アメリカン・グラフィティ American Graffiti
1973 America
監督 ジョージ・ルーカス 製作 フランシス・F・コッポラ、ゲイリー・カーツ
脚本 ジョージ・ルーカス、グロリア・カッツ、ウィラード・ハイク
撮影 ロン・イヴスレイジ、ジョン・ダルクイン 編集 ヴァーナ・フィールズ
出演 リチャード・ドレイファス、ロン・ハワード、ポール・ルマット、チャールズ・マーティン・スミス




 

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 1962年カリフォルニア州北部の小さな街。
 出発する前の最後の晩、カート・ヘンダーソン(リチャード・ドレイファス)は、皆が集まる喫茶店”MELS DRIVE-
 IN”へと足を運ぶ。店の外からは煌々と照らされる店内からの明かりと、客からの注文を受け、忙しなく働く
 ウェイトレスの姿が目に付く。若者たちは車で集まって仲間と合流し、ここで食事を取ったり、ジェークボックス
 から流れる音楽を聞きにきたりして、それぞれの時間を満喫する。
 カートは先日地元のターロック高校を卒業し、明日から東部の大学へ進学の道へと歩もうとしていた。
 この街では今年から成績優秀者に対し、ムース会という組織から大学進学する若者の為に奨学金制度が
 設けられ、なんとカートは第1号としてその選考を見事クリアし、2000ドルを得ていたのである。街ぐるみで
 未来有望な若者たちに、期待を寄せていた。

 次第と辺りが暗くなるに連れ、次々と顔見知りの仲間が集まってくる。
 中でもカートは、スティーブ(ロン・ハワード)ジョン(ポール・デ・マット)テリー(チャールズ・マーティン・スミス)
 とはよく行動を共にし、親友同士である。
 既に出発が明日となった今でもカートは態度を決めかねており、その事を友人たちにも告げた。
 このまま居座っていても、この小さな街では決して大きな成功はあり得ない。それは、今尚卒業してもこの街に
 屯している若者を見れば一目瞭然であった。

 ジョンは、カートたちよりも年上。街の車の整備工として働いていた。街を脱出する機会を未だ見いだせないで
 いる一人である。彼は自分の車を改造し、この街でスピードに関しては誰にも負けない事を自負していた。
 新顔の男が現れると、必ず手合わせし、自分の存在を見せつけるのが彼の性分でもある。
 しかし最近は、街で屯する若者にも覇気がなく、街全体に活気がない事を懸念していた。

 スティーブは、カートと共にこの街を脱出する事が決まっている一人。取りあえずは、クリスマスまでの数ヶ月の
 間、この街から出て進学する事が決定していた。昨年まではターロック高校で生徒会会長まで務めていた彼
 は、事有る毎にスティーブにも、街を出る事を話していた。

 彼はカートの妹ローリー(シンディ・ウィリアムス)と恋人同士である。彼女は今年、高校の
 チア・リーダーを勤め、人望も厚く、高校では2人をBESTカップルとして見ていた。しかし
 スティーブは、車の中で彼女にある事を告げようとしていた。街を出た後の2人の関係・・・
 スティーブは、遠い地で別々に生活する2人が、恋人という鎖で縛られる事に難色を示し、
 恋愛の自由を告げたのである。ローリーは、メルズ・ドライブインで購入したポテトとチェリ
 ーコークを飲みつつ、その話しを聞いていた。そして恰もその話しを当然の事のように受
 け取り、平然とした態度を取ったのだった。そして首からぶら下げている彼にもらったネッ
 クレスを外してしまうのだった。
 

 テリーは、年上のウェイトレス・ブダー(Jana Bellan)に声を掛けていた。
 テリーには自分の車を所有しておらず、ここまでスクーターに乗ってやってきたのであるが、不器用なあまり
 スクーターさえ乗りこなせないでいた。しかしスティーブがクリスマスまでの2週間の間、この街を離れるという
 事で、彼の車を借り受けていたのである。しかしブダーからは色好い返事をもらうことは出来なかった。

 スティーブとカートは、これから、学校の講堂での新入生歓迎ダンスパーティーに出席しようとしていた。
 しかしそんな事はガキがやる事だとへそを曲げるのは、仲間でも先輩格であるジョンだった。

 スティーブとカート、ローリーは学校へ向かうため車に乗り込み、街を走り始める。すると信号待ちをしている
 時に、隣り合った車の中に、絶世のブロンドの美女が乗っていたのを見かける。彼女を見ると、カートに何か
 語りかけた様。しかし当然その言葉を聞き取れるハズもなく、無情にも信号機の色は赤から青へと変化して
 行った。

