韓国に亡命してきた北朝鮮国籍の男。実は二重スパイだったと
いう話。

二重スパイを題材にした映画は、これまで戦争映画の中には時折
扱われる内容。

このドラマの不利な点は、アクションシーンを一切排除している
点と、始めから二重スパイであり北朝鮮側の人間である事を
強調する事実関係が全て語られている点だ。

北朝鮮のスパイが僅か2年の間、韓国側のスパイ養成教官に従事
したからといって、重要機密を扱うことが出来る国家安全企画部
の部署に転属するというは何ともリアリティの無さを露呈している。

拷問シーンなどを通して一貫して亡命の意図を語ろうとはしない
強靱な意思の持ち主が思想教育の凄さを表しているものの、
ハン・ソッキュの中には何処か、大儀のために冷徹な人間になり
きれない人間性が垣間見れてしまう。

どの二重スパイものの映画も、大抵は監視の目が鋭く、行動を制限
される中での諜報活動なのだが、この映画では終盤に至るまで
そういった活動の緊迫感は一切無い。
ラスト周辺で突然ドラマが動き出すと言った感じで、高速で
動き出すシナリオのスピード感が、視聴者を混乱に陥れる。

北朝鮮から革命という使命を受けて来た男と、南で生まれ育った
北朝鮮の人間という関係の温度差は、面白い要素として存在して
いる。この要素を更に引き立たせるために、もう少しハン・ソッ
キュの中に冷徹さを持つ人間を描いて欲しかった。

評価：★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)