相棒 -劇場版III- 巨大密室!特命係 絶海の 孤島へ
(2014年4月26日公開)

監督 - 和泉聖治
脚本 - 輿水泰弘
音楽 - 池頼広
製作 - 平城隆司、鈴木武幸、水谷晴夫、都築伸一郎、山本晋也
浅井賢二、木下直哉





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東京都鳳凰島。
潜水士達が水面から顔を出す。迷彩服のものたちが戦闘の訓練
をしていた。ここは3泊4日で訓練する民兵たちが経営する場所
だった。リーダーで足を悪くして杖を突いているリーダーの
神室司は、それぞれの思いで訓練に参加したのだろうが得るもの
が有ったのならば幸いだという。最後にスコップの一種/エンピ
の使い方を教えるとして、部下にその見本を見せさせようと
するが、岩代純也だけはそれに従おうとはしなかった。

訓練に参加したものたちは八丈島に戻る。
そんな中厩舎で男が殺害される。八丈島署の警察官・桂浜泰三
がやってくると、馬に蹴られて死んだのかとして事故死だろう
ことを聞かされる。

出社する中、右京はカイトから馬が好きですよね?と尋ねられる。
英国帰りに香港に立ち寄るくらいだから好きでしょと言われる。
岩代(33歳)が厩舎で死亡したということが新聞に掲載されている
ことを話すと、馬の視野は350度あるが臆病なので後ろから近づく
と危険だという。

角田からは特命係に珍客が来ていると言われ、オフィスにいくと
そこにいたのは神戸だった。カイトとは初めての対面で紹介する。
神戸は鳳凰島で起きた死亡の件を語る。八丈島から船で40分
くらいの場所にある島で、島は私有地で民兵たちが住んでいる
という。民間の国防部隊が合宿生活をしているが、よからぬ
ウワサが有り、非合法兵器を作っているというウワサとのこと。
公安が監視対象にしているが、彼らは月に一度民間人を集めて
訓練しているという。訓練中は団体行動。防衛省は国防という志
に共感しているとし、防衛大臣、政務官が支援しているという。
警察と自衛隊は因縁の関係に有り、容易には近づけないとのこと。

民間の国防部隊はリーダーの神室司を筆頭に、丹波元史、
因幡義典、相模太郎、三橋謙、柿沼秀喜、高野志摩子、岩代純也
だというが、岩代だけは正式メンバーではなく特別に長期訓練
に参加していたこと。即応予備自衛官・・いわゆる予備役だ
という。この島の地権者は若狭道彦のもので、彼は岩代が
勤める会社の社長。若狭グループは全国展開する飲食業をして
いて相当儲かっており、神室は若狭の防衛官時代の後輩だという。
更にこの民兵組織には栗山朔太郎参議院議員・政務官の支援が
あるという。
カイトは生物兵器なんて簡単に作れるものなのかと問うと神部
は相応の知識と設備、そして資金が有れば出来るもので、生物
兵器は「貧者の核兵器」と呼ばれているという。島に行っても
らえないかと右京に頼む。無茶ぶりしてきたのは次長からだと
いう神部。無理強いすることは出来ないので後は右京さんに
任せるという。

参議院議員会館では、若狭は神室から電話が有り、岩代の両親
が遺体を引き取りに来るとしているという。神室は栗山にも
事情を話す。騒動のこと、済みませんと。安全管理は徹底しない
といけないことを指摘される。

右京は業腹だとするが、それでも結局カイトと向かうことに。
八丈島警察の桂浜泰三は、これは事故なんだけどねと語る。
右京とカイトは神室と野が島に迎えに来ており対面すること
になる。この島は携帯電話は繋がらないというが、神室は普段
連絡などするときは衛星携帯を使うとし、パソコンの使用も
同様だという。
そんな中、右京たちが宿舎に向かう車とすれ違う車があること
に気がつく。話を聞くと先日亡くなった岩代の私物を八丈島に
運ばれているというが・・

事故現場の厩舎を見に行く。
馬のヤマトを外に出す。カイトは調書に書かれていることを
再度確認しながら神室たちから話を聞いていく。調書によると
第一発見者は因幡で発見は午後8時。因幡は衛生兵としての
経験があるとのこと。右京は藁の中に何かが落ちていることに
気がつく。ベルトの通しだろうとし、神室は自分のものが落ちた
のだろうと語る。使われていない馬の個室があった。
尋ねると使われていないというが馬糞が落ちている事を指摘
すると岩代が倒れているのを知った際に、一時的にそこに
ヤマトを動かしたのだろうと語る。装蹄の道具が有り、神室
自らが蹄鉄の管理をしているという。西洋では蹄鉄は幸運を
呼ぶと言われていると語る右京。テーブルには多数の蹄鉄が
置いて有ったが、ある程度まとまってから処分しているとの
ことだった。ヤマトとは5年の付き合いになるという神室。
落馬事故でヒザを怪我して退官したのだという。岩代は訓練中
だったこと。指導してくれとスポンサーから頼まれたとすると
若狭さんですかと問う。
一方岩代の両親が八丈島まで遺体を確認に来る。
そんな岩代の両親に対して若狭はお悔やみを告げると、自分
が全ての費用を出すことを語る。

一方防衛省では、松坂忠義と綿貫孝雄が会話する。今は
アクションすべき時ではないとし、警察が島に上陸している
と語る。事件化されると困ることになると告げるが・・
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劇場版3作目の作品。スピンオフ映画は2本作られているので
広い意味では5本目になるのかな。

