スティング The Sting
1973年 アメリカ
監督 ジョージ・ロイ・ヒル 製作 トニー・ビル、マイケル・フィリップス、ジュリア・フィリップス
脚本 デビッド・S・ワード 音楽 マーヴィン・シムリッシュ
出演 ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング




--------------------------------------------------------
  1936年・9月シカゴ、ドイル・ロネガンは、数々の商売を成功させ巨額の利益を得ていた。各地に支部を
  持つナンバーズを始め、工場や銀行を持ち、更に政治家たちをも抱き込み、強大な組織を築いているのだ
  った。この日は、各支部のの売上金を組織へと献上する日であり、コームズからグレンジャーへと連絡が
  渡る。今日の4時15分の汽車で届けるというと、グレンジャーは部下のモットーラに現金を運ぶよう命令
  した。早速汽車に間に合うようモットーラは、事務所を出ようとする。すると、こちらに向かってくる男が居た。
  強盗犯が財布を奪って逃げてきたのである。被害者の男は、男を捕まえて財布を取り返してくれるよう叫ぶ
  が、彼は無関係を装ってそれを傍観しようとした。すると一人の男が強盗犯を転ばせて、財布を取り返した
  のだった。犯人は、逃げていきモットーラと財布を取り返した男は、被害者の男に近づく。彼は、スロット屋
  を経営しており、組織への上納金を納めに行く途中だったという。怪我をしていて歩けない状態だった男は、
  この金を4時までに届けないと命がないという。すると二人に向かって100ドルで、自分の変わりに郵便の
  ポストへ出しに言ってくれるよう頼むのだった。助けた男は、面倒は御免と早々に降りる。すると、モットーラ
  は、この話しに乗ってきたのだった。親切にも助けた男は、全財産を纏めて懐に隠して持っていくよう全財産
  を包みの中に入れる。モットーラは任せろというと、タクシーを拾い頼まれた方角とは逆方向に向かって走って
  行くのであった。簡単に儲かったと喜ぶが、金の入った包みを開けると全く金が入っていなかった。それだけ
  でなく、自分が納めに行くための金さえ消えていたのである。

  彼らはこの界隈で活躍するサギ師だった。被害者の男・ルーサーをリーダーに、助けた男・ジョニー・フッカー
  そして犯人を演じたエリーと3人で組んでいたのである。金を抜き取ったフッカーは、収穫の成果を調べると
  そこには予想しなかった程の大金が入っていたのである。三人は、夜にアガリの分配をする事を話し別れる。
--------------------------------------------------------


     街のサギ師3人組は、ある時引っかけた仕事が実は大組織の金で有ったことが分かり狙われることに。
     家族ぐるみでつき合っていた内の一人リーダーのルーサーが殺された事が分かると、彼を慕っていた
     フッカーは、ルーサーの友人の詐欺師の元を訪れ、仕返しするために画策するのだが・・・

     映画は、詐欺師たちのチームプレイが見られて恐ろしくも楽しい映画なのですが、特筆すべきはやはり
     終始効果的に使われているラグタイム・ピアノの音楽と、ちょっとオシャレな感じのする映画にマッチした
     衣装デザインにあると思います。映画の周りからこのような上手い演出をしているから、映画の中に
     容易に入って行きやすいですよね。
     映画は、暗黒街のボス/ロバート・ショウ扮するドイル・ロネガンが率いる組織のお金を略奪する所から
     始まります。始めから鋭い手口で、相手から持ち金を騙しとるという事で、視聴している方も見事ダマ
     されてしまいましたが、映画ではサギ師と言うことで終始ダマし合いの展開で流れていきます。

