トータル・フィアーズ (2002年)

出演/ベン・アフレック、モーガン・フリーマン、ジェームズ・
クロムウェル、リーヴ・シュレイバー、アラン・ベイツ

トム・クランシー原作、ジャック・ライアンシリーズ映画化の第4弾。

記憶の残るところでは、「レッドオクトーバーを追え」でのライアン
の活躍が、今回の役柄と類似する点が多い。
名目ではアメリカに接近するロシアの軍人・戦艦・政府との心理戦で
あったが、背景には亡命したい艦長とロシアの情報引き出したい
アメリカの思惑が有った。相手の艦長とライアンは、既に面識が有っ
たし、彼の分析と行動力が、政治を影で掌握する展開となった。

「パトリオットゲーム」では、CIAアナリストを辞めてイギリスで海軍
兵学校教官をしていて、妻も子供も居る身。復職してIRAとの対決。
「今そこにある危機」では、復職した後、CIAの情報担当副長官の代行
として、麻薬撲滅の為に密売組織との対決だった。

今回のストーリーは、以前にも増してタイムリーなネタを取り上げ
現実に起こった驚異から映画の中でも引用している。

近年ハリウッド映画の傾向も少しずつ変化の兆しを見ることが出来
る。
仮想敵国としてロシアの地位が冷戦崩壊後には存在感を失ったこと。
そして世界貿易センタービル崩壊後、アメリカという国に忍び寄る
テロリストの驚異に対して、必ずしも無傷のままでは居られないと
いう心理的な圧迫感と現実とが描写の中に盛り込まれている事だ。

よりリアルに感じさせる事の背景には、やはりアメリカ同時多発
テロの影響が有るのだろう。あの時、テロに対して憤りを感じた事
と同時にテロリストに対する情報が瞬時に公開され、容疑者の
検挙が行われた事に驚きを感じた。映画の中のCIAの活躍のように、
水面下で働く諜報員の存在が有ったはずだ。

テロリストの驚異の中でも最悪の結果を生む要因は、この映画と
同様に核保有国から流出する核兵器の存在である。

映画の中でこれらがより悩ませる原因となっているのは、軍事力の
行使と言う名の持つ二面性だ。先制攻撃は、相手への攻撃であるも
のと同時に自国の防御の意味合いが含まれている。
冷戦時代、核使用に対する報復の連鎖の驚異によって、抑止力とし
て使われた核で有ったが、片方の均衡が崩れれば、その連鎖は感情
の入る間もなく、発動される。
そうした報復のオートマティズムが、テロリストにより偽装された
核の威力を増大させ、対極したアメリカ、ロシアだけの事ではなく、
問題を複雑化させている。

グローバリズム化した世の中に有って、一触即発の驚異を回避する
ためにも相手国に対して詳細な情報を得られるようになっているが、
この映画の上手い所は、そんな相手の情報や心理状況を知りすぎて
いる事での逆手に取った展開が行われることだ。

報復の連鎖、報復の為のプロセスが外交戦略のように戦略的なカー
ドとして使用され、段階的に引き上げられる。
両国の緊迫した情報がタイムリーに伝わる映画だからこそ、見る
ものを熱くさせる。


他にも色々と記述したい事があるが、長くなってしまった...
纏まらなくなってきたのでここらで"以下略"にしよう(´▽`;

最後に洒落たエンディングを是非見て欲しい(´ω`=)

爆発させる為のボタンを押すのは誰なのか。
アメリカ側(モーガン・フリーマン)と内密にコンタクトを取ってい
るロシア人の言動の癖。
金八先生で学校に籠城した加藤優が警察官に連行されて行くときに
流れた中島みゆきの「世情」を思い起こさせるエンディング。

こんな映画が日本で作られる日は来るのか...(・o・;)

核の爆風に巻き込まれて墜落するヘリコプターの怪については
大目に見て下さい(o゚▽゚)o

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