悪魔のような女 Les
Diaboliques 1955 France 107mins 監督・製作・脚本 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 原作 ピエール・ポワロー、トマ・ナルスジャック 脚本 ジェローム・ジェローミ 撮影 アルマン・ティラール 音楽 ジョルジュ・ヴァン・パリス 出演 ポール・ムーリス、ヴェラ・クルーゾー、シモーヌ・シニョリ、シャルル・ヴァネル |
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パリ近郊にある私立デュラサール学園/寄宿学校。そこに校長のミシェル(ポール・ルーリス)が車に乗って
やってきた。彼の世話役が門を開けると、学園内へと車を乗り入れる。するとその時、丁度授業の終わりを
示す終業の鐘が鳴り響いた。生徒達は教室から一斉に飛び出してくる。一日の授業が終わったこともあるが、
明日から三日間の休日と言うこともあって子供達ははやる気持ちを抑えられなかったのである。生徒達からは
少し遅れて、この学校の教師の一人であるニコル(シモーヌ・シニョレ)が出てきた。彼女の顔には何かを隠す
かのようにサングラスをしており、不自然に思ったベテランの教師であるドラン(Pierre
Larquey)やレイモンド
(Michel
Serrault)はその原因を尋ねた。彼女は壁にぶつけて痣が出来たと言うが、何処か落ち着かない様子。
更にこの学園の出資者であり、校長ミシェルの妻であるクリスティーナ(ヴェラ・クルーゾー)がやってくる。
彼女はニコル以外には聞こえない位の小声で、そのサングラスの下の酷い痣の原因を訪ねた。すると
クリスティーナの夫、ミシェルに殴られた事を素直に話し出すのだった。この学園では公認の事だが、クリステ
ィーナとミシェル、そしてニコルの間には不思議な三角関係が出来ていた。妻のクリスティーナがありながらも
夫のミシェルはニコルとの不倫/愛人関係にあったのである。しかもその二人は、始めこそ互いに仲が悪かっ
たものの、何時の頃からか悩みをうち明ける仲となっていた。昨日ミシェルがニコルに暴力をふるった背景に
は、ニコルが午前様で帰宅した事があった。女好きの彼にニコルがしつこく迫った結果殴られたのである。
ニコルはクリスティーナに見せたいものがあると言うと、理科実験室の方へと連れていく。そこでニコルが取り
出したものとは、強力な睡眠薬だった。二人はなにやら耳打ちをし、良からぬ事を企むのだった。そこにミシェ
ルがやってくる。相変わらず非紳士的な態度を取る彼の行動は目に剰るものがあった。しかしそんな彼でも、
クリスティーナに取って離婚する事はそれ以上の罪の意識があったのである。元々僧侶の娘として育った
彼女は、夫がどんな行動を取ろうとも離婚を考えることが出来なかったのだった。例えそれは、彼女の資産を
無駄に使い込んでいたとしても・・・
夕食の為、食堂に一同が集まる。しかし経費の節約のため、食事は質素で、今日の夜食のおかずは、昨晩
の残り物の魚料理に酢を振りかけただけのものだった。あまりの不味さにクリスティーナは思わず吐き出し
そうになる。すると、ミシェルは生徒の前だから率先して食べなさいと、吐き出すことを許さなかった。泣き
ながらなんとか押し込むように飲み込むが・・・・クリスティーナは、育ち盛りの子供に酷い食事を与えるのは
許せないとミシェルに抗議した。資産の中から必要な経費を出すのは良いとしても、生徒の事だけは優先して
欲しいと頼んだ。しかし、彼は冷ややかな態度を見せる。そんな彼の態度に、思わずクリスティーナは”死んで
しまいたい”事を漏らすが、その言葉さえも彼は聞き逃さず、その方が助かると悪態をつくのだった。
クリスティーナは翌日早朝に、ニコルと共に彼女の実家メーン郡にあるニオールに向かった。ニコルは、先日
計画したとおり大きな葛籠を車に積んでいた。この学園からは約10時間の道、ようやくニオールに着いた。
早速本番に備えて、ワインとテーブルクロスを購入し、ワインの中に睡眠薬を混入させた。そして学校に居る
ミシェルに電話をかけた。クリスティーナが離婚するという事を口にすると、案の定話し合いがしたいと
汽車で今直ぐにこちらに来ると言う。待つ間に、浴槽に水を張るのだが・・・その水を入れる音が実に生々しく、
クリスティーナはこの計画から降りようとする。しかしニコルに上手いこと言いくるめられついに決心した。
計画では、ミシェルが眠ったところで浴槽に連れていき、一日押さえつけて溺死させるというもの。死体を
翌日には学校のプールに運び入れ、自分たちはこのニオールに居たというアリバイをつくって切り抜けると
いうものだった。
家の外から彼のものだと思われる足音が聞こえてくる・・・果たして、その殺人計画は成功するのか!?
