第3夜 時

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彼女は一秒を争う水泳選手。
学生選手権まで残り2週間を切り、選手選考の厳しさゆえに
脱落する選手も多い中、体力的にも精神的にもギリギリの生活を
している彼女は、いつしか捌け口を求めて万引きに手を染める
ようになる。

父親からは過度に期待を受け、出来の良い兄姉と比較される。
父親から送られてくるのはサプリメントと無責任な頑張れという
励ましの声。そこには全く心がこもっていない。

子供にとっても最もプレッシャーのかかるシチュエーションに
よって自分を見失っていく様が実に上手く描けており、難しい
役柄に見事答えたのは加藤ローサだ。

答えは自分自身の中にある。
毎日通りかかる駅前通りに佇んでいるパントマイマーが実にミス
テリアスな感じで、目の前のことしか考えられない彼女にとって
彼の価値観など分かるはずもない。

ドラマで上手いと感じたのは、やはり笑顔に象徴される表情と
いうものを巧みに使った演出だ。

選手選考の段階で一人の水泳選手がその道を諦める。
そして次の道に歩み始めた彼女は、加藤ローサにはない笑顔で
とても良い表情を取り戻している。

父親の笑顔を見るために始めた水泳。
誰かのために始めた水泳には限界というものが見えてくるだろ
うし、このドラマのように何かにぶつかった際に必ずこの主人公
のように自分を見失うものなのかも知れない。

パントマイマーが立っていた角度から町並みを見上げたときの
綺麗な夕焼けが、彼女の精神状態を物語っており、とても
上手い演出だった。

評価：★★★★★★★☆☆☆ (7.0)