ア・フュー・グッドメン A Few Good Men |
--------------------------------------------------------
キューバのグアンタナモ海軍基地。9月6日の金曜日・・一人の男・サンティアゴ(Michael
DeLorenzo)が深夜、
口にテープをまかれて死亡した。加害者はドーソン兵長(ウォルフガング・バディソン)とその部下のダウニー
(ジェームズ・マーシャル)。ワシントン法務監本部では、ギャロウェイ少佐(デミ・ムーア)が、この事件の
報告をする事となった。
被害者のサンティアゴ・ウィリー1等兵は、グアンタナモ海軍基地のライフル中隊・第2小隊に属している若者。
加害者とは逆にウィリーはこの小隊の中でも、とくに群を抜くほどの落伍兵であり、ウィリーは、この師団
から自ら転属を申し出ていたのだが許可されず、部隊長、軍司令官そして議員宛に懇願書を提出していたの
だった。その手紙の中には、転属に関する事とは別に、この小隊で行われた違法な行為(ドーソン兵長がキュ
ーバに向け違法発砲をした事)が記されていた。
ギャロウェイはこの裁判に関して、原告のドーソン兵長とダウニー1等兵をニューヨークへ移し、自ら弁護人とし
て任命してくれるよう上官に頼むのだった。しかし、師団の中にも適任者が居るとして許可されなかった。
その男の名は、ダニエル・キャフィ中尉(トム・クルーズ)。ハーバート大学で法を専攻し、2年で3件の弁護を
行ったという期待の若者であった。
任命の通知が渡る頃、キャフィは近く大会が行われる野球に夢中だった。
キャフィは任務の正確を期するため補助弁護人を付け、早速水曜日には現場のキューバに飛んで調査をする
事を命じられる。そしてその任務に就く前に、ギャロウェイ少佐に逢うよう言われるのだった。
ギャロウェイの元を訪れると、リンゴを囓りながら、彼女に自己紹介をするキャフィ。ここ9カ月間で44の事件を
事前取引に成功している事を得意げな顔をして語る。
そんな彼にギャロウェイは、キューバでのスケジュールを示唆し、現地でジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)
に逢うよう指示した。大佐は近々国家安全保障会議のメンバーになると言われるほどの大物。大佐自身、
長期の捜査は保障メンバーの恥になるとして早期解決を望んでいた。
出発の前日、ギャロウェイはキャフィの元を訪れると、全く捜査に関して危機感の無い事に呆れ返った。
彼は本気で被告を弁護する気があるのか・・・いい加減な取引で2人を無用に刑務所に送らないでよと、彼女
は彼にカツを入れるのだった。
彼女は、この2人は無実だと確信していた。その背景には”コードR”の存在があったからである。その言葉を
聞くと、キャフィは今までの自分が確証していた事実とは全く違う事を痛感し、ようやく捜査に乗り出した。
軍医の話では、死因は急性乳酸血症・・口の中に押し込まれた毒が原因であるという・・死亡時刻はAM1時。
しかしAM3時にはまだ死因は不明となっている事に気がついた。
キャフィは、被告の2人に事情を聞きに行く。”コードR”とは規律の遵守。道を外した隊員を元に戻すことであ
ると聞かされた。更にこの”コードR”がサンティアゴにも適用されていたのかを聞くと、彼は指揮系統を破り、
外部に通訴したことを話したのだった。
果たしてこの事件の真相は如何に・・!?