     ロネガンは大金持ちではあるのだけど、実に堅実派で決して負け戦を行わず、酒もタバコも女もやらず
     賭事はカード(ポーカー)だけ。しかも社会福祉事業団の幹部をするほどの人材なので、如何に利口な
     手口で相手を切り崩すのかなかなか興味深いものがあります。また、彼の周りには腕の良い殺し屋が
     常に八人も待機しており、失敗は許されず、相手は執念深いとあって、騙した後でも騙し続けられる
     ような完璧さが要求されます。(実は、これは続編の「スティング2」にも繋がる面白い設定なのですけど
     ね(^^;)
     映画の中では、始めからサギ師の周りを彷徨いている存在を作ったところが良かったですよね。
     ロバート・レッドフォード扮するフッカーは、最初のサギを働いた時点で警察官のスナイダーに、弱みを
     握られており、その口止めのために金を要求されるのだけど、偽札を掴ませて以来、常に彼を追う影
     の存在として登場してくるし、またポール・ニューマン扮するゴンドーフも、昔の古傷とも言える、株の
     取引サギで上院議員をカモって以来、FBIから目を付けられているといった背景があるのです。

     まずはサギ師チームは、彼と接触する為に2つのプロジェクトチームに別れます。列車でポーカーをして
     いるロネガンと顔合わせし、彼に挑発するチームと、裏でこの一連の仕掛けとなる、”電信”を使った
     競馬サギを計画するチームと。
     この映画は、紙芝居の様に章立てに分かれており、全8章から構成されているのですが、このポーカー
     で、仕事をする章は、”つり針”ということで、実は負け続ける展開で進むのかと思いました。
     わざと酒で酔っぱらいを装い、自分こそがカモという形で相手に近づくのかと思えば、全く逆の展開
     でしたね。
     「ハスラー2」で、ポール・ニューマンはフォレスト・ウィテカー相手にこんなさぐり合いで失敗して負けた
     事があるので、ちょっとドキドキしていました。相手もトランプサギの名人と言うことも有って、相手に
     そのネタがバレて一波乱あるのかなぁーと。しかし、もう一方的・・完膚無きまでに相手の手口を
     上回る方法で最後の最後まで勝ちを掴んでいきましたが、勝負に挑む前に練習するシーンなどでは
     単純なシャッフルで札を飛ばしたシーンを見せられただけに、もう少し緊張感が出ても良かったですね。
     そこで、フッカーの登場ですが、彼らはフッカーの顔を知らないのでしょうか? 冒頭から彼らに取られた
     お金を巡って殺し屋達が彼の首を狙っているはずなのですが、ボスからは何の音沙汰もありません。
     映画全体を通して見ると、あまり怖さみたいなのは有りませんね。追いかけられるシーンにしても
     ピアノの音色が独特のポップさを感じさせるので、妙な安心感がありました。

     ”電信”の効果を見せつけるため、2回のパターンを見せつけるのだけど、1回目は予期していた展開
     で、相手に見せつけたのに対し、2回目は相手が警戒して要求してきた故の展開に、強引な手口で
     展開していくのですが、いざ馬券を買うときになると、ここぞとばかりにお客が増えて、受付時間に間に
     合わなくするなど、ちょっとした小技も気が利いていて面白いです(^^;
     そして、ラストのシーンでは、主人公が一見裏切って進むような形になるのですが、対照的にゴンドーフ
     の主人公に対する接し方が信頼感を持って行動している様が凄く感じられたので、どういう道を選ぶ
     のかドキドキものでした。こんないい人を裏切らないでくれぇぇーーーって感じで。
     でも、単純に考えても終始この”電信”のトリックに関しては、疑問に思うところがありますよね。
     どういう方法を取れば、ダマされたと思われない所でダマす事が出来るのか。ロネガンは現場に立ち
     会って居るわけだし、外れたと分かった時点で、皆が一斉に逃げることなんて不可能・・・基本的に
     どんな方法を取るにしろ「外した」という時点で全てはサギだと分かってしまうのですよね。
     銃弾に倒れた後も、そんな疑問を背負ったまま、シナリオが終わるのかなーと思っていました。
     しかし・・・うーん、ダマされました(^^;
     でも、僕はこの事でダマされた事よりも、殺し屋のサリーノの時にダマされた事の方が妙に悔しかった
     です。なんだか上のような不自然さが無く、自然にストーリーの中に入り込んでいる人物が実は
     殺し屋だったという事実の方が実に衝撃的でした。それ故に、2人の男女が前後から走ってフッカーに
     近づくシーンでは、一瞬何が起ころうとしているのか分からず、ストーリーを見失ってしまいました。
     これこそやられたっと思ってしまいました。

