松本清張ドラマスペシャル 砂の器
(2011年9月10日・11日/テレ朝・視聴率は第一夜16.6%、第二夜
13.1%)

ナレーション:三上博史
脚本:竹山洋
音楽:沢田完
監督:藤田明二
プロダクション協力:東映太秦映画村
チーフプロデューサー:五十嵐文郎
プロデューサー:藤本一彦、河瀬光、小野川隆

第一夜】【第二夜】【2004年度ドラマ版






砂の器〜松本清張の最高傑作遂に放送へ!秋田-東京-伊勢-出雲、
日本縦断3000キロの殺人捜査!!操車場の死体とカメダの謎!?
二人の刑事が追う宿命…

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昭和35年。西蒲田署刑事吉村弘は、バーバーオオタから出て
くる男・
山田シンジを監視する。山田は拳銃強盗の疑いで
マークしていた。
山田が
ジャズ喫茶のEDENに入ると、吉村を始めとして所轄の刑事
たちは辺りを囲む。しかしタイミング悪く、
毎朝新聞の記者
山下洋子が吉村の元にやってくる。捜査中なので邪魔するなと
吉村は山下に合図を出すが、山田はそれを察知し、山下に銃を
突きつけ逃げようとする。しかしすぐに周りにいた刑事達が
容疑者を確保する。
そこには捜査一課の
今西栄太郎たちも捜査に加わっていた。

4ヶ月後、12月11日。蒲田駅近くの
喫茶店"ボタール"に初めての
客が入る。しかしこの日喫茶店には常連客がいっぱいいて、
バーテンダーも給仕の
すみこもなかなか対応しきれずにいた。

吉村は山下の家で食事をする。山下は吉村と男女の関係にあっ
たが、山下は仕事第一で結婚は考えていないという。そんな中
山下の携帯に電話が鳴り、
蒲田の操車場内で事件が発生した
との報告が入る。吉村もまたすぐに現場に入る。

始発の貨物列車が走るのは4時8分。現場では作業員が点検のため
に操車場内に居ると遺体を発見したという。山下たちが到着
したのはAM3:00頃だった。遺体は顔を潰されており、死後3、4
時間経過した物と思われる。

所轄の吉村は本庁の捜査一課の山下の指名で、この事件を担当
する事になる。すぐに二人は被害者が最後に立ち寄ったと思わ
れるBARボヌールに話を聞きに行くと、PM23:00過ぎに入って
来たことをバーテンダーも確認していた。若い人と白髪交じり
の男だったという。給仕をしていたすみ子の方が事情をよく
知っているとの事で話を聞きに行く。

所轄には捜査本部が設置される。
被害者は60歳代、死因は扼殺であり、顔を潰されたのは殺された
後だという。胃の中からはウィスキーが検出されていた。
30歳代の男がBARでハイボールを注文していたという。
被害者は170cm代で白髪交じりの男。

すみ子の話によると、
カメダは相変わらずか?と言っていたと
いう。そして恐らく二人の会話は
東北訛りが有ったとの事。
もしかすると古い知り合いなのではないかという。
現場の状況から見て犯人は
相当返り血を浴びているハズであり、
近くでシャツを着替えているハズではないかという。

現場近くで血の付いた服を着ている人は居なかったか聞き込み
するも手がかりはなかった。東北地方で亀田性の人物を捜し
出そうとするが全く手がかりはない。

EDENで山下は吉村と会う。
山下はそこで自分はかつて結婚したことがあり、一ヶ月で離婚
したという。それ以降男には決して服従しないと決めたという。
捜査について山下は吉村に何か分かれば真っ先に話して欲しい
と頼むが吉村はそれを拒む。山下は、東北・秋田には
羽後亀田
という土地があることを語る。

吉村は今西と共に秋田・羽後亀田に行き地元の所轄の警察官
から色々と情報を尋ねて回る。所長によると写真の被害者の
事は分からないが地元民ではなさそうだという。しかし一昨日
風変わりの男が目撃されているとの事だった。その男が泊まった
宿舎に行くと、水戸市から来た
橋本忠介という男性が宿泊して
居たことを知る。しかし文字から恐らく左手で書いた文字で
有り、筆跡でばれない様にしていたのではないかという。
更に造り酒屋では、外で怪しい男がずっとウロウロしていたと
の情報が寄せられる。何か目的があるはず・・・

そんな中、駅前では人で賑わっていた。
そこには評論家の
関川重雄と作曲家の和賀英良の姿があった。
新進の作曲家で
寂滅と呼ばれる曲が現在ヒット中だという。
吉村は和賀に近付くと、その曲の性質から、和賀も空襲被害に
有った人物なのではないか?と本人から尋ねてみる。
しかしそれを否定し、ここには
ヌーボーグループの連中と共に
ロケット研究所を見に来ただけだと語る。