 一瞬女神かと思った・・・急いでハンドルを切って彼女の行方を探すよう指示するものの、彼女は街の喧噪の
 中にとけ込んで消えてしまうのだった。
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 1962年カリフォルニアの北部の小さな街を舞台に、若者たちが巣立っていく姿を見事に映画化した作品。
 当時ニューヨーク批判家の間でも評判が良く、ゴールデン・グローブでは見事作品賞を受賞したものの、アカ
 デミーでは作品・監督・脚本・編集とそれぞれノミネートこそすれ、一つも取れなかった作品。
 作品は、ルーカスの思惑から外れて、製作会社が彼の意向とは別に放映時間をカットして流したものの、
 それが大絶賛にも繋がったというなんとも皮肉な結果が続いた映画。

 うーん、最高です(^^;
 ベトナム戦争前の1962年の田舎町を舞台にし、40年代・50年代のビンテージカーを300台集め、男優には
 グリースで髪型を固めさせ、女優にはポニーテールにして、撮影28日、70万ドルという制作費内で、ルーカス
 自らが体験してきた事を映画化したという事は、あまりにも有名な話しです。

 映画では、当時を再現するために数々の演出を施しています。有名な音楽/ロックをふんだんに取り込んだ
 事で、映画本編だけでなく音楽も楽む事が出来、日本でも人気が高い頃の”アメ車”が、終始画面内を彩って
 楽しませてくれます。そしてウディ・アレンもかつては映画で取り上げた事のある”ラジオ”のDJを通し、若者
 文化のツボを見事表現していますね。

 映画では、仲間4組のそれぞれの物語が同時進行していく形で進んでいきます。時には他人のストーリーに
 関わり合い、とっかえひっかえして、複雑に絡み合っていく所は、巧く友情の厚さを表現している感じを受けます。

 その内の2組。カートとスティーブは、大学進学のために街を出て行くべきなのかを、この一日/一晩の中で
 悩み通して結論を出していきます。そんな大切な事で悩んでいれば、少なからず友人との会合にも翳りが
 見えるかと思えば、実に若者らしく生き生きしている所には好感がもてます。
 この2人、最初は互いに反対の意見を持っているのですが、エンディングでは全く逆の考え・結論を持っている
 ところがポイントです。複雑に絡み合うシナリオの中で、何処でそんな気持ちの変革が起きるのかを、注意深く
 見つめていくのもまた楽しいかもしれません。
 因みにスティーブ役を演じているのは、『アポロ13』(1995 Apollo13)など監督業でも忙しいロン・ハワードです。

 ジョンの物語は、年下の女の子に付きまとわれる話し。
 最も狂犬ぶりを発しているジョンが、苛立ちつつも次第に彼女のペースに巻き込まれていく様がなんと言って
 も楽しいことであり、微笑ましい事でも有ります。
 地元にはよく居る感じの役割/スピード自慢をしている彼も、ストーリー中での精神的な成長から、大人の
 行動を取り始めます。
 エンディング前のドラッグレース。ジョンの相手役は現在の役柄とは180度違うハリソン・フォード(Harrison
 Ford)ですが、彼との戦いに勝ちこそすれ、内容では負けていた事を呟くシーンは、まるで『サタデーナイト・フィ
 
ーバー』(1977 Saturday Night Fever)のジョン・トラボルタ(John Travolta)を見ているかのようでした(笑) 地元
 故に、仲間からは完勝だと言われることが逆に自尊心を傷つけた感じ。これをもって彼がドラッグレースを引退
 する事が容易に想像できます。

 テリー役のチャールズ・マーティン・スミスは、見た目まるで”さかもとちゃん”です(笑)
 表面的な体裁を整えたい年頃にあって、不器用な彼は彼なりに演出している姿がなんと
 もたまりません(^^;
 最終的に全ての仮面が剥がれる事になるのですが、そこで全て真実を語ってみても、上
 手く行ってしまう所に涙を誘います。
 

 しかし夢の様な一晩を過ごしているように見えて、現実感に引き戻されるシーンがラストに有ります。
 世界中を旅して若者たちに元気を振りまいているという伝説の”DJ”の存在。
 このシーンがカートを直接旅立たせる結論を出させた訳ではないだろうけど、実はそんな彼が身近にいて
 DJ自身が夢を見ている事を、そのままラジオのトークで語っている姿を見れば、やっぱり現実感に引き戻され
 ますよね。

