アラビアのロレンス Lawrence of Arabia
1962 England 202mins
監督 デビッド・リーン 製作 サム・スピーゲル 脚本 ロバート・ボルト
原作 T・E・ロレンス  撮影 フレディ・A・ヤング 音楽 モーリス・ジャール
出演 ピーター・オトゥール、アレック・ギネス、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン




 

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 この権威ある大寺院に、ロレンスという男は銅像を飾るに値する人物だったのか・・T・E・ロレンス(1888年
 〜1935年)が行った”砂漠の反乱”は中東戦線で決定的役割を果たした。 ロレンスについてベントリー
 (アーサー・ケネディ)にインタビューの目が向けられる。彼は表向きその質問に肯定したものの裏では否定し
 た。その言葉を後ろで聞いていた男たち/ロレンスの功績を讃えている者たちは、今の言葉を聞き捨てならな
 いと・・・ダマスカスで彼と握手したという男はそう発言したのだった。

 「ベトウィン族、トルコ軍を攻撃」。
 ロレンス中尉(ピーター・オトゥール)は、そんな記事を新聞で読みながら部下のハートレー伍長やホッター
 長らと話をする。そこへ一通の電報が届くと彼は立ち上がり、将軍の元へと歩み寄った。
 ロレンスは上官の話す作戦行動を否定した。すると愚鈍な中尉が上官の作戦を侮辱したと、将軍は彼の態度
 に怒りを表す。しかしロレンスの事をかっている上官は、彼は人とは違う感性を持ち、そして人一倍の博識さ
 を持つことが時として上官の感情を刺激してしまう時がある事を指摘した上で、彼をアラブ局の局員として派遣
 させたいことを将軍に告げるのだった。
 その派遣の目的は、状況把握のため。しかし、この時にもロレンスの性格理解していない上官からは、普段の
 軍務態度の事を持ち出し、ロクに職務を全うしていないやつがそんな任務に就くことを非難したのである。
 今や劣性にあるベトウィン族を援助しても無駄な事。真の敵はトルコでは無く、裏で手を引いているドイツ、そし
 て真の戦場はアラブではなくて西部戦線だと反論された。しかしここでもロレンスは、その発言に対し、「楽器は
 弾けずとも大国の統治はできる」と一歩も引かなかったのだった。
 その任務がロレンスに容認される。すると上官からはファイサル王子(アレック・ギネス)を捜して彼の意図する
 ことを探り、アラブの将来を王子はどう導こうとしているかを探ることを命令された。

 一人の従者・道先案内人のタファスを雇い、いざ砂漠を横断する。過酷な道をひたすら
 西へ東へ、ベトウィン族を消息を追って歩いていた。マスツラの井戸で休息を取っている
 と、地平線の彼方から一人の男が近づいて来ることに気が付く。タファスは銃を構えて
 彼の動向を見守るが、一足早く相手の男が銃声を響かせた。その男は名をアリ(オマー
 ・シャリフ)
と言い、自分の井戸を目の前で倒れているハジミ族の男が使用していたから
 発砲した事を告げる。シェリフ・アリはハリス族の酋長であり、部族間の争いが、ここアラ
 ブの土地では日常茶飯事であった。ロレンスは、”アラブがそんな無用な争いを繰り返す
 内は愚かな民族に過ぎない”事を話すと、彼は何かに気が付いたように、ロレンスをファ
 イサル王子の元へ案内しようとした。しかし、そのロレンスは彼の申し出を断ると、一人
 計画通りにワジ・サフラの方角へ向けてラクダを走らせた。
 

 その場所に着くと一人の将校が待っていた。彼はイギリスの将校として命令に従い、陣地についたら終始口を
 閉ざしていることを命令した。
 陣地に近づくと頭上を敵機が頻繁に往来していた。状況は最悪で、一団を見る頃にはそこは避雷した後であ
 った。その爆撃を受け、一団は南下することを余儀なくされた。
 夜、ファイサル王子に面会する。そこへ同じく先ほどのアリもまたやってくるのだった。撤退の決断を
 王子に迫るブライトン大佐。そして大佐はこの民族には武器よりもまず訓練することが必要だと話す。
 すると横からロレンスは、撤退はダマスカスより遠のくとしてこの意見に否定的であった。
 返答に迷う王子は、取りあえず結論は明日にして今日は休むよう話す。しかし、皆を部屋から出した後
 ロレンスを呼び戻し、イギリスが訓練させようとするのは我が民族を配下に置くのが目的なのかを問う。
 すると迷うことなくロレンスは、”そうだ”と答えるのだった。
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 第一次世界大戦(1914年)、ドイツとイギリスの戦争を背景に、トルコの支配下にあったアラブの国を、イギ
 リスの士官、T・E・ロレンスがアラブ反乱のため画策した話し、自ら執筆したこの原作を見事映画化。