東京に戻ると、吉村は山下から和賀が政治家民友党の
田所重喜
の娘で彫刻家の
田所佐和子と婚約している事を聞く。
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蒲田駅の操車場で殺人事件が起こる。
顔を潰され身元が分からない様にされている事から、怨恨での
殺人とは少し違うのではないかと疑う。近所の喫茶店で犯人と
被害者らしき人物が目撃されており、店員の一人が"カメダ"と
いう言葉と、東北訛りの言葉で会話するのを聞いていた。
果たして犯人は何の目的で殺害したのか。

ドラマ版が2004年度に公開されたけど、5度に渡ってドラマ
化(1962年、1977年、1991年、2004年、2011年)されており、
1974年には劇場版が公開されている。

色々と細かい設定の変更が行われているが、それもリメイク版
の楽しみであり、脚本家やら監督家の持ち味が出る部分では
無かろうか。

今回は1夜、2夜の計4時間で構成されたドラマで、犯人視線で
描かれるのではなく刑事視線で描かれている。

ドラマでは"カメダ"と"東北訛りの言葉"、そして犯人が返り血
を浴びたとする淡いグレーの服を手がかりに捜査を開始する。

犯人が秋田県の羽後亀田にミスリードするよう仕組んでいる辺
りが狡猾だけどそこまで気が回るものなのかという疑問も有る。
しかもその翌日には容疑者だと思われる和賀自身がその現場へ
と訪れていることで、効果的な工作だったのか疑問が残る。

ドラマとして弱いのは吉村が和賀を疑っていくきっかけであり、
少なくとも現時点では、白紙の状態から和賀に目を向けると
いうのは相当無理がある。
DNA鑑定が確立されていない時代の話故に、シャツの切れ端を
見つけても証拠になるのかどうか。そして女性の紙吹雪の投稿
を見てそれがシャツの切れ端だと推測していく辺りも相当
強引な解釈に頼らなければならない部分がある。

ただ言葉や方言を使って捜査していく着眼点は面白いと思う
し、今回被害者が自分の父ではないか?とする三木家の男が
出てきたこと。そして何故蒲田で事件が起きたのか?という
疑問点、更に遺体の損傷具合など、疑問や興味を惹き付ける
のに十分な要素が有るし、興味深い部分かな。

吉村弘:玉木宏(警視庁西蒲田署刑事 / 幼少期:澤畠流星)
山下洋子:中谷美紀(毎朝新聞記者 / オリジナルキャラクター)
田所佐知子:加藤あい(彫刻家 / 和賀の婚約者)
関川重雄:長谷川博己(評論家 / ヌーボーグループ)
三浦恵美子:紺野まひる(銀座clubアムールホステス / 妊娠後、
失血死)
中山:合田雅吏(警視庁捜査一課刑事)
律子:藤井ゆきよ(銀座clubアムールホステス)
刑事:橋本一郎(警視庁捜査一課)
三木謙一:橋爪功(島根県亀嵩駐在所・元巡査、61歳)
田所重喜:小林稔侍(民友党代議士/農林大臣 / 佐和子の父親)
辰井:榎木孝明(警視庁捜査一課課長)  
桐原小十郎:米倉斉加年(お茶の先生 / 三木謙一の旧友)
黒崎:大杉漣(警視庁捜査一課係長)
田島:西村雅彦(警視庁捜査一課刑事)
和賀英良:佐々木蔵之介(作曲家 / ヌーボーグループ)
今西栄太郎:小林薫(警視庁捜査一課刑事)


第一夜ゲスト

山田:今井雅之(拳銃強盗殺人犯)
名曲喫茶エデンマスター:蟷螂襲 
BARボヌールバーテンダー:デビット伊東
すみこ:松島紫代(BARボヌール給仕)
駅員:松永吉訓(蒲田操車場の遺体第一発見者)
鑑識:窪田弘和 
監察医:藤沢徹衛
技師:河西健司(警視庁鑑識課科学検査所)
秋田県亀田北警察署長:平泉成
秋田県亀田北警察署員:澤田誠
旅館女将:まつむら眞弓  
酒蔵の店主:福本清三
桑原:かとうかず子(国立国語研究所言語学者)
川野 英造:森本レオ(大学教授)
成瀬 リエ子:吉田羊(銀幕スター杉浦秋子付き人兼劇団「波」女
優 / 自殺・25歳)
宮田 邦郎:山口馬木也(劇団「波」俳優 / リエ子の遺体第一発見
者)
三木 彰吉:原田龍二(雑貨商 / 三木謙一の婿養子)
吉村 妙子:杉山優奈(吉村弘の妹 / 空襲で死亡)


評価:★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)

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