愛と哀しみの果て Out of Africa |
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サファリに蓄音機と携帯、猟銃3丁と一ヶ月分の食料・・・そしてモーツァルト・・・
デンマークで富豪たちが集まり、狩猟を嗜む。そして、その打ち上げの席で女は男に声をかけるのが定例に
なっていた。
女性は恋人だと思われる男性にパーティーへ行く事を半ば催促するが、急に行く気が失せたと気のない返事。
この言葉には、女性に対する愛情の無さを示していた。
男の弟ブリクセン男爵/ブロル(クラウス・マリア・ブランダウアー)は、この女性・カレン・ディネーセン
(メリル・ストリープ)嬢に声をかける。しかしその言葉とは”君の興味は彼自身でなく男爵夫人になることだ”と
いう忠告にも似た事だった。的を得た言葉に少し焦りの顔をするが、すぐに切り返してブロルに求婚を迫るの
だった。このままこの土地に居ては、結婚を逃した”オールドミス”と言われるだけ・・それだけは避けたい事
のようで、好きでも無い男に求婚したのである。
目の前の男性ブロルは名家であるものの、豪遊や事業で失敗し、今や文無しの状態だった。
その事を知るカレンは、資産のある自分と結婚すれば利害は一致するものとして、一緒になって共にこの土地
を出て行くことを提案した。カレンの家にはアフリカに所有する広大な土地がある事を告げて・・・
1913年東アフリカ・ケニア。カレンは一人、汽車に乗っていた。汽車の貨物には、彼女の家財道具・数々の
陶器の品物が積み込まれており、夫になるはずのブロルが待つナイロビへのほんの僅かな一人旅である。
すると突然駅でもないところで汽車が止まったと思うと、イギリス人風の男が馬に乗り、汽車を止めて荷物(象
牙)を積み込んでいた。ここでは当たり前のことでもカレンにとっては信じられない事。そんな土地柄に戸惑い
つつも、汽車は駅へと到着する。そこにはブロルではなく、メイドのファラ・アデン(マリク・ボーウェンズ)が待っ
ていた。そんなファラにブロルの居所を聞き出すと、彼の待つ”ムセイガ”に行くことにした。しかし、そこは女子
禁制の酒場。知らずに踏み込もうとするとバーテンの男がカレンの行く手を制した。仕方なく外に出ようとする
と、奥からブロルが出てくるのだった。
結婚式は一時間後。全てを彼に任せていた為に、急な知らせに驚く暇もなく、旅の話しをする間も当然無かっ
た。急いで着替えるとベルフィールド総督らが待つ式場へと足を運んだ。
簡単なスピーチの元、正式に夫婦としての関係が成立し、式場に集まった人たちに挨拶をしていく。しかし退屈
そうにしていると、フェリシティが声をかけて来た。雑談をしていると、ブロルが若い女性(ビッキー)と親しげに
話しているのが目に付き、割り込むように話し掛ける。彼女らから彼を遠ざけるために、自分たちの家を
見たいと話した。しかしそれはここから馬車で2時間かかるということで、取りあえずは先ほどの酒場の有る
”ムセイガ”の中のホテルへ着替えに戻る事にした。そのホテルで開いている部屋の一室から先ほど汽車に
積み込まれていた象牙が有ることに気がついた。
暫くその象牙に見とれていると、後ろからバークレー・コール(マイケル・キッチン)が話し掛けてくる。彼は商人
であり、先ほどのイギリス風の男・デニス・ハットン(ロバート・レッドフォード)からこの商品を買い取った事を
知ったのだった。
新居へ。早速、ここの農園の管理を担当するベルナップや料理を担当するエザ、ハウスボーイのジュマを
紹介されて家の中へ入る。そして今後の事についてブロルと話し合うと、彼は当初の目的である乳牛の飼育で
は無く、コーヒーの栽培をしようとしている事を聞かされた。実家の母親からは、乳牛を目的とする事で、資金
を援助して貰ったことを話すが、聞く耳を持たないブロル。平行線を辿る話し合いにカレンは仕方なく折れる
ことにした。しかし、このアフリカの高地でコーヒーの栽培をする事は不可能であると、地元の民は口を揃えて
話していた。更に収穫には最低3、4年かかるとと言われると、カレンは頭を抱えるのだった。
果たして、アフリカの土地でどのような生活をおくることに事になるのか・・
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アカデミー賞7部門を受賞した話題作。
主演の俳優には、メリル・ストリープ(Meryl Streep)、ロバート・レッドフォード(Robert
Redford)の演技派俳優
に、シドニー・ポラック(Sydney Pollack)監督は如何に味付けするのか!?