 この映画、ラストはまるで『スタンド・バイ・ミー』(1986 Stand by Me)を見ているかの様です。
 この四人の行く末をエンディング・ロール前に語る演出なんてまさにスタンド・バイ・ミー。いや、本作の方が
 全然前に製作されていますが(^^; それだけではなく、ドレイファスが小説家になっていたり、ジョンが交通
 事故で亡くなっていたり、テリーが戦争で行方不明になるエンディングを用意しているところまでも一緒(笑)

 ベトナム戦争前の特需景気の頃の話しとはいえ、一家に一台ではなく、一人一台の車を乗りこなしているとこ
 ろが妙に脚色している気がしないでもないですね。と言うかアメリカは何歳から運転免許が取れるのでしょう
 か? カートの妹が自分の車を持っていて運転しています(笑)

 しかし時代は違えど、何故これほどまでに納得行くシナリオなんでしょうかね。
 というかこの時代を体験したい(笑)


 チュック・ベリーのジョニー・B・グッドを聞いていると、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985 Back to the Future)
 でのマイケル・J・フォックス(Michael J.Fox)のパフォーマンスを思い出します(^^;
 ビーチボーイズのサーフィン・サファリなども流れていますが、映画の中ではまだ新世代の音楽として扱われ
 ているのが笑えます。やっぱりバック・トゥ・・でもこの映画の影響を受けている部分があるんでしょうね。
 どっちにしても僕が生まれる前の話ですが(^^;


  リチャード・ドレイファス/カート・ヘンダーソン : 奨学金で東部の大学進学が決まっている。
  ロン・ハワード/スティーブ・ボランダー : 東部の大学進学が決まっている。
  ポール・ル・マット/ジョン・ミルナー : カートの友人であり、先輩でもある。
  チャールズ・マーティン・スミス/テリー・フィールズ : 仲間の一人。

  シンディ・ウィリアムス/ローリー・ヘンダーソン : カートの妹。スティーブの彼女
  キャンディ・クラーク/デビー : テリーの彼女
  マッケンジー・フィリップス/キャロル : ジョンに付きまとう年下の女の子。ジュディの妹。

  ウルフマン・ジャック/ディスク・ジョッキー : 人気ラジオDJ・謎の”ウルフマン”。
  スザンヌ・ソマーズ/ブロンド女性 : 56年型サンダーバードに乗る女性。カートが一目惚れする。
  ボー・ホプキンス/ジョー : 不良グループ”ファラオ団”のボス。
  ハリソン・フォード/ボブ・ファルファ : ジョンに戦いを挑む男。

  ジム・ボーハン/ホルスティーン : 街の警邏する保安官。
  Jana Bellan/ブダー : 皆が集まる”Mels Drive-In”のウェイトレス。
  Deby Celiz/ウェンディ : カートの元彼女。
  リン・マリー・ステュワート/ボビー : ウェンディの友達。運転手役
  テレンス・マクゴバーン/ウルフ : ダンスパーティの責任者・先生。
  スコット・ビーチ/ゴードン : ゲームセンター(ピンボール)屋の店主。カートの知り合い。
  ジョン・ブレント/中古車セールス : テリーが立ち寄るとマシンガントークで車を売ろうとする男。
  Al Nalbandian/ハンク : ゴードンの店にて。カートを推薦した人。
  Manuel Padilla Jr./カルロス :
  Beau Gentry/アンツ :
  Kathleen Quinlan/ペグ :
  ティム・クローリィ/エディ : へそを曲げたローリーがダンスパーティで見せつけのため踊る。
  ゴードン・アナラ/ボゾ :
  ボブ・パサーク/デイル :
  Chris Pray/アル :
  スーザン・リチャードソン/ジュディ :
  フレッド・ロス/ファーバー :
  アーヴィング・イスラエル/クルート : 生活指導の先生。黒縁の眼鏡。ダンスパーティにてスティーブを注意
  Kay Ann Kemper/ジェーン : ウルフ先生に相談する生徒。2人は関係があるっぽい態度。
  ジョー・スパノ/ヴィク :
  デブラリー・スコット/ファルファの彼女 : ボブ初登場シーンで助手席に居る彼女。
  ロン・ヴィンセント/ジェフ :
  エド・グリーンバーグ/キップ :
  Donna Wehr/カーホップ : 

  William Niven/酒屋の店主
  George Meyer/酒屋に居る浮浪者
  James Cranna/酒屋泥棒
  Jan Dunn/老人 : テリーが悪酔いしている場面のギャラリー
  Charles Murphy/老婦人 : 同上
  Caprice Schmidt/ダンスパーティ司会の女性 : 生徒会風の眼鏡の女性
  Cam Whitman/ジョンの車の助手席に居るキャロルに向かって水風船を投げつける女性


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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