時期的に公開されたのはシーズン12から13に橋渡しする頃の
内容。神戸が特命を異動になったのはシーズン10の頃だし、
シーズン11からはカイトが相棒として活躍しているので、
神戸とカイトが初対面するという流れは興味深いが意外と時期
としてみると中途半端な感じがする。勿論ネタ的には時事的内容を
ふんだんに盛り込んでいるというところは言うまでもなく、視聴者
に投げかけるテーマ(平和ボケに対する市民の意識、自主防衛権、
核保有に対する是非)は相当重いし、天然痘ウィルス流出の流れから
派生し、本当の悪とは何か、テロリストとは何かに関して言及して
いるところなどは、イチ刑事物語ではなく国防や政治と関連して
劇場版ならではのスケール感がないこともない。

この劇場版を見て居るのが個人的な事情でシーズン14の放送途中
での鑑賞ということも有るので、今にして見るとこの島のリーダー
の持つ思想そのものが、カイトの心情に深く突き刺さるような主張
として伝わっていくと、カイトの特異なラストに於けるオチにも納得が
行く所が有ったのだろうなと思うと相当残念な流れがあるね。

そもそも日本の場合、民兵自体が認められていないのだろうし、
私有地の特性とか政務官のバックアップがあるとはいえ、銃器の使用や
所持そのものが認められていない現状では、民兵たちの自衛意識の
主張の大きさとは違って、妙にショボい人数で成り立つ民兵組織だな
としか感じられない。

爆破してなかったことにしよう的流れは官僚的っぽいところも
有るけど、せめて天然痘ウィルスの有無くらいは検査してから爆破
しても良いのだろうし、あれくらいの爆発で天然痘は本当に
消滅するのかって気がする。電源だって資金だって必要なのに、
結局この組織はそれを維持するために何をしようとしていたのか。

最後に右京が守るべきものとは何か、敵とは何かと語り合うシーンが
あるが、彼らにとってみれば自分らの思想を排除しようとするものは
敵とはみなさないのか。天然痘を来たるべき時のために保持しようと
しているが結局あんな孤島から何処に向けて使おうとしているのか
まるで分からない。

肝心のドラマ的相棒の内容では一人の男の殺人事件を扱った。
孤島での事件ということも有って、容易に外部との連絡が取れない
ロケーションという辺りはきな臭さは有って恐怖心などを煽るところ
も有るのだけど、捜査にいく段階でせめて衛星携帯くらいは自分たち
で持ち込んでも良いような気がする。
外に情報が漏れないようにする為に右京たちに捜査の妨害をしたり
もう少しホラーっぽい奇妙な流れが有っても良かったんだろうなと
思うと今時のドラマにしては演出的には物足りなさも有った。

そもそもここは私有地なので、リーダーの男が「アイルビーバック!」
と叫んだところで、地権者の若狭が神室のことを信用出来なくなった
時点でこの施設は閉鎖されるだろうし、今の日本が如何に平和ボケ
にサラされているとはいえ、逆に民兵たちにその図太い信念を貫かせ
るだけの過去の事情・事件というのがイマイチ存在していないところ
はどうも結束感に於いては弱いところを感じる。

蹄鉄の流れなど証明していくところは悪くは無いし、色々と手を変え
品を返して、神室の犯行の否定を再度証明しようとして繰り返す姿
が有るけど、殺し方の分析があくまで右京の想像に過ぎず、物証は
あるけど肝心の所で証明するだけの最後の一歩は自白頼みになって
しまっている感がするのは残念だった。

スパイの存在、モグラの存在など、本編の相棒でも疑われるような
ネタが盛り込まれることが有ったね。


杉下右京 …… 水谷豊 (警視庁・特命係)
月本幸子 …… 鈴木杏樹 (2代目"花の里")
神戸尊 …… 及川光博 (警部補・特命係、2代目相棒)
甲斐 享 …… 成宮寛貴 (3代目相棒)
伊丹憲一 …… 川原和久 (警視庁刑事部捜査第一課員)
芹沢慶二 …… 山中崇史 (捜査一課。伊丹の後輩)
三浦信輔 …… 大谷亮介 (警視庁刑事部捜査第一課員)
米沢守 …… 六角精児 (鑑識課)
角田六郎 …… 山西惇 (組織犯罪対策五課)
大木長十郎 …… 志水正義 (組織犯罪対策部)
小松真琴 …… 久保田龍吉 (組織犯罪対策部)
内村完爾 …… 片桐竜次 (警視長)
中園照生 …… 小野了 (警視正)
大河内春樹 …… 神保悟志 (警察庁長官官房室長)
甲斐 峯秋 …… 石坂浩二 (警察庁次長。警視監)
笛吹悦子 …… 真飛聖 (カイトの彼女、フライトアテンダント)

神室司 …… 伊原剛志 (民兵・リーダー)
高野志摩子 …… 釈由美子 (民兵・武器科)
丹波元史 …… 神尾佑 (民兵)
因幡義典 …… 金児憲史 (民兵)
相模太郎 …… 渡邉紘平 (民兵)
岩代純也 …… 瀬川亮 (即応予備自衛官)
三橋謙 …… 生島勇輝 (民兵)
柿沼秀喜 …… 中薗光博 (民兵)
岩代達也 …… 唐沢民賢 (純也の父)
岩代智子 …… 島かおり (純也の母)
松坂忠義 …… 嶋田久作 (防衛省・幕僚監部管理部長)
多賀周治 …… 渡辺大 (陸上自衛隊の特殊部隊)
桂浜泰三 …… 六平直政 (八丈島署の警察官)
栗山朔太郎 …… 吉田鋼太郎 (参議院議員・防衛大臣政務官)
綿貫孝雄 …… 風間トオル (防衛省・防衛政策局次長補佐)
若狭道彦 …… 宅麻伸 (若狭産業社長、鳳凰島の地権者)



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