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女好きで暴力を振るう校長のミシェルを、妻クリスティーナと愛人のニコルは計画的に殺そうとする。
アリバイをつくり、睡眠薬を使って寝ている間に溺死させるというもの。利害の一致した二人は協力して殺害
するのだが・・・・
アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)監督がこの作品に触発され『サイコ』(’60原題Psyco)を作った
とされる作品。後に、ジョン・バダム(John Badham)監督に72年にリメイクされ、更にハリウッド映画として
96年、シャロン・ストーン(Sharon Stone)、イザベル・アジャーニ(Isabelle Adjani)、チャズ・パルミンテリ
(Chazz Palminteri)が出演して映画化された作品です。
うーん、96年度版とはエンディングが全然違うのですね(^^;
魅せるための細かい演出が実にヒッチコックっぽく、彼に影響を与えたというのがよく分かります。
96年度版では子役アダム・ハン=バード(Adam Hann−Byrd)の役がイマイチ活かされていなかったの
ですが、この作品ではその役(モネ少年)は、ラストでキラリと光るものを感じます。
逆にリメイク版と比べると、女性間の複雑な思いというものが省略されていて、全てはラストに向けて
の演出だったという事も、また興味深いものです。
要所要所の展開は全くと言っても良いほど同じです。軽くリメイク版とのキャラクターの違いを説明する
と、なんとシャロン・ストーンの演じた愛人役は、少し浮いていたような感じを受けましたが、本作品でも
あの時のシャロン・ストーンと髪型などは一緒の女性が出演しています。気の強そうな所も一緒なのです
が、やっぱりシャロンの様な浮きすぎていたという印象は無いですね。
また、イザベル・アジャーニが演じた気の弱そうな心臓に病を持つ妻の役。これは、どちらが演じても
変わりがつとまるくらい雰囲気は似ていました。
当然あのお節介おばちゃんを演じた探偵のヴォーカル(キャシー・ベイツ(Kathy Bates))は、ここでは
男性の探偵(元警視)のシャルル・ヴァネル(Charles Vanel)が演じています。本作品では、少し他人の
領域に土足で踏み込み過ぎる感じの探偵ですが、ラストで美味しい所を持っていきます。ただキャシー・
ベイツよりも実質的な捜査シーンが短縮されていた印象を受けます。ニコルの実家のほうまで捜査の手
が及ばないし(ベイツだとあそこで酒瓶やら浴槽の跡をみたり、管理している夫人に証言を聞きに行った
りするのですが)、あの葛籠でホースを見つけるという重要なアイテムが出てきませんでした。
憎たらしさ爆発の校長役。これも、どちらとも及第点の役者さんだったと思います。あの食事時に妻の
クリスティーナに無理矢理食事を食べさせるところも一緒(笑) ただ、妻のクリスティーナをいたぶる
シーンというのが、これくらいしか無いです。元々、映画の前提としてクリスティーナを散々いたぶって
いたというものが有るみたいですね。(チャズ・パルミンテリの時には、浴槽で倒れたアジャーニの事を
放っておく非情なシーンがあるのです。少しサービスカットでは有りましたが(^^;)
映画の魅せる部分というのが全体的に違うような感じで・・・具体的に書きたいのですが、ラストは、
クレジットにもあるように”友人には内容を教えてはならない”作品との事なので書けません(^^;
ただ一つだけ言えば、本作品では妻を殺そうとしていたのに対し、どちらかというと96年度版は追い
出そうとしていたこと。
この映画では途中で映画館への入退場をさせなかったという事ですが、『サイコ』の時ヒッチコックが
これと同様な事をやったそうですね。
ただ一つ、リメイク版の方が良かったと思う演出。
校長が生きていることを臭わせ、怖がらせるという演出の一つで、スーツのアイテムをどちらとも効果的
に使用しているのですが、スーツが見つかった時の演出がリメイク版の方が怖かったです。
ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)の『愛がこわれるとき』(’90原題Sleeping with the Enemy)で、夫から
逃れる為に、死を偽装して逃げましたが、彼がロバーツの居る街を見つけてこの場所にいるという事を
知らしめるために、家の中に雑に置いてある荷物をさり気なく片付けておくという手を使っているのです
よね。96年度版でも戸棚にスーツが片付けられて何かを仕込んでいたという演出で生きている事をアピ
ールしたように思います。この辺は意外とあっさりしていました。
線グラフで例えるなら、本作は最後まで右肩上がりなのに対し、リメイク版では最後までは徐々に
上がっているのだけど、ラスト辺りはずっと横ばいという印象を受けました。
ポール・ルーリス (ミシェル・デュラサール/校長) 金持ちのクリスティーナと結婚して校長の座を得る。 ヴェラ・クルーゾー (クリスティーナ・デュラサール/妻) 夫の暴力と浮気に悩まされる。心臓に爆弾を抱える。 シモーヌ・シニョレ (ニコル・オネール/教師) ミシェルの愛人。しかし暴力を受けている? シャルル・ヴァネル (フィシェ/探偵) 死体安置所でクリスティーナを見つけ声をかける。 ジャン・ブロシャール (プランティボー) Pierre Larquey (ドラン/教師) ワイン好きな教師。 Michel Serrault (レイモン/教師) ひげ。 Jacques Varennes (ブリドー教授) 心臓病の専門医。 Yves-Marie Maurier (モネ/生徒) 死んだハズの校長から罰を受けた生徒。 Jean Lefebvre (ロベール/酔った軍人) 酔ってヒッチハイクし、車に乗り込もうとする。 Robert Dalbau (G.Sの人) Therese Dorny (アーヴィー妻) ニコルのアパートの2階に住んでいる。 Noel Roquevert (アーヴィー夫) (パスカル/生徒) (パタール/生徒) (ベルドー弁護士) 評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0) |
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