれた
人は、元来の朝鮮時代を知る人間よりも反日感情は少ないの
かも知れない。

そういえばこのドラマと同じくして終戦の混乱のなか引き揚げ
者として体験したヨウコ・カワシマ・ワトキンスさんが
著書「ヨウコの自伝」を出版し、アメリカの教材で採用されるか
どうかで問題になった。ドラマではこの作品にあるような
朝鮮人による凄惨な行動は見られない。殺気だった様子はなんと
なく伝わってきたのでそれも仕方がないのか。

果たして国境を越えて二人は結ばれるのだろうか。

出演
長谷川京子、眞島秀和、辺見えみり、田島令子、津川雅彦
金守珍、呉崙柄、りゅう雅登、橋口泰介、ハン・テイル
キム・クォンオン、タン・カンホ、不破万作、石橋雅史
菊池均也、丸岡奨詞、鍋島浩、福井裕子、内田淳子
鍵本景子、水下きよし、原川浩明、高嶋宏行、張聖浩
李愛美、銀粉蝶、中村敦史

評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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