嵐の中で輝いて Shining Through
1992年 アメリカ 133分
監督・脚本・製作総指揮 デビッド・セルツァー 製作総指揮 サンディ・ガリン
原作 カーザン・アイザックス 撮影 ヤン・デ・ボン 音楽 マイケル・ケイメン
出演 マイケル・ダグラス、メラニー・グリフィス、リーアム・ニーソン、ジョン・ギールグッド




 


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 TV局(BBC)ではある番組の為の準備が行われている中、ゲストである一人の老夫人がやってくる。
 人前での仕事は初体験である為に、何をして良いのか分からず少し舞い上がり、要らないことにまで気を使っ
 ていた。女性の名は、リンダ・フォス(メラニー・グリフィス)。最初は断るつもりで居たのだが、周りからBBCの番組
 ならば出演しても良いのではないかと後押しされ、出演する事に決めたという。番組のテーマは ”ナチス・ドイツ
 戦時下を生き抜いた女性
” の物語。彼女が体験してきた事をトークを交えながら回顧録を伝える番組である。
 早速準備が出来るとカメラテストを行い、カメラが回り始めた。司会進行を勤める チャールズ(クレメント・ヴァン・
 
フランケンシュタイン)は、彼女から色々と話しを聞きだそうとして質問をし始めた。
 ”戦争に興味を持ったきっかけは?”・・・”映画・・・ドイツが舞台の映画ならばどれも好んで見ていた”という。
 リンダは、幼いときから故郷であるベルリンの事を聞かされて育つ。母親はアイルランド系、父親はドイツ系、
 家はニューヨークの下町クイーンズ地区で生活していた為、ドイツ語を話すことは禁じられていたという。
 当時ニューヨークでは、ナチスドイツとは緊張状態にあり、ドイツ語を話せば、ナチの新派かユダヤ人だと言う
 ことで、近所からは迫害されてしまう可能性があったのだった。
 リンダの父親は、同郷の親戚/ユダヤ人からの手紙を読んで悲しんでいた。そんな家族の悲しむ顔を見て
 リンダも自らベルリンの上空に赴き、パラシュートで降下して彼女たちを助けることを空想していた。そこには
 父親の妹のハンナリーゼル、そしてリンダとは1歳年下のソフィーが居たのである。彼女はフルートの名手、
 助け出したらソフィーをニューヨークに連れてきて、コンサートを開くのが夢だった。

 やがてドイツ軍はポーランドに侵攻していく。欧州中で戦争が吹き荒れた1940年。リンダはクイーンズから
 出ようと必死だった頃、マンハッタンで求人広告を見ながら歩いていた。その時、街頭で演説する男
 (ダナ・グラッドストーン)は、市民達に必死に呼びかけていた。 ”これは我々とは全く関係のない戦争・・・ナチス
 ヒットラーの手からイギリスを守りたければ、イギリス人が戦えば良い。何故我々が手を貸すのか・・。参戦した
 いなどと言うヤツは、ユダヤ人贔屓、ルーズベルトもその一人である
” という。
 すると一人の男が前を過ぎ去り、その男に声をかけると、男は渋い顔をしてその場を後にしていった。追い出
 した男が入ったビルは、彼女が面接を受けに来た弁護士事務所だった。
 早速彼女は面接を受けるが、彼女の履歴書を見て最終学歴が専門学校だと言うことに難色を示した。
 その事にリンダは激怒し、労働者階級出身の娘と一緒に働きたくないのでしょ?と嫌味を込めて話した。
 そしてその場を後にしようとすると、この弁護士事務所で働くユダヤ系の女性が、室内に置いてあった給湯器
 を倒してしまう。するとその女性は、パニックのあまりドイツ語で悲鳴をあげた。するとリンダは彼女に近づき、
 落ち着かせようとして、ドイツ語で語りかけながら肩をさすってあげるのだった。それを見た面接官は、
 ドイツ語が出来る女性を求めていたこともあり、仮採用を決定するのだった。

 君のボスになる人は、ハーバート出のキレ者だが語学に弱いという。更に気難しい性格であると説明を受ける。

 ボスの部屋の扉を開けると、そこに居たのは今朝、街で扇動しようとしていた男を止め
 た人だった。男の名は、エド・リーランド(マイケル・ダグラス)。リンダが自己紹介を済ませ
 ると、エドは彼女にその場で起立し、一周して欲しいと言う。リンダはエドが自分の容姿
 を品定めするような態度に腹を立てるが、エドが意図して居たことは、一瞬の観察力/
 洞察力のテストだった。一周してみて、目に入ったものを全て答えて欲しいという問いか
 けに、彼女は一周せずとも自分に落ち度が無い事を示すため、壁に掛かった写真や
 絵、剥製の事などを次々と答え始めた。それを聞くと エドは問題なく合格だと彼女に言
 い渡した。右の写真、弁護士と見せかけ実は情報部に所属しているエド扮する マイケル・ダグラス
 