 うーん、素晴らしいです。
 実際では味わえないほどのロケーション、砂漠という土地を舞台にロレンスが縦横無尽にその土地を駆け回
 り、数々の困難に見舞われながらも、ダマスカス奪回まで様々な民族を率いて策略してことがよく映画化されて
 います。
 実際映画では、大戦中の2、3年間だけをクローズアップした映画なので、どんな生い立ちでこうなったのかは
 分からないものの、その分砂漠でどのように活躍したのかが細かく描かれていて、どうやってアラブの人の心を
 掴んだのかがよく分かります。
 実はこれを見るまで、ロレンスの事を全く知らなかったのですが、彼はアラブの人ではなくてイギリスの人なん
 ですね。彼が最後までアラブになりきれなかったのは肌の色の影響が強いのだけど、ただ平然と最後まで
 英雄ぶりを発揮しただけでなく最後は苦悩の日々で、自分の思惑とは違う事、それは自分がなんでも出来る
 人間では無いと言うことが分かる事だったり、上層部が約束とは違う結論を出したりして彼の理想とはかけ離
 れたことが現実として起こったりして、ロレンスという人物が完璧ではないと言うことを表現する様がよく現れて
 いてそこがまた良い所ではないでしょうか。
 ストーリー中で仲間の中でも特に自分の身近にいる者を2人も失う・・・なんともショッキングな出来事で、みてい
 てドキドキものでしたが、あんな決断がリーダーとしては必要なのかとも一部思うところがあります。

 実際のロレンスの話は突き詰めていくと謎の部分が多いそうですね。例えば、映画の中にも全く出てきません
 でしたが女性関係とか、この映画の中でも何度か描かれている列車爆破作戦。
 これ以外に彼が本格的に認められた後、決定的となる目立った動きが全くないんですよね。逆に失策にも思え
 る事態にまで発展してしまう脱走兵との抗戦シーンなどは、感情をむき出しになりすぎて、今までの目的に対し
 て一辺倒だった男が崩れていく様が良く描かれています。
 最後は自らの手で理想を掴もうとしたはずが、果てしない文化の差違と、思った以上に根深い民族間の闘争に
 よって統制力を失ってしまいます。

 はじめ見たときには、主人公のロレンス役のピーター・オトゥール(Peter O'toole)の事を何故かグレゴリー・ペッ
 ク(Gregory Peck)として見ていました。また、この映画自体砂漠をテーマにしていたので、『風とライオン』(1975
 The Wind and the Lion)のショーン・コネリー(Sean Connery)らとも比較して見てしまいました。映画の中で圧倒
 的な迫力でロレンスを演じていたオトゥールですが、まだこの頃は新人なんですね(^^; ロレンス役には他にも
 マーロン・ブランド(Marlon Brando)などが候補として挙がっていたというだけあって、難しい役所という事は分
 かりますが、まさか新人の男がここまでやるとは思いませんでした。もちろん監督さんやキャスティングを決め
 た人たちには、舞台で活躍しているオトゥールを見てダイヤの原石を見たような思いだったと思いますが。
 当然この映画でもオスカーにノミネートされたそうですが、初のノミネートでは受賞できないというジンクス通りの
 結果になってしまいました。(7回ノミネートされたけどまだ一度も受賞した事が無いそうです)
 あの最後の方で脱走兵と対決するシーンで、馬に跨って部下が相手側に感情的に飛び出すところを見ている
 シーンなんて凄い説得力のある顔を見せていましたよね。
 でもこの年の映画界を見ると、凄い作品が多く公開されているので、やっぱり現実は厳しいです。
 (『史上最大の作戦』(1962 The Longest Day)大脱走』(1963 The Great Escape)『クレオパトラ(1963
 Cleopatra)などなど。)

 最後は・・・ストーリーの始めにチラっとカットが流れましたが、ロレンスはバイクの事故
 によって亡くなってしまいます。砂漠で亡くならず文明の利器であるバイクの事故で亡く
 なるというなんとも不思議な話しですけど、ラストで自信の喪失、大戦での傷心で少し精
 神的に参っていたので除隊して故郷に戻ったのでしょうか。しかし、あの最後ダマスカス
 で別れたアリの消息はその後どうなったのだろうか。政治を学ぶような事を言っていま
 したよね。この辺のストーリーが映画化されていませんかね?
 

 そういえば、この映画のエンドクレジットを見ていて思ったのですが、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)
 
やスティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)、ジョン・デビソンなどの名前が出ていたのですが、どんな関
 係があったのだろうか?(^^;

アカデミー 作品賞、監督賞、撮影賞、美術監督賞、サウンド賞、編集賞、作曲賞


 ピーター・オトゥール (ロレンス大佐/中尉)
 アーサー・ケネディ  (ジャクソン・ベントリー/レポーター)
 アンソニー・クエイル (ブライトン大佐/ロレンスと同行)
 アレック・ギネス    (ファイサル王子)
 オマー・シャリフ    (シェリフ・アリ/ハリス族)
 アンソニー・クイン   (アウダ/ハウェイタット族)
 ジャック・ホーキンス (アレンビー/新司令官)
 I.S Johar        (ガシム/ロレンスに殺される)
 John Dimech     (ダウド/ロレンスの使い)
 Michel Ray      (ファラジ/ロレンスの使い)


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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