     この手の騙し合いの映画は結構多いのですが、全体を通して映画の雰囲気、セピア調の映える映像
     や章立てにしたアイデアなど、他の映画に無い要素がたくさんあると思います。
     この映画が好きな人ならば、僕の好きな男優の一人スティーブ・マーティン主演のリメイク作品、
     「ペテン師とサギ師」は楽しめると思います。少しマーティン主演だけあってコメディ要素が強いですけど
     皆さんも騙されて見て下さい。「ワンダとダイヤと優しい奴ら」なんかも泥棒ものだけど七転八倒して
     楽しいですよ。


    アカデミー 作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編曲賞、美術監督賞
           編集賞、衣裳デザイン賞

     ポール・ニューマン       (ヘンリー・ゴンドーフ/サギ師)   プロの詐欺師。ルーサー亡き後、フッカーと組む。
     ロバート・レッドフォード    (ジョニー・フッカー/サギ師)    若手詐欺師。一夜にして、取り分の金を使う。
     ロバート・ショウ         (ドイル・ロネガン/ボス)       組織のボス。
     チャールズ・ダーニング   (Lt.W・スナイダー/刑事)     フッカーに偽札を掴まされる。汚職刑事。
     アイリーン・ブレナン      (ビリー/ゴンドーフの恋人)     自宅でバーと室内遊園地を経営。
     ハロルド・ゴールド       (キッド・ツイスト/サギ師)      白髪の人
     レイ・ウォルストン       (JJ・シングルトン/サギ師)    競馬の結果を読み上げる。
     ダナ・エルカー          (ポルクFBI捜査官/サギ師)   彼は映画の中のキーポイント?
     John Heffernan       (エディ・ニールズ)           めがねをかけている人
     ジャック・キーホー        (アール・キッド)
     Dimitra Arliss         (ロレッタ)
     Ed Bakey            (グレンジャー)            ナンバーズのシカゴ支部のボス
     Arch Johnson        (コームズ/センター)        ロネガンの部下の一人。センターで集金する。
     James Sloyan        (モットーラ)              フッカーにすり替えサギに合い、殺される。
     ロバート・アール・ジョーンズ (ルーサー・コールマン)       フッカーの師匠。しかしロネガンの殺し屋に殺される。
     ポウリーン・マイヤーズ    (アルバ・コールマン)         フッカーの妻。元は彼女も詐欺師。
     ジョン・クアイエ          (ライリー/殺し屋)          フッカーの後を終始追う。
     ブラッド・サリバン        (コール/殺し屋)           ライリーとコンビ。
     Larry D.Mann        (車掌)                 ゴンドーフが金を掴ませてロネガンに紹介させる。
     チャールズ・ディアコップ   (フロイド/ロネガンの付き)     ロネガンの片腕。
     ジャック・コリンズ         (デューク/サギ師)          ”電信”サギ仲間。
     Tom Spratley         (カーリー・ジャクソン/電信サギ) 
     リー・ポール            (ボディガード)
                       (レオナード/劇場で出演)
                       (エリー/サギ師)           フッカーとルーサーと冒頭で組む
                            (ダニー/ゴルフ)           マフィア組織カルネロの仲間
                           (ジェームソン)             ポーカーをPLAYした一人
                           (ロンバート)              ポーカーをPLAYした一人
                           (クレイトン)               ポーカーをPLAYした一人
                           (サリーノ)                第3の殺し屋。女性。
                           (ビリィ)                 ロネガンの部下(エレベーター係)
                           (マット)                 ロネガンの用心棒
                           (ジェフ)                 ロネガンの用心棒
                           (チャック)                FBIのトリックの一人。



評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0)


inserted by FC2 system