 1941年10月末、イギリス/ロンドンではドイツ軍の激しい攻撃を受け、市民は空襲の恐怖に震え上がって
 いた。アメリカ本土の方でも参戦は免れないと言う考えが次第に定着し始め、若者たちは次々と志願兵として
 軍に入隊していた。そんな中、エドはリンダの事に興味を持ち始めていた。リンダの生まれつき物事をハッキリ
 と言う性格、エドを笑わせようとして、そんな態度を見せるところ・・・など。彼女は映画好きらしく、
 映画の事を語りかけるが、エドは全く興味が無かった。エドは自分が好きなオペラに彼女を連れていく事に
 する。次第と二人は打ち解け合い、やがて結ばれるのだった。
 12月のある日、幸せな生活が続いていた頃、TVでは臨時ニュースが入る。それは、日本軍が真珠湾に侵攻
 を図っており、次々と攻撃を行っていることだった。すぐにエドは、戦略事務局の陸軍大佐に任命され、
 首都ワシントンに召集された。仕事は敵の内部情報の収集。リンダは彼の補佐に回り、仕事を手伝
 うのだった。
 仕事に就くと直ぐにベルリンに潜伏していたアルバート諜報員が敵に見つかり殺されたという報が伝わってくる。
 すぐに別の隊員を送り込む必要が有るため、情報部の幹部や兵士たちを集めて話し合うことになった。
 アルバートは表面上高級デザイナーとして潜り込み、ベルリンでは有る程度名を馳せて居たため、敵の陸軍
 省幹部の妻ヘッダ・ドレッシャー(Hansi Jochmann)に近づくことが出来たという。ヘッダの夫ホルスト・ドレッ
 シャー(Ronald Nitschke)は、親衛隊将校であり権力志向が強く、いつもパーティーを開いては、上官たちを
 招いては点数稼ぎをしていた。そのパーティーに出席するに当たり、ヘッダのドレスを持っていき、着付けを
 手伝い、主人たちがパーティーを開いている間に、機密情報をマイクロフィルムに撮り、盗み取ってきたという
 手口だった。彼が地道に集めていた情報を元に、有ることが分かっていた。それは、ドイツ軍は標的に向かって
 自ら近づいていく爆弾が開発されている事だった。しかし彼の情報では、それが何処で製造されているかまで
 は記述されていなかった。一刻も早くドレッシャー家に潜り込んで、この機密情報を盗んでこれる者を探さな
 ければならないのだった。そんな中、秘書をしていたリンダには考えがあった。それは自らが乗り込んで、彼ら
 に近づくこと。下町訛りの入ったドイツ語を喋ることが出来るのは、彼女しか居ないのである。エドは猛反対を
 するが・・・結局2週間の期限を条件に、彼女をベルリンへと送り込ませることが決まるのだった。
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    1940年、第2次世界大戦下のドイツ・ベルリンへ諜報員として送り込まれたリンダ。彼女には、思い描い
    て居たことがあり、自らが潜入して息を潜めて生活している同郷の親戚たちの所在を調べて、助けたかっ
    たのである。果たして無事再びニューヨークの地へと戻ってくることが出来るのか。

    そこそこ緊張感で目の離せないシーンを演出していたものの、やはりTVで見たのが不味かったみたい
    です。133分の映画がTVで放送するとなれば、当然バッサリ切られていますよね(^^;
    一応ストーリーの流れは壊されていないものの、映画に入り込むには相当足りない演出が目立つので、
    最低限、ビデオで視聴しないと伝わらない部分が多いと思います。

    しかもストーリー的にもいきなりメラニー・グリフィス(Melanie Griffith)演じるリンダ・
    フォスの生存が証明されている訳ですからね〜彼女が語る物語ですから(^^;。
    ラストで彼女が生きるか死ぬかという窮地に立たされたときも その辺の関係で、
    少々緊迫感を欠く結果にも繋がりました。しかしエドを最初から意図的にカメラの
    フレームに入れなかった所を見ると、主役はリンダなのに最後だけ美味しいところ
    をマイケル・ダグラスがいただいたような演出がされています。確かにロマンスもの
    では有りますが、主役は決してダグラスではありません。右の写真、リンダ役のメラニー・
    
グリフィス。彼女がドイツに渡り女スパイとして単独で敵の士官から情報を盗む。
 

    敵国に侵入し諜報員として働くのがリンダなのですが、彼女の祖母や父親がユダヤ人としての血が
    流れていることから、リンダにも半分はユダヤ人としての意識が芽生えています。しかし故郷の仲間を
    助けたいと思うのは分かるのですが、どうも彼女はニューヨークで生まれ育った事もあり、それほど熱心
    なまでの(命を賭けるほどの)何かが生まれるものかな〜と思います。TV版なのでなんとも言えないので
    すが、生存が気になるというハンナやリーゼル、ソフィーと言った面々が映画の中に出てこないんですよ
    ね。しかも一度もその土地に行ったような思いである地という訳でも無さそうなのが気になりました。