--------------------------------------------------------
一つの事実により展開が有利になったり、時には絶望的なまでに落ち込む裁判もの。
テンポの良い展開、そして若者が仲間に支えられながら、上官に立ち向かうその姿勢は圧巻。
なかなか面白い映画です。裁判といっても難しい語録や難しい展開になるわけでもないし、展開自体が
流れるように進んでいくので見ていて飽きないですねー。
当初、またしてもトム・クルーズ(Tom Cruise)やデミ・ムーア(Demi Moore)お得意の映画なのか
とゲンナリしたのですが、ストーリーが進むに従い、意外と嫌みっぽさが前面に出ていなくて良かったと思い
ます。
トム・クルーズ/キャフィは、親が名のある海軍法務官から司法長官にまでのし上がったという法廷弁護人。
7年前に死去してしまったのだけど、それまで数々の訴訟を勝訴に持ち込んだ敏腕ぶりを見せていたという
弁護士としてもかなり優秀な設定です。
そしてキャフィ自身は今まで有る程度、親が望むような進路を歩み、ハーバート大学を出た後、3年間海軍に
所属し、そして現在の位置に落ち着いているという経歴の持ち主で、実際法廷で今回のような裁判を経験し
た事は無いのだけど、今まで数々の事前の取引に成功している実績のある将来有望な若者の一人です。
これだけを聞いても、やっぱりトム・クルーズ的ですよね(^^; 実力・潜在的な能力はあるんだけど、
おちゃらけていて普段はなかなか見せようとはせずに、いざと言うときにはなんでもこなしてしまうという・・・
この映画でも導入部は確かにそんな感じなんだけど、意外と挫折し苦悩するシーンなど、セリフも冴えていて
演技も違和感無くハマって居た感じです。
(まぁ、でもあの大佐を相手に裁判経験の無い男が勝利してしまう時点でトム・クルーズですけどね(^^;)
一方デミ・ムーア/ギャロウェイは、内務調査部という公平に仕事をしているのかを監視したり、それを調査
する機関に一年前就任した事になっているのですが、この事件では、自ら弁護人として立候補して調査をし
ようとします。
裁判は単純に言って、殺したのは被告の2人であり、その事実を包み隠さず視聴者に報告しているという
ある意味珍しい展開のストーリーですが、この殺害というのが上司の命令で行ったのかと言うことに焦点が
当たっています。彼らの働いている基地は、位置的にも対立している国・キューバと隣接しているところに
あり、規律を厳守しなければ、それこそ仲間そして国を守ることが出来ない事情が有ります。ここの上官は
かつてベトナムなども経験して、上司の命令は絶対ということを厳守しているのです。
そこで上官のジョセップ大佐の経験から行われているのが、”コードR”。端的に言って強制的な更正させる
ための治療・荒行事のようなものなのだけど、これが上官から一定の人に出されれば、部下は黙って更正さ
せるために一致団結してしつけなければなりません。
この映画の中でも特に良かったのが、セリフを上手く反覆させることで気の利いたセリフに仕立てて映画を
面白くしている事ですかねー(^^;幾つもの場面があるのですが、例えば裁判の席で、大佐を審問する時に、
大佐はキャフィが反駁した事に怒って、自分を呼ぶときは”大佐”か”サー”という敬意を表す言葉を付けさせ
ろ!と怒鳴るのですが、裁判官も大佐の法廷での無礼な振る舞いに、”私はここの裁判長”だ!と威厳をみ
せる場面があったりとなかなか見ていると面白い場面が有りました。
また、当然の事ながら言葉の持つ重み、証言により発言された言葉が後々になって重要になってくる場面が
多い為、視聴者も気が抜けません。
更にキューバの基地にいたマシュー中佐の存在が良かったです。
一度証人として証言を仰ぎたい時に失踪してしまうのですが、彼は17年間対謀報機関に属していたため
絶対見つからないよとか言われるのですが、あるとき突然必要になったとき、突然車の後部座席ひょっこりと
顔をみせたりして、スパイ映画のようでした。
確か本作は、アカデミー賞の作品賞にノミネートされたほどの映画ですね。92年の作品賞というと・・・
『許されざるもの』(’92原題Unforgiven)が受賞しているのですが、うーん(^^; どっちも良かった作品なので
甲乙付けがたいですね。
しかし、映画で最も良かったのが、ジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)の演技だと思いますー
あの2人のラストの激論を見たらケビン・ベーコン(kevin Bacon)も割って入れる余地は無さそうですね(^^;
そもそも人一人を殺してしまったというのにも関わらず、平然と威厳を保ち続けるのには、ジャック・ニコル
ソンのような有る意味強面で、力のこもった演技派の俳優が必要だったと思います。
締まりが出たのはまさに、彼の演技によるところでした。。
映画の制作費は4000万ドル。
余談ですが、原題は素晴らしいものがありますが、邦題の『ア・フュー・グッドメン』って言いづらくないですか?