アフリカの広大な土地を利用した壮大な自然と野生の動物は、映画の演出にかなり貢献している。
うーん、面白かったようなよく分からないような・・
いろんな愛の形やら生き方というものを見せられたような気がするのだけど、何をしたいのかがイマイチ伝わ
りづらい映画でした。
広大な不毛な土地を開拓していくという映画に、ジェシカ・ラング(Jessica Lange)主演『開拓/オー・パイオ
ニア』(1992 O Pioneers!(TV MOVIE))という面白い映画があったのですが、これは単純明快で実に分かり
やすかったのですが、この映画の背景には戦争(イギリスVSドイツ)とか植民地政策といったものをチラつか
せているものの、イマイチはっきりしないものがあったし、原住民・部族だとか、土地勘を多少必要とする事が
セリフの中にあった事が分かりづらかった要因なのかなぁーと思っています。
メリル・ストリープ/カレンは、凄く強い女性で、始めてスクリーンに出てきたときには嫌な 性格の持ち主かと思えば、人一倍寂しがりやの女性で愛に飢えていたような部分があるん ですよね。 それ故に夫であるブロルの言うがままに、当初の予定である乳牛からコーヒーの栽培をつ くって生計を立てていこうとするのですが・・このブロルがとんでもない男です(T_T) カレンの お金を食い尽くして、後々離婚して新たに金持ちの女性と結婚するのですから・・・ |
やっぱりこんな夫だとしても、社会的に有る程度の位を持つ男性を夫として迎えていないと世間的にも認めら
れない時代背景だったのでしょうか・・ ケイト・ウィンスレット(Kate
Winslet)が出演した『いつか晴れた
日に』(1995 Sence and
Sensibility)などでも女性に対する社会的な地位が低くて、苦労した例がありますね。
実際一人で生きようとすればアフリカでもどこでも生きられる女性なのですが(前線に戦に出たブロルの元
に、自ら援助物資を届けた事でも芯の強さが出ていますね)、やはり寂しさには勝てないという繊細な面を持
っている事がネックとなっています。また、フェリシティからは悩みをうち明けられるほど人望を集めています。
それが最も現れたのが、原住民との触れあいの場面でもありますね。
怪我をした子供を診てあげたり、最後の別れ際まで、片時も離れなかったファラ・アデンを見ているといかに
素晴らしい人だかが分かります。
これほど困難に冷静沈着に対応する強い女性ならば、こんなつまらない男性と結ばれることは無かったのに
なぁーと。彼女を見ていると地位とかそういったものは関係無いもののように映っているので、なんだかブロル
とは不思議な関係ですよね。あれだけ家庭を顧みず、自分の好き勝手放題、仕事もせず狩りなどに興じて
いるのを見ても、「愛している」なんて言ったりして、非常に都合が良すぎます。
別れるときも結構サッパリした感じがありましたね。
冒険家のデニス・ハットンを演じたロバート・レッドフォードですが、これまた美味しい役だ なぁーと感じます。 最後、破産になったカレンが、”あなたが私を養ってくれるの?”とい ったときに、普通は引き留めるようなコメントを出しますね。あれだけ、近づいた関係で 居たのに、何故労りの言葉などが出なかったのだろうか・・・と。同情では無く、恩という 形ででもそんな言葉が出るような気がするのですが・・意外と見ていると自分勝手な性格 だと思います。”君から自由を奪うような事を私はいったか?”と、好きなだけでは一緒に 居られないという難しい問題を定義してきます。 好きで生き甲斐でもあるサファリの仕事をする彼を引き留めるのが、果たして自分勝手 な行動になるのか、また彼の事を思って自由に仕事をさせてあげるのが良いのか、とて も難しい選択です。 |
また、映画での面白いところは、時代の流れがとてもよく見られる所でしょうか。
始めカレンがアフリカを訪れたときは、馬車で移動していたところを、梅毒にかかり一度実家のデンマークに
帰郷し静養したのち再び訪れると、車が移動しているんですよね。また駅前や町並みも微妙ながら発展して
いたりして・・・次第に飛行機が飛ぶようになり、映画でも重要なアイテムとなる携帯用の蓄音機が聞こえるよ
うになったりして、そんなところに注目してみると面白いかもしれません。
この映画のオーディションの時、メリル・ストリープは結構大胆に胸の辺りが開いたドレスを着ていったそうで
す。本人は後のコメントの中で、”ラブストーリーだと言うことを知っていたので、わざと魅力的な格好で行った。
見事私の作戦に引っかかったわ”と笑っているのを見たことがあります。
また、なんといってもこの映画では、トラやライオンのシーンですよね。
特に凄いのが、ライオンを相手に自分の家畜が襲われたときにムチで追い払うシーンでは無いでしょうか(^^;
面白い裏話があるのですが、あのライオンは元々カリフォルニアのライオンで鎖に繋がれていたのだけど、
ムチを叩くとお座りしてしまう大人しいライオンだったので、本番は監督が内緒で鎖を外して撮影をしたそうで
す。
またアフリカでの撮影許可が政府から出ないのでとても時間がかかり、撮影自体は6カ月間の滞在だったと
いう事が語られています。
シドニー・ポラック監督とロバート・レッドフォードのコンビは結構古くからのものなので息がピッタリ。
少し長い映画ですが、なかなか面白いので是非。
作家アイザック・ディネーセンの回想録『アフリカの日々』
ジュディス・サーマン著『物語作者の生涯』、デニス・ハットンの伝記『沈黙がしゃべるだろう』を映画化。
原作は何度も映画化の話が持ち上がったものの、長すぎてなかなか出来なかったものを
シドニー・ポラック監督が映画化。
全撮影101日中、メリルストリープは99日間現場に出向した力作。
アカデミー賞 作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞
美術監督装置賞、音響賞 受賞作品
メリル・ストリープ (カレン・ディネーセン/デンマーク出身) ロバート・レッドフォード (デニスハットン/冒険家) クラウス・マリア・ブランダウアー(ブリクラン(ブロル)男爵/カレンの夫/スウェーデン出身) マイケル・キッチン (バークコール/商人) スザンナ・ハミルトン (フェリシティ) マリク・ボーウェンズ (ファラアデン/メイド) マイク・A・バーゴス (ジュマ/ハウスボーイ) 評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0) |
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