    ドイツに渡り、全く知らない土地に行く恐怖感。もう少しリンダがドイツ語を話す女性だという事/そんな
    事を活かした演出が見られると良かったのですが、敵国に居る割には意外とそんな恐怖心の演出も
    足りませんでした。逆境に強そうな女性ということは分かるのですが、お転婆娘が突然敵地に乗り込む
    ような感じがします。
    昔、『ロンゲストデイ』の続編で、女性諜報員が敵地で活躍する話しがあったのですが、この映画は純粋
    にそんな演出がされていて怖かったのを覚えています。
    ここではそんな怖いシーンが演出されていたのは、ラストで帰国する際に、エドと一緒にリンダが汽車に
    乗っている周辺だけですよね。二人の愛の物語だというのは分かるのですが、そこにたどり着くまでの
    苦労の行く末が気になるので、どれだけ高い山を越えたのかが、ラストの感動にも繋がると思います。
    もう少し起伏の欲しい場面が目立ちます。例えば、人間の情などを上手く揺さぶるようなシーンが欲しい
    所でした。ディードリット((C)冬馬由美)もといディードリッヒと出会い、拾われるようにして彼の家に
    転がり込むのですが、子供たちと接するウチにそんな感情が芽生えるのでも良いし、その主との関係。
    また、いつの間にか関係が入れ替わってしまったマルグリットとの関係(味方ではなく敵だと最後に分か
    る。)など、もう少し突き詰めていく要素は有ったと思います。

    そういえばドイツ・ベルリンでの事って何処から何処までが敵であり味方だったのでしょ
    うか?サンフラワー(ジョン・ギールグッド)は最後に出てきた事でも味方だと分かるし、魚屋
    はマルグリット(ジョーリー・リチャードソン)右の写真に紹介されて行った訳ですからドイツ側
    の人ですよね。しかもマルグリットの話しを聞いていると、彼女は内務調査省のように
    ディードリッヒについても、彼がナチスドイツの理念に懐疑的で無いのかを調べる為に動
    いていたりして、実はディードリッヒ自身も この動きには最初から気づいていたような素
    振りを見せています。(チラチラとリンダを意識しているシーンなど)そんな警戒感から
    リンダに対して愛情が芽生えなかったのでしょうか・・
 

    やはりこの映画で緊迫感が伝わらないのは、実際の戦闘シーンは、省略されている事ですね。
    盗み出した資料が活かされる事が無く、またそれを盗まなければ、味方がどれほどの被害を被るのか。
    こういうシーンが無いですからね。しかもラストで突然敵地の真っ直中で、エドが潜入して行くこと。
    幾ら何でもアメリカ人がドイツ領内に入れば、顔立ちで怪しまれない訳が無いですから・・・
    ラブロマンスを意識した作りなので、そういった配慮は有りませんでした。

    マイケル・ダグラス     (エド・リーランド/弁護士)  実は
    メラニー・グリフィス     (リンダ・フォス)         弁護士秘書。エドの妻。諜報員としてドイツに向かう。
    リーアム・ニーソン     (フランツ・ディードリッヒ)   ドイツ陸軍省のお偉いさん。
    ジョン・ギールグッド     (コンラッド・フリードリッヒ/サンフラワー) ドイツ人スパイ。リンダを送り迎える。
    ジョーリー・リチャードソン (マルグリット・エーベルシュタイン) ドイツでのリンダの教育係。親友として親交を深めるが・・
    シーラ・アレン        (オルガ・ナイラー)      マルグリットの母親。有名なピアニスト。
    Ronald Nitschke    (ホルスト・ドレッシャー)    ドイツ陸軍省のお偉いさん。
    Hansi Jochmann    (ヘッダ・ドレッシャー)     ホルストの妻。
    Francis Guinan     (アンドリュー・ベリンジャー)
    Patrick Winczewski  (魚屋/諜報部員)
    Peter Flechtner     (魚屋/諜報部員)
    Alexander Hauff     (魚屋/諜報部員)
    Claus Plankers     (魚屋/諜報部員)
    ダナ・グラッドストーン   (扇動員)
    クレメント・ヴァン・フランケンシュタイン(チャールズ)
    アンドリュー・ウォルタース (ピーター・ディードリッヒ)
    ヴィクトリア・シャレット   (ケセラ・ディードリッヒ)
    Ludwig Haas       (アドルフ・ヒットラー)
    Tusse Silberg      (ドレッシャー家の客)
    Suzanne Roquette   (ドレッシャー家の客)
    Markus Napier()
    Simon DeDeney()
    Andrzej Borkowski  (ドイツの避難民)
    Markus Kissling    (スイス国境ガード)
    Lutz Weillich       (駅のガード)
    Hana Maria Pravda  (ベビーシッター)
    ウォルフガング・ミュラー (バスの車掌)
    Lorelei King       (リーランドの秘書)
    Martin Hoppe      (ドイツ兵)
    Fritz Eggert       (ドイツ兵)


評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)

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