(^^; 折角ならもうちょっと気の利いた邦題を考えれば良いのになぁー。
メモ)裁判の経過 被害者サンティアゴ・・9/6AM1:00死亡。乳酸血症による死亡が原因。
ドーソン兵長・・私は無実だ。会合が有った後、自分たちの部屋にケンドリック中尉がやって来て
被害者にコードRを適用する事を命令された。
ダウニー1等兵・・コードRは、ジェセップ大佐から下されたもの。我々は無実である。
ジョセップ大佐・・”コードR”など存在しない。サンティアゴは次の日の1番機で転属させる命令をだした。
・検察側証言1(マグアイアーの話し) 9/3にサンティアゴから手紙を渡された。その内容に
従ってドーソン兵長の銃を調べたら発砲の跡があった。
・証言2(カールハマカー伍長) 9/5には確かに会合が開かれた・・内容は仲間に密告者が居た
ということ。しかし中尉は決してサンティアゴに手を出すなと言った。
・証言3(軍医Dr.ストーン) 被害者は0時12分に発見、病室にて0時37分に死亡を確認。
乳酸血症による死因。しかし検死の結果毒の検出はなかった。検死で発見されない毒で
死んだ事例は幾つもある。乳酸血症の症状が出るのは、毒以外だと冠動脈か大脳に疾患が
ある場合のみである。2つの場合検診ではなかなかその病状を見つけることは出来ない。
・被告反対弁論 被害者は、訓練中に胸の痛みや息切れ、疲労を訴えていた。訓練で力が出せない
のはそのせいではないか? 毒だというのは誤診では?
・証言4(バーンズ伍長) ”コードR”の存在。サンティアゴに”コードR”を適用されていたのか?
それは無い。全てドーソン兵長が彼をかばっていた。
<マシュー中佐と遭遇>・・サンティアゴに転属命令は出ていない。転属命令書は自分が死後作成
したもの。裁判で彼らの弁護をする。
・証言5(ケンドリック中尉)サンティアゴの成績は落第。ドーソン兵長は模範兵である。
過去に落第点を出している日があるが、これは命令を破ったからである。
命令とは・・酒を盗んだ兵士を断食させた事に対し彼は裏で食料を与えていた。
これがいわゆる”コードR”なのでは?・・断じて違う。
・証言6(ダウニー1等兵) 中尉からコードRの命令で部屋を訪れた。当日16時20分に命令された。
・検察側反対弁論 当日のダウニー1等兵は、通常の兵舎ではなく現場からジープで1時間かかる
場所で行われていた。勤務は16時までなのに20分に命令を受けたのはおかしい。
<マシュー中佐、手紙を残して自殺>
・証言7(ジェセップ大佐) 朝1番の飛行機でサンティアゴを転属させようとした。
落伍兵、そして密告者を同じ師団に置くと、彼の身の危険にも繋がる。
・被告側 サンティアゴの部屋を見た限り、荷造りをした形跡が無かった。また通話記録を調べたが
あれほど懇願していた転属が決まったのに何処に電話をした後も無かった。普通朝1番
の便だと分かれば前日に荷造りをしておくのでは?
・大佐側 彼の旅の習慣などしらん。そんな事を話すためにここに呼び出したのか?
・被告側 先ほど転属させる事をいっていたが、あなたが命令したのならば身の危険など起こらない
のでは? 命令は絶対のはず・・・
トム・クルーズ
(ダニエルキャフィ中尉/1962年ボストン生まれ、ハーバート大学卒業) ジャック・ニコルソン (ジェセップ大佐/キューバグアンタナモ海軍基地) デミ・ムーア (ギャロウェイ少佐/内務調査部) キーファー・サザーランド (ジョナサンケンドリック中尉/小隊長) ケビン・ベーコン (ジャックロス/国側の弁護人) ケビン・ポラック (サム/キャフィの補佐) ウォルフガング・バディソン(ハロルドドーソン兵長/被告) ジェームズ・マーシャル (ダウニー1等兵/ドーソンの部下) クリストファー・ゲスト (ストーン医師/検死官) J.T ウォルシュ (マーキンソン(マシュー)中佐/大佐と同期) J.A プレストン (ランドルフ) Michael DeLorenzo (サンティアゴ1等兵/被害者) 評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0) |
|